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あまり人に知られていない、ニッチな仕事を紹介するコーナー。vol.3に登場するのは鎌倉で苔テラリウムの制作・販売店や制作教室を運営する苔むすび合同会社の代表で、苔研究家でもある園田純寛さん。苔を研究する学生から会社員を経て独立に至った経緯や、苔を社会に役立てるさまざまな活動について聞きました。
 
 

苔むすびとは?

 
鎌倉を拠点とする苔のブランド。苔テラリウムの制作・販売、制作教室のほか、苔庭の施工・管理などを手がける。苔のことなら何でも相談に乗ってくれる苔のスペシャリストとして、さまざまな形で苔と人とを結びつけている。
 
 

『もののけ姫』の自然描写に心が動く

 
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園田純寛さん
園田純寛さんの出身地は千葉県市川市。決して自然が豊かとは言えない土地で育ったことが、逆に自然への興味を抱かせたのか、「自然に触れることが昔から好きだった」という。
 
苔に魅力を感じる一因になったのは、中学生の頃に鑑賞したアニメ映画の『もののけ姫』。作中で描かれている森林の風景は、緑色の苔に覆われていた。「あの神秘的、幻想的な雰囲気を演出する役割を担っているのは苔だと思ったし、そこに興味を惹かれました」。
 
生き物と植物は、どのように関わり合っているのか。自然界の仕組みはどのように成り立っているのか――そうしたことに興味を持っていた園田さんは、「高校生くらいの頃には漠然と、森林やそこに住む植物や生物に関する勉強がしたい」と思うようになっていた。
 
北海道の大学に進学後は、苔を含む植物の生態や、微生物との関係などの研究に励み、大学院にも進んだ。「森林が維持されるには、小さな微生物や苔などの植物が重要な役割を果たしていて、そうした生物の存在にロマンを感じていましたね」。
 
 

趣味の苔テラリウム制作を事業化

 
卒業後は学んだ知見を活かして香料メーカーに就職。研究・開発職に従事しながら5年半にわたり会社員として生活していた。その傍ら、趣味で苔に関するイベントに参加したり、苔テラリウムを制作したりするなどの作家活動も続けていた。
 
その中で、フリーマーケットやインターネットで販売したオリジナルのテラリウムの評判が思いのほか良く、苔に大きな需要があることに気付いた。「意外にも苔業界が盛り上がりつつあることを感じました。これなら、会社員の仕事と趣味の活動を徐々にスライドしていっても大丈夫かもしれないと思いましたね」。
 
2016年に会社を退職した園田さんは、会社員時代から住んでいる鎌倉を拠点に個人事業主として独立。テラリウムの制作・販売を軸にしつつ、テラリウム制作教室を開くなど、趣味で行っていた活動を事業化していく。活動を続けるうちにスタッフも増え、2021年9月には、苔むすび合同会社を設立した。<
 
 

苔業界を産業化したい

 
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長年のノウハウを生かして高品質なテラリウムを販売
事業の中心は個人事業主時代と同じくテラリウムの制作・販売や教室の開催だが、園田さんの活動はそれだけに留まらない。単なる作家としてではなく苔について専門的な知識を持つ存在として、コンサルタントの役割を担いながら、業界内の橋渡し役になることもある。
 
園田さんが望むのは、苔業界が産業として成熟し、品質の高いものだけが市場に出回る状況をつくること。つまり、「苔を一つの産業として成立させること」にある。というのも、苔業界にはまだきちんとした流通経路が確立していないからだ。「苔に対する知識が十分でない生産者もいて、正式名称と異なる名前で生産されたり売られたりしている苔も多い。そのため、こちらが望むような種類や品質の苔を安定して手に入れるのが難しいのが現状」。
 
ブームに便乗して利益を得ようと、山から苔を採取してきて品質管理もせずに売っているだけの業者もいる。そうした業者が介入する余地をなくしていくためには、きちんと高品質なものを規格化していき、それらが利用されるように苔業界を産業として成熟させなくてはならないのだ。
 
野山に無限に存在しているように思える苔も資源。山に生息している苔の中には行き過ぎた乱獲によって、供給が難しくなっている種もある。そこで必要になるのが、「生産するという仕組みづくり」。園田さんが持つ“需要のある苔の情報”を、しっかりとした技術と知識を有する生産者に伝えて栽培を働きかけ、安定した供給源の確保につなげている。また、新規に生産者として就農を希望する人と、既存の生産者をつなぐ役割を買って出ることも。
 
そのように関係者らが相互に補完しあうことで、業界の活性化と産業規模の拡大にも尽力。「きちんとした品質の苔が市場に溢れるようになれば、『売れればいい』という感覚で商売をしている業者も減っていくと思います。そのように、業界がきちんとした産業として成立するためには、もっともっと世間に苔の存在を認知してもらわないとダメですね」。
 
 

鎌倉を苔のまちに!

 
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屋根に苔をあしらう施工をした、苔屋根
拠点を構える鎌倉には寺社仏閣も多く、苔をフィーチャリングするには適した土地だと園田さんは考えている。実際に、苔の専門家である園田さんの存在を知って、最近は地元のお寺から敷地内の苔の施工・管理を任されるケースも出てきた。そこで、造園業者が持っていない苔の知識を存分に生かし、劣化した苔の保守・管理を代理している。
 
「ご依頼に対応することで、境内の景観に見合った苔は何かなど、新たに現場で得たアイデアをニーズとして生産者さんにフィードバックすることもあります」。サプライチェーンの川下で商品を制作・販売している立場から、市場で受け入れられる商品は何か、ノウハウのない生産者に現場の声を伝えることで、生産者に貢献しているのだ。
 
観光地としても人気のある鎌倉には苔を鑑賞できるスポットも多いため、苔むすび合同会社が見どころをまとめてマップを作成。Webサイト上で発信もしている。また、苔を鑑賞する散歩ツアーも企画・開催するなど、活動を通じて苔の普及に努めている。
 
園田さんの夢は「鎌倉を苔のテーマパークのような、苔のまちにする」こと。苔への尽きない愛情を趣味からビジネスへと広げてきた園田さんは、「苔には無限の可能性がある」と感じている。苔と人とをむすび続ける仕事に、終点はなさそうだ。
 
 
※本文内の掲載画像はすべて、苔むすび合同会社の提供
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営業時間:13:00 – 17:00
定休日:火・金曜日
 
ニッチなお仕事 
vol.3 鎌倉を苔のまちに! 苔と人とをむすぶ 苔むすび合同会社 園田純寛さん
(2022.7.8)

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