B+ 仕事を楽しむためのWebマガジン

トピックスTOPICS

スポーツ 建山義紀の「ココだけの話」 vol.9 ヤンキースで奮い立つ心 建山義紀の「ココだけの話」 テキサス・レンジャーズ投手

スポーツ
 
 こんにちは、建山義紀です。
 およそ5ヶ月ぶりの更新になりましたが、皆さん、お元気でしたか? ぼくはこの冬はオフもしっかり堪能しました。腰をいたわってゴルフこそ封印していますが、おいしいものを食べ歩くのだけはやめられへん! 帰国したら必ず行く大阪の創作料理のお店で、高級和牛のようにおいしいマグロのほほ肉をご馳走になったり、仲間と一緒にワインをひたすら飲み続ける会を開いたり、他にも・・・いや、キリがないな(笑)。
 
 プライベートの話はさておき、あらためて、これから始まるシーズンに向けて、ぼくがどんな日々を過ごしていたかをお話ししましょう。ここだけの話やで!
 
 

目的のあるトレーニング

 
 シーズン終了後は10月からトレーニングを再開し、11月までアメリカにいました。12月は日本に戻ってきて、パナソニックさんの練習場を借りて村田君とともに汗を流すなど、春のキャンプに向けてコンディションを徐々に上げてきましたね。年内はそうやってコンディションを取り戻す調整程度でしたが、年が明けてからは本格的に投げ込めるようになっています。
 
 ぼくのトレーニング方法は、その時々の体調にもよりますが基本的には変わりません。ただ、年齢を重ねるごとに、足や腰といった不安箇所にも配慮し、多少は変化させています。たとえば、グラウンドでの走り込みは減らしていますね。そのぶん室内トレーニングを増やして、昨年のトレーニング同様体幹を鍛えたりして、必要最低限の体力維持だけはできるようにしています。
 
 それでも、ただ漠然と調整するだけで終わってはいけません。やはり最終的にどこへ到達するかを大事にしないといけないんです。ビジネスでも同じでしょう? 毎日、なんとなく仕事をするのと、具体的な目標を見据えて仕事をするのでは、小さな動き方一つとっても違いが出てくる。
 
 

早め早め、とにかく早め

 
 では、ここでぼくのやっている「結果を出すための秘訣」を一つ、お伝えしましょう。
 到達点をイメージしたら、それまでの準備を早めにすることが何より重要です。ぼくの場合は「早すぎるんじゃない?」と言われるくらいに、早めに身体をつくっていくんです。選手によって違いはありますが、ぼくは体力トレーニングから実際にボールを握るまでの期間が短いほうなんですよ。ブルペンに入ったり、投球を仕上げる早さは、昔から変わっていませんね。1月下旬頃からはブルペンで50球投げてます。
 なぜそこまで「早め」にこだわるかというと、もしかしたら途中でアクシデントに見舞われたり、予定が滞ることがあるかもしれない。そういう時に「もっと早く準備しておけばよかった」と後悔しないためにも、自分のペースを先取りするんですね。
 
 これは、ローテーションに入っているとか、立場が確約されているとか、そういったことを抜きにして、ぼくが昔から大事にしてきたことです。もちろん体の調子や腕に違和感があった場合は、無理せず、その不調とじっくり向き合うことも大事ですが、早めに動いておくと焦りがなくなるんですよ。ぼくはチームの練習だけでなく友人との食事の約束などにも絶対遅刻しないんです。飲む約束をしていて、誰よりも早く行って先に店で一杯やっているタイプ。なんでも早いでしょ(笑)? この余裕が持てるかどうかは、日々のメンタルコンディション維持の面でも、けっこう大きな違いになるんですよ。
 
 

イチローさんと黒田さんとマー君

 
 さて、話は変わりますが、ニューヨーク・ヤンキースというチームについて、少しお話をしておきましょう。日本時間の今日2月12日未明、マー君の記者会見もありましたが、ヤンキースにはメジャー球団最多の4人の日本人選手が所属することになります。
 
