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今年のギフト、どこで買う?

 
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M&K / PIXTA
師も走る師走。今年もお歳暮シーズンがやってきました。人から人へ、企業から企業へ。お礼や感謝のしるし――ギフト――が行き交う季節です。
 
国内ギフト市場の規模は11兆1880億円。今年2025年は11兆3510億円の予測で、コロナ禍前の2019年から6%の拡大です。
 
うち、お中元とお歳暮の市場は1兆3500億円。2020年に前年比3%ダウンし3年間は横ばいを維持しましたが、2023年に4%ダウンしてからは翌年、翌々年と二年連続で前年比5%減っています*1
 
儀礼的・慣習的な贈答が退潮したにもかかわらずギフト市場全体が伸びている背景には、相手の住所や本名さえ知らなくてもSNSやメールからギフトを贈ることができるソーシャルギフト(eギフト)の急拡大があります。eギフト市場は2017年は1000億円にも満たない規模でしたが、2020年前後から増加トレンドになり、2023年に3196億円、2025年には4057億円まで急増しています*2
 
ただ、それでもまだ未利用の人が大半です。今年5月に国内の15歳以上の4万1501人を対象に行われたアンケート調査では、直近1年でeギフトを贈ったことがある人は約9%。eギフトを知ってはいるものの未利用の人が7割を占めます*3。逆に言えば、この人たちがeギフトを利用するようになれば、さらなる拡大が必至です。
 
 

ソーシャルギフトの特長

 
ギフト市場の利用者が増えるためには、「ギフトを贈る」という初発の行為をする人を増やすことが鍵になるようです。
 
同じ調査によれば、直近1年以内にギフトを贈らなかった人の94%は自分も貰っていませんが、贈った人の85%は自分もギフトを贈られています。eギフトに限って見ても、利用した理由の第1位は、自身がeギフトを受け取ったか、周囲が利用しているのを見たから。ギフト市場においては“貰う人≒贈る人”であることから、まず贈る文化を醸成して“貰う人”が増えれば、その人は“贈る人”になるから市場は拡大する――調査はそう結論づけています。
 
ギフトが次のギフトを呼ぶこのエコサイクルはある種の永久機関を思わせますが、では、そのサイクルを最初に回す人――最初に贈る人――は何に惹かれてソーシャルギフト(eギフト)を利用するのか。「母の日.me」の解説から適宜要約・抜粋してみます*4。下線は筆者。
 
1.手軽に感謝を届けられる利便性
 相手の住所を知らなくてもLINEやメールを通じて贈れる。
2. 多様なニーズに対応するラインナップ
 大げさなギフトではなく、ちょっとしたお礼を気軽に贈りたいニーズにも対応。
3. 時間や場所にとらわれない「時短ギフト」
 「時間がないけれど気持ちは伝えたい」という現代人にとって、ソーシャルギフトは救世主。
4. 受け取る側の自由な選択
 受け取った人が商品の種類やカラーなどを自由に選べるオプションが充実。「贈ったものが喜ばれないかも」という不安を解消し、より気軽にギフトを贈れる。
5. デジタルネイティブ世代への浸透
 この世代は「ギフト=デジタル」であることに抵抗感がなく、カジュアルな感謝の表現が定着。
6. 大手プラットフォームの積極的な展開と新規参入
 LINEギフトのような先行サービスが商品ラインナップの拡充や販促キャンペーンを積極的に展開。
7. 新たなギフト需要の創出
 従来の計画的なギフトに加え、「うっかりギフト」や「遅れてごめんねギフト」といったニーズにも対応。
8. 早期購入を促す施策
 プラットフォーム各社が早期クーポン配布や着日指定サービスを展開することで早期の注文を促進。これにより、直前の混雑を避けて計画的にギフトを選ぶ消費者が増加。
  全体的に「気軽、カジュアル」がポイントになるなか、おもしろいのは7番です。「遅れてごめんねギフト」はわかるとして、「うっかりギフト」って何だ? と思ったら、「今日誕生日だ! うっかり忘れてた!」とか、「贈り物を持たずにパーティーに来たヤバい!」とかのシチュエーションで、涼しい顔をして「おめでとう。これプレゼント」と、あたかも準備していたかのように渡すギフトだそう。
 
