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繁盛請負人・佐藤勝人の時事国々リポート vol.67 素人とプロの違い。知識と智慧の違い。そして始まるサトーカメラの温故知新。

ビジネス 繁盛請負人・佐藤勝人の時事国々リポート vol.67 素人とプロの違い。知識と智慧の違い。そして始まるサトーカメラの温故知新。 繁盛請負人・佐藤勝人の時事国々リポート 商業経営コンサルタント/サトーカメラ代表取締役副社長

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こんにちは、佐藤勝人です。今回は前置きなしだ。いきなり自分の話から始めさせてもらう。
 
 

二級船舶の免許をとったとき
素人とプロの違いに愕然とした

 
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この懐かしい感じは昔は古臭いと言われたが、感度の高い
今の若者にはこれが「エモい」らしい
私は4年前に二級船舶の免許を取った。和歌山県の支援先に行った帰りがけ、海岸の船着き場にモーターボートがたくさん舫っていて、「そういえば20歳の頃、クルージングしたいと憧れてたなぁ」と思い出したからだ。ちょうどスケジュールが空いていたこともあり、その場でスマホから都内の2日間のスピード取得コースを申し込んだ。
 
そして一日目、座学。講義が始まったが、何を言っているのかさっぱりわからない。海のことも船のこともこんなに難しいとは知らなかった。「やばい、舐めてた!」と思ったが、翌日すぐ試験だったから、必死で食らいついて一夜漬けで勉強して、なんとか学科試験は合格した。
 
そして始まった実技講習。受講者は私一人だった。「何々良し!」という指差し点検から始まる発航前点検に、法定備品の点検。エンジンの動かし方、基本のロープワーク、etc・・・。見たところまだ30代半ばの若い教官の前で教わった通りにやっていく。これは楽勝だと思ってやっていた、つもりだった・・・けれども。
 
「いい加減にしてください佐藤さん!」と教官に怒られた。「船尾の点検も、ちゃんとスクリューのプロペラまで覗き込んで確認しましたか? 言葉だけで点検したつもりになってちゃダメなんですよ!」って。
 
自分ではちゃんとやっているつもりが形だけになっていたんだろうね。要は、内心ではまだ舐めていたんだよ。こんな小さなボート、大したことないでしょ。車を運転している感覚で動かせばイケるでしょ、と無意識に思っていたんだろう。そこを本気で怒られたわけだ。
 
でも最初は、「この教官、イキってるなあ」と思っていた。それで指示されるままやり直していたら、教官は持っていたボードをいきなりバン! と置いて、「やめますか、試験」と言った。今にも私を置いて帰りそうな勢いだ。やめられたら困るから、「いやいやいや、やりますやります」とか言って私がとりつくろっていると、彼は話し始めた。
 
「なぜ真剣にやらないと駄目か、わかってないでしょう。つい最近も千葉で事故がありました。佐藤さんと同じくらいの年の初心者の男性です。免許を取ってすぐ、お子さんを連れて海に行ったそうですよ。船尾からウェイクボードをつないで、子どもはそれに乗ってボートで引っ張ってもらうつもりで。そりゃ気持ちいいですよ。爽快ですよ。お父さんも鼻高々ですよ。
 
でも、お父さんは出航前点検で、船尾をチェック、したつもりだったんでしょう。いざエンジンをかけてブルルン! と吹かしたら、変な音がした。それで船尾を振り返ったら、ロープがスクリューに巻き取られて子どもがウェイクボードごと引っ張られて、顔面がグシャグシャに。
 
子どもは高校に入ったばかりだったそうです。一命は取り止めましたが、かわいそうに、実のお父さんに将来をメチャクチャにされてしまって・・・。
 
こういう事故がちょくちょく起こるんです。海の怖さ、船の怖さを知らない素人が、車と同じ感覚で船に乗ろうとする。海に出ようとする。車は普通に走るぶんには怖い乗り物じゃありません。船は別です。簡単に死人が出ます。ちょっと動かすだけで凶器になり得ます。その怖さをわかってもらわないと駄目なんです!」
 
私は頭をガーン! と殴られた気がした。海に浮かぶだけでも危険な行為で、いったん出航すれば波も潮も状態が刻一刻と変わる。人工の道を走るだけの車と違い、船は自然の波の上を行くから、船体の状態だって車と比べ物にならないほどシビアにわかっとかなきゃいけない。出航前には天気図もちゃんと見て、出ちゃいけないときは出ちゃいけないし、最低限のルールは絶対に、絶対に守らなきゃいけない。
 