 イチローさんは、ぼくがアメリカに移籍した当初、同じ地区でやっていたこともあり、面識はありました。まだヤンキースの同僚としてお話してはいませんが、とても気さくな方なので話しかけやすいでしょうね。そもそも、とても周囲に気を遣われる方ですから、球界の後輩といえど、安心して話せるんです。せっかく同じチームになったんですから、今までイチローさんが積み重ねてきたものをしっかりと聞いてみたいですね。
 黒田さんは日本でもリーグが違ったので、お話する機会はなかったんですが、お会いできるのが楽しみですね。
 
 マー君は、直接の面識はありません。日ハムと楽天という同じパ・リーグどうしでしたから、ぼくは知っていますし、日本で彼が達成したことのすごさもよくわかります。一応は球界の先輩に当たりますが、ぼくがマー君に教えてあげられることは、たぶん何もないかな(笑)。 彼はきっとメジャーでやるうえでの心構えや、メジャーでやるうえで何が大事か、どんなものが必要かなどは十分にわかっていると思うんです。先人たちの味わった苦労や、自分が何を求められているかを、肝に銘じて海を渡ってくるんじゃないかな。
  一つだけ言えるのは、ヤンキースは彼にとってラッキーな環境だとぼくは思っています。アメリカの球団は、おおよそアリゾナかフロリダのどちらかでキャンプをするんですが、この二つの地域には大きな違いがあるんです。それは、湿度。アリゾナは乾燥しており、フロリダは適度な湿度があります。乾燥しているとボールの皮が滑りやすくなるので、ボールが手になじんで付いてくるまでが大変なんです。その点で、最初に大きな苦労をすることは避けられそうですよね。
 
 

初心に戻って上を目指す

 
 実はぼくにとっても、ヤンキースは、とてもラッキーな環境なのだと思っています。正直なところどちらかというとブルペンの薄い、つまり、投手力の弱いチームでやりたかった。そのような環境だと、メジャーで投げられる可能性が高まるわけですから。
 
 でも、結果的にあらためてヤンキースと契約するに至って、気が付いたんですよね。井の中の蛙じゃないですが、「メジャーでやる」という強い気持ちを持って渡米したわけですから、ヤンキースのような強豪チームのブルペンを勝ち抜いてロースターに入ってやるというモチベーションがないと、アメリカでやっている意味がない。これくらい強い気持ちがないと、どのチームでも上にいけるはずがない。そう考えると、メンタル面で初心に戻れ、いい切り替えができたオフだったと思います。

今シーズンもヤンキース建山、頑張ります。みんな、見とってや!
 
 
 
 

 執筆者プロフィール 

建山義紀 Yoshinori Tateyama

メジャーリーガー

 経 歴 

1975年、大阪府出身。中学時代からボーイズリーグにて野球を始め、現在のピッチングを支えるサイドスローを確立。東海大仰星高校ではエースとして君臨。1998年にドラフト2位で北海道日本ハムファイターズに入団すると、ルーキーイヤーの1999年にいきなり先発ローテーションへ定着。2002年から2004年にかけてセットアッパーとしての才覚を表すと、リーグ最多の13ホールドを記録し、最優秀中継ぎ投手を獲得。その後、先発・リリーフともに計算できる投手としてチームに貢献した。2010年に海外FA権を行使してのメジャー挑戦を表明、テキサス・レンジャーズとの契約を勝ち取った。2013年のシーズン途中からニューヨーク・ヤンキースに移籍。サイドスローから繰り出す角度のある速球と、ダルビッシュ有選手をして 「球界最上」 と言わしめたスライダーが武器。

 ツイッター 

http://twitter.com/tatetatetateyan

 
 
 
 

関連記事

最新トピックス記事

カテゴリ

バックナンバー

コラムニスト一覧

最新記事

話題の記事