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ビジネス 川上徹也の「買いたい」のヒミツ vol.4 3本の矢を確立する 川上徹也の「買いたい」のヒミツ コピーライター/湘南ストーリーブランディング研究所代表

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この“小さな企業”はどこ? 答えは後半で
 京都に従業員10人程度の小さな会社があります。売っているものは、オフィス用品。自社製品ではないので、商品はどこでも買えるものです。同業種の大手企業は数多くあります。価格競争では勝てない。にもかかわらず、この会社から買いたいというお客さんは後をたちません。それはなぜでしょう? 答えはコラムの後半で。
 
 

3本の矢で会社を輝かせる

 
 こんにちは。コピーライターの川上徹也です。
 前回は、商品を「物語で売る」時、まず作り手や売り手の「志」が最も重要であることをお伝えしました。しかし、心の底から沸き上がってくる「志」なんてないよ、という会社も多いでしょう。 
 そんな方は、まず私が提唱している「ストーリーブランディング」という手法で、会社経営の指針をデザインすることをオススメします。
 
 「ストーリーブランディング」とは、「物語」の力を使って会社・商品・個人など、ビジネス全般を輝かせることを言います。その会社が本来持っている価値をわかりやすく“見える化”するのが特徴で、以下の3つの階層の違うストーリーを構築していくことがポイントになってきます。
 
 
「ストーリーブランディング」の3本の矢
 
 (1) 志(こころざし)
 (2) 独自化のポイント
 (3) 魅力的なエピソード
 
順番に見て行きましょう。
 
 

「志」は会社の最大の武器

 
 まず最初の矢は、「志」です。心の底から沸き上がるようなものでなくても大丈夫です。
 ストーリーブランディングにおいては、「志」は会社が世の中に向けて発信する「大義」のことを言います。その会社や商品がなんのために存在するのかを1行の言葉に凝縮します。
 
 もしなかったとしたら、今からでもつくりましょう。まったくないものを創作するという意味ではありません。会社であれば、創業時代からの歴史や、創業者・経営者の生い立ち等を振り返る中で「志」を発見するのです。商品であれば、それが何のために開発され、どのような人の生活がよくなるかを徹底的に考えて「志」を発見します。それを多くの人に共感できる1行にこめるのです。
 
 

独自化のポイントは3つの“ワン”で

 
 2本目の矢が、「独自化のポイント」です。いくら「志」が立派でも、他社と同じでは「言ってることは立派だけど・・・」と思われてしまいます。その会社ならではの「商品」「販売方法」「サービス」などがないと説得力がうまれません。それが独自化のポイントです。「志」ときちんとリンクしていることが大切です。
 
 「独自化のポイント」は、会社の特徴にもなるので、ひと言で表現することが重要です。そうすると、口コミで広がっていきやすくなります。すぐに思いつかないのであれば、以下の3つのワンから考えてみるのがわかりやすいでしょう。
 
・ナンバーワン   (日本一、地域一、業界一など)
・ファーストワン (日本初、地域初、業界初など)
・オンリーワン    (日本唯一、地域唯一、業界唯一など)
 
 このうちどれかひとつでもワンがあれば、あなたの会社や商品は、他とは違うものとして独自化できます。また「ワン」がなくても簡単に諦めないでください。分野を絞り込んだり、見せ方を変えたりすることで、何かしらの「ワン」が発見できることがあります。
 
 

「魅力的なエピソード」を集める

 
 3本目の矢が、「魅力的なエピソード」です。これは実際にあった「志」や「独自化」を表すような象徴的なエピソードや、アイデアレベルの日々のいろいろな試みのことを指します。具体的なエピソードがあることで、「物語が立体化」して効果を発揮します。当たり前ですが「志」や「独自化のポイント」ときちんとリンクしていることが大切です。
 せっかくお店などの現場でお客さんと店員との間にいいエピソードがあっても、経営者が知らないということはよくあります。こういう場合には、現場のエピソードをみんなで共有できるような仕組みをつくりましょう。
 
 「志」「独自化のポイント」「魅力的なエピソード」これら3つの階層の違うストーリーが「3本の矢」のようにしっかりリンクしていると、ちょっとやそっとでは折れないストーリーが確立されます。お客さん、従業員、地域からも「何を目指す会社で」「どんな特徴があり」「日々どのような活動をしているのか」ということがとてもわかりやすく“見える化”されるのです。
 
 冒頭の小さいけれど、なぜか売れるオフィス用品販売会社に話を戻しましょう。それはカスタネットという会社です。カスタネットは、本業よりも社会貢献活動のほうが有名だという不思議な会社です。その活動報告を「小さな企業のCSR報告書」という形で毎年発表しています。
 このような活動を通じて、「同じオフィス用品を買うなら、カスタネットから買おう」というサポーター的な感情を持つお客さんがたくさんいるのです。このように大勢の人に支持されているのは、カスタネットは、3本の矢がきちんと確立されているからです。
 
 以下に、カスタネットの3本の矢をまとめてみました。ぜひこれを参考に、あなたの会社の「ストーリーブランディングの3本の矢」を確立してください。
 
 【カスタネットの3本の矢】
  志  社会貢献活動と事業がシンクロする企業を目指す
  独自化のポンイント 日本で一番社会貢献に力を入れている小さな会社
  魅力的なエピソード
 
「カンボジアの学校支援」「ソーシャルバスケットキフト」「そなえる.com」「小さな企業のCSR報告書」など
 
 
 次回からは、「物語」と並び、販売のクルマの両輪になる「言葉(ネーミング・キャッチコピー等)」についてお話します。お楽しみに。
 
 
 
編集部より:著者の最新刊 1行バカ売れ』(角川新書)が今月初旬より発売中! ベストセラー『物を売るバカ』の第二弾です。 
 
 
川上徹也の「買いたい」のヒミツ
vol.4 3本の矢を確立する

 著者プロフィール  

川上 徹也 Tetsuya Kawakami

コピーライター/湘南ストーリーブランディング研究所代表

 経 歴  

大阪大学卒業後、大手広告代理店に入社。営業局、クリエイティブ局を経て独立。コピーライター&CMプランナーとして50社近くの企業の広告制作に携わる。東京コピーライターズクラブ(TCC)新人賞、フジサンケイグループ広告大賞制作者賞、広告電通賞、ACC賞など受賞歴は15回以上。ストーリーの持つ力をマーケティングに取り入れた「ストーリー・ブランディング」という言葉を生み出した第一人者としても知られ、現在は広告制作にとどまらず、そのノウハウを個別のアドバイスや講演・執筆などを通じて提供している。著書は『物を売るバカ』(角川新書)、『キャッチコピー力の基本』(日本実業出版社)、『価格、品質、広告で勝負していたら、お金がいくらあっても足りませんよ』(クロスメディア・パブリッシング)など多数。 最新刊『1行バカ売れ』が好評発売中。

 オフィシャルホームページ 

http://kawatetu.info/

 
(2015.8.19)
 
 
 

 

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