そういうことは座学で知識としては学んでいた。でも、それだと素人だ。達人の域を表す言葉で「無知の知」というのがあるが、素人のそれは「無知の無知」。本当の無知だ。自分が何がわかっていないのかもわかっていないんだ。あのときの私はまさにそれだった。
 
 

サトーカメラの「温故知新」が
存在すら忘れていた社員で始まった

 
私が何のことについて話しているかは言わなくてもわかると思う。今回私があの件で再発見したのは智慧の大切さだった。現場の先人たちによって守られてきたルールにはそれ相応の意味がある。知識だけ詰め込んだ新参者が、「そんなのは古臭い考えだ」とか「今は規制緩和の時代だ」とか言って先人たちの智慧を否定しちゃ駄目だ。いや、駄目という以上に恐ろしいことだと思わなきゃいけない。
 
サトーカメラでごく最近あった話だが、勤続28年目で55歳の、昔なら定年までのカウントダウンを始める年代の社員が、新しい部署と兼務することになった。中古のオールドカメラをYouTubeで販売する部署だ。
 
今までは30代の責任者と3人で切り盛りしてもらってきたが、規模拡大にあたって増員する必要があり、誰を欲しいかその責任者に聞いたら、彼を指名した。私はびっくりした。存在すら忘れていた社員だったからだ。
 
それで選んだ理由を聞いたら、彼はこういう主旨のことを言った。――「知識がある社員なら他にもいる。でも、実際にフィルム時代のオールドカメラを現役で使い倒した経験があるのは彼らだ。それに、28年も現場でお客さんに対応してきた実績は伊達じゃない。この経験値は中古カメラのオンライン販売で必ず活きると思う」
 
目からウロコが落ちるとはこのことだ。何がすごいって、古い人間を新しい箱(=販売チャネル)に入れて再び活かそうというその発想がすごい。私だって、去年までガラクタ同然の扱いで売っていた中古カメラに新たな商機を見つけたことに対する自負はあったが、まさか“人”でそれをやれるとは思っていなかった。彼の慧眼に脱帽した。
 
考えてみればこれも「温故知新」の一つだと思う。こういう場合、指名された古株社員が尻込みする理由は大抵が「I Tがわからないから」だけど、そんなのはIT(=テクノロジー)の側が彼らに歩み寄ればいいんだよね。つまり、彼らでも使えるテクノロジーにすればいいんだよ。それによって彼らの経験値が、智慧が、再び活きてくるんだ。
 
今は古いものが何でもかんでも否定されがちなご時勢で、人に関してもやれ老害だ、不良債権だなどと悪口が言われるが、なんのなんの、活かし方さえ見付ければ、彼らこそ金の鉱脈じゃないかな。うちはたまたま小売業だったけど、皆さんの業種でも一緒かもしれませんよ。
 
 
 
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繁盛請負人・佐藤勝人の時事国々リポート
vol.67 素人とプロの違い。知識と智慧の違い。そして始まるサトーカメラの温故知新。

 著者プロフィール  

佐藤 勝人 Katsuhito Sato

サトーカメラ株式会社・代表取締役副社長/日本販売促進研究所・商業経営コンサルタント/想道美留(上海)有限公司・チーフコンサルタント/作新学院大学・客員教授/宇都宮メディアアーツ専門学校・特別講師

 経 歴  

1964年栃木県宇都宮市生まれ。1988年、兄弟とともに家業のカメラ店をカメラ専門チェーン店に業態転換させ、商圏をあえて栃木県内に絞ることにより、大手に負けない経営の差別化を図った。以来、「想い出をキレイに一生残すために」というコンセプトを追求し続けて県内に18店舗を展開。同時におちこぼれ社員たちを再生させる手腕にも評価が高まり、全国から経営者や幹部リーダーたちが同社を視察に訪れている。2015年からはキヤノン中国とコンサルティング契約を結び、現場の人材育成の指導にあたる。主な著書に『売れない時代はチラシで売れ』『エキサイティングに売れ』(以上同文館出版)『日本でいちばん楽しそうな社員たち』(アスコム)『一点集中で中小店は必ず勝てる』(商業界)『断トツに勝つ人の地域一番化戦略』(商業界)『モノが売れない時代の「繁盛」のつくり方』(同文舘出版)など。新刊の『地域繁盛店がリアル×ネットで“全国繁盛店”になる方法』(同文舘出版)が好評発売中。

 オフィシャルサイト 

http://satokatsuhito.com/

 オフィシャルフェイスブック 

https://www.facebook.com/katsuhito.sato.3?fref=ts

 サトーカメラオフィシャルサイト 

http://satocame.com/

 
 
(2022.5.25)
 

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