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「人生100年時代」。これまでに得た経験やスキルを活かし、新たな仕事に挑戦するシニア世代に注目が集まっています。そのようなシニアのセカンドキャリアを支援する企業や団体の取り組みを紹介するとともに、シニア人材を活かすためのヒントや情報を探る連載の第5回。
 
今回は、メンバーのほとんどが20代という新進気鋭の高齢者向け人材サービス企業、株式会社シニアジョブ代表取締役の中島康恵氏にお話をうかがいました。
 
 

シニア世代を支える情熱あふれる若者たち

 
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株式会社シニアジョブ代表取締役の中島康恵氏
――御社は2014年に当初IT企業として設立し、2017年から現在のシニア向け人材サービス事業を開始なさったそうですね。まずはじめに、御社の概要と取り組みについてお聞かせください。
 
弊社はシニア専門の求人サイトを運営し、登録していただいたシニアの方々へ職業を紹介したり、人材を求める企業とのマッチングをしたりするなどの人材サービスを提供しています。弊社のメンバーはほとんどが20代で、その全員が高齢者の人が働きやすい社会を一緒につくりたいという思いをもって入社してくれています。私たちがこうして働ける現在の社会をつくってくれた先人の方々に対して、「恩返しができたらカッコ良いよね」という思いをもって、シニアの方々を支援する仕組みづくりを進めています。
 
また、近年は少子高齢化に伴い労働人口が減少している中、日本が経済力を伸ばしていくために、まずは働ける人たちを増やすことが重要です。そのためにも、世間のシニアに対するイメージを変えていくことが最も大切だと考えています。一般的に、高齢者の方は頭が固くなってしまってるんじゃないかとか、若者の意見を聞き入れてくれないとか、ネガティブなイメージを抱いている人は少なくないでしょう。でも、それらのケースはごく一部であって、多くのシニアは柔軟に新しいことを学ぼうとしています。実際に、弊社にも67歳と69歳の方が、若いメンバーたちと共に、とても良く働いてくれています。このように、シニアの方々が若者とも分け隔てなく仕事が一緒にできることを、広く伝えていきたいですね。
 
 

将来への当事者意識を持ってもらうために

 
――高齢化が進む中、現在のミドル世代がシニア世代になっていくにあたって、将来への不安を感じている方も多くいると思います。そのような方々への取り組みについてはいかがお考えでしょうか。
 
今のところ弊社では、30~40代に向けた取り組みを行えていないのが現状です。しかし、私たちにはそれをしていかなければならないという当事者意識があります。また、ミドル世代の方々にも、これから自分たちが高齢者になっていくことに当事者意識を持ってほしいと思っています。弊社では、そのための情報発信に力を入れています。あるシニアの方が何度も面接で落ちたとか、履歴書を送ってもまったく受からなかったなど、現役のビジネスパーソンの多くは、そのような実情を知りません。シニアの方が実際にどのように仕事を見つけ、どのように働いているか。そのような情報を広め、当事者意識を持っていただくことを目指しています。
 
ミドル世代の方々も含め、世の中であまり知られていない情報の一つに、シニアの履歴書の書き方があります。実はお年を召した方は、書類選考の突破が最も難しいんですよ。そこで、例えば「こういう書き方では印象が良くないので、このようにして書類選考を突破しましょう」というアドバイスをしています。さらに経歴や実績も、「営業職としてこれだけの成績を収めて、社内でMVPを獲得した」といった情報はすべてカットしてしまうんです。そのような受賞歴などは、一見するとアピールポイントになりますよね。確かに20代や30代の若手であれば、「この人仕事できそうだな」というアピールになります。しかし、それはシニアでは逆効果なんです。
 
というのも、履歴書にそのような成績が書いてあると、採用する側はただでさえ「シニアは扱いにくい」と思っているのに、「この人はプライドが高いのではないか」と、余計に扱いにくく感じてしまうわけです。そこで重要なのは、華々しい成績よりも、具体的にどんな業務をして、どんな経験をしてきたか。採用担当者が求めている人材とうまくマッチングするために、その人材をより具体的にわかってもらえる事項が大事なのです。このような情報も周知していく必要があるでしょうし、どうすれば採用されやすいかなどの情報を収集し、ミドル世代がシニア世代になった時に、活躍するための準備をしてもらいたいと考えています。
 
 

意識の改革と豊かな未来の構築

 
――近い将来、ご自身や社内のメンバーたちがシニアになった時に向けて、どのような社会にしていきたいでしょうか。若い世代が中心メンバーである御社が描く、今後のビジョンをぜひお聞かせください。
 
何と言っても、年齢に関係なく働ける社会の構築です。働く気力があり、社会に貢献したい気持ちがあれば、それが実現できる仕組みにしたいですね。そのために最も重要なのは、先ほども言ったように、世間のイメージを変えること、そして、仕事への意識を変えてくことです。高齢者が若い世代と一緒に仕事をしても、組織として成り立つという事実を、私たちがロールモデルとなって示していかなければならないと思います。ほかにも、資格取得やスキルアップを目指している方への支援や、オンラインでのパソコンの教育事業なども考えています。実際に、弊社のサービスへの登録者は日本全国にいて、インターネット上からエントリーし、メールなどでやりとりしているんです。パソコンが苦手というのであれば丁寧に教えていますよ。
 
――最近ではリモートワークなども普及してきていますし、テクノロジーの発達によって今後ますます、職場と離れた場所でも仕事できることが一般的になりつつあります。
 
そうですね。例えば高齢者の方でも気兼ねなくITを活用できる仕組みをつくり、場所や時間にとらわれず、そして年齢にも左右されずに働けるような、エイジフリーな社会を目指していきたいと考えています。また、仕事だけではなく、ゆくゆくはライフスタイルすべてのサービスを提供し、生活の質の向上にも貢献していきたいですね。これだけ日本で高齢化が進んで、人手不足にあえいでいる中では、誰かが必ずやらなければならない事業であると思います。本来なら国の政策として大がかりに行うべき分野かもしれません。でも、欧米では民間企業がロケットを飛ばしたり宇宙産業に進出したりしているように、民間から豊かな未来をつくっていく。弊社は、そのための会社であると自負しています。
 
 
株式会社シニアジョブ
https://senior-job.co.jp/
 
 
人生100年時代におけるシニアのセカンドキャリア
Vol.5 シニアを支える若者たちと将来に向けた意識改革
(2019.10.4)

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