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東京メトロ日比谷線三ノ輪駅3番出口より徒歩3分の改栄湯は、1950年の創業以来代々続いてきた下町の銭湯。2020年11月 “プチ贅沢なリゾート気分になれる” ラグジュアリーな銭湯へと大胆なリニューアルを図りました。老若男女問わず人々が訪れる人気の秘密は、4代目の翁洋平氏が前職のホテル勤めの経験を生かし、顧客のニーズに応えるサービスを展開しているところ。翁さんに、経営を継いだ経緯や今後の展望など、事業にかける思いをお聞きしました。
 
 

2020年“プチ贅沢なリゾート気分になれる銭湯”へ生まれ変わる

 
――翁さんは、改栄湯の4代目でいらっしゃるんですよね。
 
ラグジュアリーな銭湯改栄湯
ラグジュアリーな銭湯改栄湯
はい。改栄湯は私の曽祖父が1950年頃に創業し、木造から現在のビル型の銭湯に立て替えてからは約34年が経ちますね。実は私、成人するまではほとんど家業の手伝いもせず、継ごうとも思っていなかったんですよ(笑)。それが、ある時3代目の父から、「誰かが継がなければ廃業する」と聞かされ、せっかくなら継いでみようと思ったんです。老朽化した設備を改装する必要があったので、2020年11月、私が31歳の時にフルリニューアルするタイミングで4代目として受け継ぐ運びとなりました。
 
――家業に入るまでは、別業種にお勤めだったのですか?
 
大学卒業後は某大手ホテルチェーンに9年ほど勤めて、売上至上主義的な厳しい競争社会の現場でみっちり社会勉強しました。ホテルには大浴場があるなど銭湯業と通ずる点も多く、サービスや経営面でも、当時の経験は今に生かされていると思います。
 
和モダンな雰囲気の浴場内
和モダンな雰囲気の浴場内
男湯の露店エリア
男湯の露天エリア
――2020年のリニューアルは、どのようなコンセプトで進めたんですか?
 
台東区は現在23件の銭湯がある激戦区なので、もともとこぢんまりとした銭湯だったのを、他店と差別化を図るため大幅に改装したいと考えました。そこで、“プチ贅沢なリゾート気分になれる銭湯”をキャッチフレーズにしたんです。例えば、リゾートホテルの大浴場は解放的で優雅な気分になれますよね。同様に、近所の銭湯でも都会にいながら日頃の忙しさを忘れてリラックスできる、ちょっと贅沢な空間を提供できればと考えたんです。改装はベテランの銭湯設計士の方に依頼し、館内は木目調に統一して和モダンな雰囲気になるようデザインしていただきました。
 
――リニューアルにあたり、お風呂の水も軟水に変えられたとうかがっています。
 
はい。浴室の水はすべて都内の銭湯の中でもトップクラスの高純度軟水が出るようにしました。まるで化粧水のように柔らかい水質で、健康・美容ともに効果が高いと、ご好評をいただいております。また、設備面では新たに高濃度浸透炭酸泉、シルキーバス、ジェットバス、水風呂、サウナを設置し、男湯にはもともと物置だったスペースを活用して露天エリアも加えました。
 
 

今年7月、男湯サウナをオートロウリュサウナへ再リニューアル

 
女湯に設置された高品質なアメニティ
女湯に設置された高品質なアメニティ
ダイソンの最新式ドライヤーも導入!
ダイソンの最新式ドライヤーも導入!
――具体的に、どんな部分を“プチ贅沢”にしたのですか?
 
例えば浴室の壁にはいぶし瓦風の光沢があるタイルを使用し、ラグジュアリー感を演出しています。特に女湯のアメニティは品質にこだわりたかったので、実際にホテルにも置かれているメーカーのオレンジローズの香りのシャンプー、コンディショナー、ボディーソープを設置しています。最近では半数の洗い場にミストシャワーも出る高機能シャワーヘッドを導入したところ、予想以上に好評で混雑時には争奪戦になっているそうです(笑)。改装時に広めに設計したパウダースペースには、ダイソンの最新式ドライヤーを3台設置していますよ。
 
――女性のヘアケアもバッチリですね! 一方、男湯ではサウナに力を入れている印象です。
 
男湯は露天エリアにサウナ、水風呂、外気浴スペースがあります。私もサウナ好きなので、2020年の改装時にはみなさんが移動する時の導線を意識して設計しました。その甲斐もあって、改装して1年が経つ頃には予想以上に混雑する状況になりました。ありがたい反面、お客様は待ち時間が増えてしまったんです。それで、よりご満足いただけるサービスを提供するため、設計士さんに無理を言って、もとは7名の収容人数だったのを、今年の7月に10名が利用できるようにスペースを広げていただき、設備もドライサウナからオートロウリュサウナへと進化しました。
 