「いやいやいや(笑)」と思わずツッコミそうになりますが、例えばプレゼントがNFTだったりしたらそもそもURLで渡すしかないわけで、さまざまな価値物がヴァーチャル空間上で完結する今、物理実体が目の前にないことはさほど問題でないのかもしれません。
 
また、4番の理由をめぐっては、贈られた側が同じ金額以下の別の物に選び直せる「GIFTFUL」が出色です。結婚式の引出物などでよくあるカタログギフトショップ方式は、「あなたにはこれだと思って」という贈り手側の気持ちが載りませんが、GIFTFULではその気持ちは残しつつ、貰う側に他の選択肢も与えます。貰った人は「今はこっちの気分なんだ」と、何に選び直したかを「お礼カード」で知らせ、贈った人は「そうだったんだね」と発見がある。なかなか楽しいサービスです。
 
 

ソーシャルギフト(eギフト)の成功原理

 
先のアンケート調査では、ソーシャルギフト(eギフト)を現に利用中の世代は20・30代が中心で、利用意向が高いのはもう一つ若い10・20代の世代です。調査が言う通り、今の10代がもっとお金を使える年代に成長するにつれ利用者は増えるでしょうが、別の見方からも市場の賑わいが予想できると思います。
 
商品券・ギフト券との比較から話を始めましょう。商品券・ギフト券を貰うと有価証券の実物が手元に来ます。その意味で商流と物流が一体です。対してeギフトは、贈られる側の手元には商流のみ(権利のみ)が届きます。
 
次に事業形態の進化(?)順で見てみます。
①通常の小売業は一定規模の店舗と在庫倉庫がともに必須です。
②商品券・ギフト券の買取販売業(筆頭は金券ショップ)は、店舗は要りますが、在庫倉庫は持たずに券面の保管スペースだけで事業を展開できる点が強みです。
③EC事業(オンライン販売のみの物販業者やメーカー)は、在庫倉庫は必須ですが店舗は要らない点が強みです。
 
そして直近の最新形態であるECプラットフォームは、本来なら在庫倉庫も店舗も持たなくてよい点が強みですが、出店業者に便益を提供するためにフルフィルメントセンターあるいはロジスティクスセンターを持つ例があり、結局は在庫倉庫必須になっていきます。Amazonや楽天が一人勝ちできる理由はこれですし、Amazonは配送手段も自前で持つことで、商流に対する物流の遅行をも最小化しようとしています。
 
在庫倉庫必須の必然を免れるプラットフォームとしては「価格コム」等がありますが、それら「情報のプラットフォーム」と違い、ECプラットフォームは商流をまかないます。しかも、eギフトの場合、URLを相手に送った時点で贈り手にとってギフトを贈る行為は完了しており(=注文は満たされており)、後は受け取る側の行動と時間軸に委ねられることから、商流に対する物流の遅行が――その短縮も――相対的に大きな要因になりません。
 
これはつまり、
⑤eギフトプラットフォームは、ECプラットフォームでありながら、原理的に――ということは将来的にも――在庫倉庫必須の必然を逃れられるということです。
 
大資本を要さずブランディング一つで勝負できる。さらに言えば、品物の梱包・発送業務も免れてまったくの仲介ビジネスで済む。そんな市場が中小のプレイヤーでこれから賑わうことは、想像に難くありません。
 
このように考えると、ソーシャルギフト(eギフト)プラットフォームは、ECプラットフォームビジネスの最終形態かもしれませんね*5
 
 
 
*1 プレスリリースNo.3745(矢野経済研究所 2025/03/14)
*2 【データから読み解く】国内eギフト・ソーシャルギフト市場動向(ビジネス・ブレークスルー大学大学院公式サイト 2024年9月24日)
*3 「ギフト利用調査2025.09」(株式会社ヴァリューズ)
*4 【速報】母の日トレンド、2025年は「ソーシャルギフト元年」。母の日ギフトを提供するプラットフォーム各社の競争激化。LINEギフトやAnyGiftの先行組を追うように、大手ECモールも新規参入へ。(Groov株式会社2025年5月7日PR TIMES)
*5 eギフトプラットフォームでamazonギフト券を売っている様はどういう先祖帰り、どういう自己否定かと思いますが…。
 
(ライター 横須賀次郎)
(2025.12.3)
 
 

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