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コラム 一職業会計人の "軒昂奉仕" vol.9 収益の認識(その2) 一職業会計人の "軒昂奉仕" 公認会計士・税理士

コラム

5、溜ったポイントでプリンタ用インクを買ったら、会計士は何を考えるか?

 
 家電量販店等の小売業の中には、売上金額の一定割合に対してポイントを付与し、お客はその貯まったポイントを商品と交換することができるポイント制度がありますね。買い物に応じて企業が消費者に発行する「ポイント」の市場は一兆円を超えているようです。
さて、10万円のノートパソコンを購入したら、ポイントが10%で、1万円ついたとしましょう。 ポイントを付与して商品を売った場合、売上はいくらで計上するんでしょうか?
 
ケースA 10万円で売上計上

仕訳1 (借方) 現金 10万円 / (貸方) 売上 10万円
これはこれで納得できますが、10%分のポイントはどう考えるのでしょう。家電量販店は、お客が後日そのポイントを行使したとすると、1万円分の商品と交換しなければなりません。どうしましょう。プリンタ用インクでも買いましょうか?

仕訳2 後日交換される可能性の高い1万円分の処理
(借方)ポイント販促費 1万円 / (貸方)ポイント引当金 1万円
 ※ 又はポイント引当金繰入額
ポイント及びプリペイドカードに関する会計処理について」(平成20年7月2日改定・金融庁)も参考にしてください。
しかし実際にポイントを商品に交換するかどうかは、販売時点では分かりませんから、実際は顧客に付与したポイント総数のうち将来にわたって実際に交換されると思われる額を見積もって引当金計上します。
 
ケースB 9万円で売上計上

仕訳1 (借方 )現金 10万円 / (貸方) 売 上  9万円
                            前受金  1万円
売上は9万円で計上し、余分に入金した1万円は繰延収益として前受金等の処理をします。欧米ではこのような処理がなされています。関心がある方はIFRIC13(国際財務報告解釈指針委員会)についてのリンク先資料3を参照してください(「トーマツリサーチセンター 会計情報」vol.387‐P24)。  
 ポイント引当金計上方法も各社まちまちですし、翌期以降の実際のポイント交換時の会計処理も様々ですが、ここでは紙幅の関係で割愛します。日本の家電業界が欧米並みの会計処理をしていたら、売上激減でしょうね。

   なお、購入側のことも考えましょう。300万円の買い物で30万円のポイントが溜り、後日その全てをプリンタ用インクに交換し、その時点で決算を迎えたらどうなるでしょう? 300万円支出時の30万円は前払費用になるんでしょうが、プリンタ用インクに交換した時点では、重要性判断も加わりますが、「費用処理」 でなく 「貯蔵品」 という資産計上処理でしょうね。
 
 

6、海外出張で溜ったマイレージを家族旅行に使ったら、会計士は何を考えるか?

 
 飛行機に乗った時につくマイレージも、回数が重なると馬鹿になりません。この考え方は、前述の 「5、溜ったポイントでプリンタ用インクを買ったら、会計士は何を考えるか?」 と同じなんですが、ここでのテーマは、会社のお金で溜った、マイレージを個人が使用したらどうなるのかという問題です。このマイレージの会社での扱いは実に様々です。公認会計士の監査でお邪魔する会社、税務のクライアント、それぞれ実に様々な扱いですが、組織が大きく、あるいは公的機関に近づくほどその社内規定もきっちりしています。まあそれはさておき、会社のお金で溜ったマイレージを使ってヨーロッパ旅行をしたら、やはり経済的利益が個人に帰属していますから、給与扱いで源泉徴収すべきですね。しかしその管理をしていない組織が多いのも実態です。国際会議等に頻繁にいく会社の従業員につくマイレージは相当なものになります。
 
 
 
 

 

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