――2020年に設置したばかりのサウナをさらに改装されたんですか! かなり思い切ったことをしましたね。
 
この短期間で再リニューアルするのは、他の銭湯さんでは考えにくいと思います。もちろん費用もかかりましたが(笑)、とにかく自分の納得がいくサービスを提供したかったので、決断することに躊躇はありませんでした。サウナ利用者専用の外気浴エリアも新設したことで、サウナ室や外気浴の椅子が満員になることは減り、回転率が上がって混雑がかなり緩和されました。男湯サウナに限り少々値上げしたものの、みなさん変わらず足を運んでくださっているので、満足度を高めることができたのではないかと思います。
 
――一度リニューアルをして終わりではなく、お客さんが利用しやすいように、その都度工夫をされているんですね。
 
そこは非常に意識しています。私自身、銭湯経営に携わったばかりでまだまだ未熟ですから、営業していきながら新たに気づいた問題点と向き合う場面が多々あります。また、経営面でいうと銭湯は入浴料が一律な分、他の部分で付加価値をつけることに注力しています。例えば、アメニティやオリジナルグッズを販売しているほか、入浴後には生ビール、ハイボールなどお酒を提供しています。去年の夏から導入した本格的なソフトクリームも名物です。“プチ贅沢感”を味わっていただけるような商品を販売したかったので、直接メーカーさんにうかがって10種類ほど試食した中から厳選しました。
 
男湯サウナ利用者専用の外気浴エリア
男湯サウナ利用者専用の外気浴エリア
2022年の再リニューアルで広々としたサウナに!
2022年の再リニューアルで広々としたサウナに!
 
 

父から言われたのは「風呂屋は掃除屋」という言葉

 
――サービスも設備も高品質な改栄湯さんは人気店で多くの方が訪れる分、メンテナンスも大変そうです。
 
エントランスでも“プチ贅沢感”を味わえるサービスを提供
エントランスでも“プチ贅沢感”を味わえるサービスを提供
いろいろと付加価値のお話をしましたが、日頃から手入れの行き届いた清掃を行ない、常に清潔感のある空間を提供することが経営の大前提だと考えています。銭湯を継ぐうえで父から言われたのは「風呂屋は掃除屋」という言葉でした。いくら設備が整っていても、清潔でないとお客様は来ないし、離れていってしまいます。私も経営してみて、銭湯運営の根幹は掃除にあることを実感しています。実は浴室の清掃には私の兄も裏方として入ってくれていて、非常にきれい好きなこともあってスタッフと共に細かいところまで手を抜かず掃除してくれています。私もトイレ掃除だけでも1日30回は行い、休日も返上して徹底したメンテナンスに努めています。銭湯業はそこが一番大変なところですね(笑)。
 
――翁さんが今後挑戦してみたいこと、将来の夢を教えてください。
 
近々ではレディースデーの開催です。露天エリアに入ってみたいという女性からのお声も多く、今年の1月に一度やってみたんです。すると、予想以上の盛況ぶりでした。そのため、次に開催するときは、現在製作中の新HPに予約システムを連動させ、みなさんがより快適に過ごせる形にしたいと考えています。こういった取り組みが、銭湯に馴染みのない方に銭湯の良さを知ってもらえるきっかけになれば嬉しいです。これからも新しいサービスを取り入れながら引き続きしっかりとこの店を守り、20年以内にはそれまでに培ったノウハウの集大成となるような、自分の理想とする銭湯を造りたいです。大きな目標ですが、不可能ではないとも思っています。屋号の通り、さらに“改めて栄える銭湯”にしていきたいですね!
 
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4代目店主の翁洋平氏
 
 
(取材:2022年7月)
 
 
改栄湯
■住所 
〒110-0011 東京都台東区三ノ輪2-10-15
■アクセス
東京メトロ日比谷線「三ノ輪」駅3番出口より徒歩3分
■営業時間:月~木曜14:00〜24:00/土曜・日曜12:00〜24:00
最終入場23:30
休業日:金曜
■URL: https://kaieiyu.business.site/
 
復活する銭湯
vol.8下町・三ノ輪のラグジュアリーな銭湯、改栄湯
 
(2022.8.31)
 

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