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コラム ほめ達!の「未来を拓く言葉たち」第2回 “志”とは不純な動機の結晶化 ほめ達!の「未来を拓く言葉たち」 一般社団法人日本ほめる達人協会 理事長 西村貴好

コラム
皆さんこんにちは。日本ほめる達人協会理事長の西村貴好です。今回も皆さんと一緒に、未来を切り拓いていく言葉を獲得するためのトレーニングをしていきます。連載を通じてぜひ、自分自身の名言づくりに挑戦してみてください。
 
 

“志”と“野望”の違いとは?


階段の最初の一歩を信頼するのだ。
その階段の全てが見えなくてもいい。
まず最初の段を上がることが重要である。 
~マーティン・ルーサー・キング (牧師・公民権運動の指導者)~
 
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公式グッズの扇子。裏で協会の目標でもある、「ほめ達!」が辞書に載った
際のイメージを表現
突然ですが、“志”と“野望”の違いについて考えたことはありますか? 実はこの2つには明確な違いがあります。まず“野望”は、自分の命、寿命の中でどこまで成功できるか、登り詰められるかに挑戦――というニュアンス。いっぽうの“志”は自分一代の人生ではとても叶えられないほどの壮大な望みを実現させるための願い、祈りのようなもの。
 
「ほめ達!」には“志”があります。それは年間2万人を超える自殺者がいる日本の「心の内戦」状態を終焉させる――というものです。これは、人々の心のありようを変えていく試みにもなりますから、私の代のみではなく当協会が何十年、何百年と続く中で実現されるものだと考えています。
 
こう考えると“野望”より、世代を超えて継続していくべき“志”のほうが、いい言葉だと思いますよね? しかし私は、“野望”を持つことを否定しません。むしろ、大事なことだと言いたいのです。
 
 

“野望”は“志”の礎になる

 
“野望”を“欲望”と言い換えてもいいでしょう。この欲望、欲が大切なのです。私が「ほめ達!」の活動をこれまで続けられてきたのは、「他人から良い人だと思われたい」という強い欲があるからです。自分本位のちっぽけな欲ですね(笑)。
 
でも、この小さくとも強い欲望があったから活動を続けられたのです。そして満たしたい欲望を、自分の中だけに収まらないほどに育てていきました。つまり、自分の欲を満たすためにしていたことが、周囲からの支援を得られる、他人の欲を巻き込むほどの大きさに広がっていったということです。
 
小欲を中欲に、中欲を大欲に。そしてさらに大欲を育てると、やがて無欲に見える。自分の欲から出ている行動なのに、他人からは無欲でやっているように見えてくる。なぜなら、大きく大きく育て切った欲望はすでに、個人の一生だけでは成し遂げられないほどの、“志”になっているからです。
 
 

最初の動機は不純でかまわない

 
最初の動機づけ・モチベーションは、不純でいいんです。不純なほど、実は純粋。自分の中の根本的な欲望ですから、エネルギーが強く、持続力があります。ときに自分や周囲を火傷させてしまうような、火山のマグマのようなエネルギーです。
 
人生で成功を目指す姿を、宇宙に向かうロケットに例えると、成功するとは大気圏を突破すること。そして重力に逆らい大気圏を突破するには、火傷するぐらいの熱量、エネルギーが必要なのです。
 
ところが、大気圏を突破――ある程度自分が望んでいた欲望が満たされると、このロケットはどうなるでしょうか。そう、燃料が尽きてきます。お金持ちになれて物欲を満たせた――というように、当初の目的を達成してしまうからです。では、このロケットが大気圏を抜けたあと宇宙に出て、さらに進み続けるためにはどうすればいいのか。
 
ここで、別の燃料が必要になります。それは何か――“感謝”です。“感謝”は最初のエネルギー、マグマから少し離れて湧き出ている温泉のようなもの。コンコンと湧き続け、自分と周りを癒します。この温泉のような“感謝”を発掘し、価値を見出せるようになったときが、“野望”が“志”に変わる瞬間です。自分のモチベーションが“欲望”ではなく“感謝”になる。私はこれを、「モチベーションの2段階ロケット」と呼んでいます。
 
