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コロナ禍のオフィスづくりをどう考えるべきか vol.2 行動科学に基づくオフィスづくり

ビジネス コロナ禍のオフィスづくりをどう考えるべきか vol.2 行動科学に基づくオフィスづくり コロナ禍のオフィスづくりをどう考えるべきか 株式会社翔栄クリエイト 執行役員・ビジネスクリエイション事業部 事業部長 河口英二

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健康、環境、経済など、分野をまたいで多角的に事業を展開する株式会社翔栄クリエイト。同社のビジネスクリエイション事業部の河口英二部長は今年2月末、『経営者のための経営するオフィス』を出版した。同事業部が推進するオフィス空間の有効な活用法について触れた同著と、20年の実績を有する同社の空間コンサルティングの効果について、お話をうかがったインタビューの第2回目。
 
――書籍の第2章で、『「常識を疑う」オフィス空間を見直して経営課題を解決す14カ条』として、経営課題を解決するためにオフィス空間をどのようにとらえるべきなのかが書かれています。これは、河口さんのこれまでの経験がもとになっているんでしょうね。「レイアウトより幹部社員への説明の仕方が大事!?」「ABWは、やり方次第で組織崩壊?」など、興味深い内容ばかりです。
 
ありがとうございます。結果的に経営者の方がこれを読んでどう思われるのか、予測がつかない部分もあります。経営者の想い描く理想の姿への変化を空間で促すということをしようとしているので、そもそも、それを求めていない現在順風満帆に組織マネジメントができているベンチャー企業や、どんなオフィスにするかより、オフィス移転を無事成功させることを主眼においている総務担当の方などは、お読みいただいてもピンとこない可能性もあります。もしかしたら、「何を言ってるのかよくわかんない。何言ってんのコイツ?」と思われるかもしれません。
 
でも、組織が大きくなり社員に想いが伝わらなくなってきた、思ったように組織が動かないなど、本当に組織マネジメントに苦労した経験のある方が読んだら、「あ~なるほどね」と思ってもらえるだろうなという事例を集めました。
 
ですからこの14項目は、1000 社を超えるオフィスを訪問してきたわれわれがその経験に基づき、オフィスづくりで経営者の方が陥りがちな落とし穴を紹介し、それを解説しているんです。
 
――事例の蓄積があったからこそ、抽出できた14項目なんですね。ところで、御社のホームページには、「働く空間において、社員一人ひとりの意識・無意識に影響を与えることで企業の業績向上を目指す」と書かれています。この、「行動科学に基づく」という手法は当初からのものなんですか。
 
いいえ、そうではないです。長年にわたってサービスを続ける中で、当社の空間づくりの手法が行動科学に基づくものだという根拠をもって推進しているのは、数年前からです。これまで、空間づくりを手がける中で、本当にお客様のためになったのかどうかを検証していく中で、独学でいろいろと勉強を続けていましてね。
 
あるお客様のオフィスで成功した手法が、他のお客様ではうまくいかないこともあった。これには理由があるはずで、例えばデザインとか、レイアウトがとか、そういうことが原因ではないのではないかと思い始めました。それよりもむしろ、経営者の方に当社の空間創りの考え方を理解していただけていなかった、社員の方々への説明が不足していたのではないかなどと、人にかかわることが大事なのではないかと気付いたんです。
 
ただ、数年前まではそうして蓄積してきたノウハウを、自らの肌感覚で事業を推進しているような感じでした。その中で、2018年頃にご縁があって、日本の行動経済学の第一人者である、明治大学の元教授・友野典男先生と知り合う機会がありましてね。
 
――書籍の第3章で対談をされている方ですね。
 
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友野典男氏(左)
そうです。初めてお会いしたときに、友野先生には当社のこれまでの事例をたくさん紹介したんです。それを友野先生はじっと聞き続けてくださいました。私が説明をする間、何も喋らないのでプレッシャーがすごかったですけど(笑)、最終的に「河口さんのやっていることは行動科学ですね」とおっしゃってくださったんですよ。行動科学とは、人の行動、特に意思決定について、心理学、経済学、社会学、脳科学などとの複合的に研究する学問のことです。
 
――なるほど。友野先生のおかげで御社の取り組みが、科学的根拠に基づくものとして言えるようになったと。
 
そうなんです。友野先生とはその後も意見交換をさせていただいていて、今回、書籍にもご登場いただきました。書籍では、人間はどのような影響を受けると自身の行動を変えるのか、そして、それが組織運営や経営にどのような影響を及ぼすのかを、行動経済学の視点より分析しています。「人の意識と行動」について、具体的な事例を交えながら、オフィス空間をクリエイトするうえでの課題や解決策、そして、集中して仕事を続けるための方法をお話ししています。
 
――第3章の対談で、頭の中には「システム1」と「システム2」という2つのシステムがあり、それが人間の行動を決めているというお話があります。これは、御社の空間づくりに取り入れられている考えですよね。
 
はい。「システム1」は、感情や直感の部分を担当し、「システム2」は考える・熟慮することを担当しています。この2つが互いにやり取りをして人間の行動が決まるんです。しかし、その行動の8割以上は、「システム1」が決めているそうです。
 
そこで、経営者の方が、会社をこうしたいと思う方向性に向けて社員の行動を変えるには、「システム1」に訴えかける空間づくりが必要になるわけです。仮に、空間をつくるのではなく、経営者の方が直接社員へ語りかけて行動を促すのであれば、それは「システム2」に訴えるやり方ですね。しかし、それでは時間がかかるし、どこまで伝わりきるか、心もとない部分もあります。
 
ですから、空間をつくることで、「システム1」に働きかけ、社員の行動の変革を支援するのが、当社の手法ということです。もちろん、だからと言って「システム2」はどうでもいいということではなく、「システム1」で行動のきっかけをつくり、その理由付けとして「システム2」への訴えかけも重要なので、その両方に働きかけるための支援が必要です。
 
――第1章で御社の顧客の事例を紹介している中でも、「システム1」に働きかけた取り組みが紹介されています。第3章を読むことで、その手法がいかに合理的で説得力のあるものなのか、より理解が深まりますね。それでは、次回は、書籍にもない事例のお話などをうかがいたいと思います。
 
~vol.3に続く~
 
コロナ禍のオフィスづくりをどう考えるべきか
~『経営者のための経営するオフィス』著者、翔栄クリエイト・河口事業部長に聞く~
vol.2 行動科学に基づくオフィスづくり
 
(取材2021年4月)

 著者プロフィール  

河口 英二 Kawaguchi Eiji

株式会社翔栄クリエイト 執行役員・ビジネスクリエイション事業部 事業部長

 経 歴  

1970年愛知県生まれ。人材サービス会社にてアウトソーシング事業で経験を積んだ後、2009 年、事業コンセプトに共感し、株式会社翔栄クリエイトに入社。同年、執行役員および「行動科学に基づく空間創り」を行うビジネスクリエイション事業部事業部長へ就任する。以降、10年以上にわたり空間クリエイト事業で数々のプロジェクトに携わり、企業の業績向上支援となる空間づくりを手がける。数々のセミナーにも登壇、講演数は 450 回を超えるほか、YouTube配信なども展開中。

 翔栄クリエイト河口の空間創りチャンネル 

https://www.youtube.com/channel/UC3eOjbw-VQMdf9-QKKl6RQA

 株式会社翔栄クリエイトビジネスクリエイション事業部 

https://syouei.net/

 書籍情報 

経営者のための経営するオフィス
著者 河口英二
出版社:株式会社ファーストプレス
出版日:2021 年 2 月 22 日
価格:¥1500 (税抜き)

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