自己ベストを更新し
世界の頂点に立つ
陸上選手 桐生祥秀
高校3年生のときに、陸上競技100mで10秒01という日本高校記録を更新するタイムを出し、一躍有名になった桐生祥秀さん。2016年にはリオデジャネイロオリンピックに出場し、男子4×100mリレーで銀メダルを獲得した。翌年には日本選手初となる100m9秒台、9秒98をマークするなど、陸上選手として第一線を走り続けている。もともと「オリンピック選手になることが目標だった」と語る桐生さんにインタビューし、現在の目標やプロとしての矜持についてお聞きした。
9秒台へのプレッシャー
陸上を部活動だけでなく仕事として生きていこうと考え始めたのは、高校3年生の頃です。織田幹雄記念国際陸上競技大会の予選で10秒01という記録が出ました。高校記録を更新するタイムでしたし、日本人としても当時歴代2位のタイムだったんです。そういった記録を出せたことが自信につながり、プロとして生きていきたいと考え始めました。
ただ、当時は高校生でしたし、プロの仕組みもよくわかっていませんでした。そこで先輩方にいろいろアドバイスをいただいて、大学に進学したんです。そうして大学3年生のときに男子100mと男子4×100mリレーでリオデジャネイロオリンピックに出場しました。リレーでは銀メダルを獲得できて、人生が変わった感覚がありましたね。
実は、オリンピックに出場するということにプレッシャーはあまり感じていなかったんです。当然出られるだろうという自負がありましたし、そういった気持ちを持っていないと戦えない舞台だと思っています。ただ、そのときは「誰が日本人で最初に9秒台を出すのか」というプレッシャーがあったんですよ。
今ではありがたいことだと思えますが、当時はメディアの方々に「なぜ9秒台が出ないと思いますか」といった質問をされることにつらい思いもしていました。それだけ注目してもらえているということですし、選手である以上結果を求められるのは当たり前のことなんですけどね。当時はなかなかきつかったです。
でもやはり、それ以上に銀メダルは嬉しかった。リレーの予選に出場したとき、選手全員が確かな手応えを感じていました。みんな、「絶対にメダルを獲れる」と確信していたんです。そうした中で獲れた銀メダルだったので本当に嬉しかったですね。日本に帰ったときも多くの方から喜びの声をいただいて、陸上競技が大きな注目を浴びて盛り上がっているのが感じられました。