人を幸せにする人が、最も幸せになる」これが私の信条です。自分の中の欲を燃やし切ったとき、この言葉と出会いました。皆さんも自分の“野望”“欲望”を“志”“信条”にまで高めるよう、さらに欲を燃やし、結晶化してください。
 
 

特・得・徳・篤――“とく”の四段活用

 
才能とは、自分自身を、自分の力を信じることである。  ~マクシム・ゴーリキー (ロシアの作家)~
 
最後に、“とく”の四段活用をご紹介しましょう。
 
損得の“得”より、人徳の“徳”が大事である――とは、よく言われる言葉です。
 
ところが私は人間の、“とく”にはさらに上下に二段階があって、全部で四段階、そして、それはピラミッド状に構成されていると考えています。一番下段にあるのが、特別の“特”。続いて損得の“得”で、その上が人徳の“徳”。最上段が、篤志家の“篤”です。
 
例えば、Aさんにはおいしいラーメンをつくれる“特”別な能力があります。だから、ラーメン店の経営者になりました。でも、店舗運営を成り立たせるには、損“得”勘定ができなければいけません。Aさんにはその能力もある。となると、ここまででもお店は充分に運営していけますよね。でも、さらに店舗数を増やすにはどうすればいいでしょう? 
 
そこで必要になるのが、人“徳”です。これがないと、周囲の人からの支援が得られません。Aさんには人徳も備わっていたので、多店舗展開も成功を収めます。すごいですね。
 
ではその先はどうするのか。Aさんは社会奉仕・慈善事業などを熱心に行うようになります。つまり、世のため人のために尽くす、“篤”志家になるのです。これが“とく”の四段活用です。今回の話を読み進められた皆さんには、よく理解できる内容だと思います。
 
ちなみに私は、商売人の三代目としてこの世に生を受けました。今考えると、祖父は貧困の中に育ち、苦労を重ね、人徳ももちろんありましたが、損得勘定が染みついた人でした。父親は、典型的な二代目タイプ。商売人というよりは、哲学者タイプ、人徳がある人でした。どちらも尊敬しています。
 
では私はどうかと言うと、あほなボンボン、あほボンでした(笑)。一応、先代たちの血を引いてはいましたので、“得”と“徳”は意識していました。しかし、一番土台になる特技、“特”が必要という意識がありませんでした。
 
今は「ほめ達!」という“特”=“生きていく術”ができたおかげで、心から安心して活動できています。普通はピラミッドの下から上がっていくものですが、私はそうではなかった。これはもしかすると、二代目以降の経営者の特長なのかもしれないですね。いずれは“篤”まで達することを目指して、これからも精進を続けます。それでは、また次回、お会いしましょう!
 
ほめ達!の「未来を拓く言葉たち」
第2回“志”とは不純な動機の結晶化
 
(2017.5.19)

 著者プロフィール  

西村 貴好 Nishimura Takayoshi

一般社団法人日本ほめる達人協会 理事長

 経 歴  

1968年生まれ。大阪府出身の「泣く子もほめる!」ほめる達人。ホテルを経営する家の三代目として生まれ、経営術を学びつつ育つ。関西大学法学部卒業後、大手不動産に入社して最年少トップセールスを樹立。その後、家業のホテルを継いで経験を積み、2005年に覆面調査会社「C’s」を創業する。短所ではなく長所を指摘することが調査対象の企業成長に効果があると発見し、「ほめる」ことの重要性に気付く。数々の実績を上げる中で、2010年2月に「ほめ達!」検定を実施する、一般社団法人日本ほめる達人協会を設立し、理事長に就任。以降、検定を通じて「ほめ達!」の伝播に尽力している。著書に『繁盛店の「ほめる」仕組み』(同文舘出版)、『ほめる生き方』(マガジンハウス)、『心をひらく「ほめグセ」の魔法』(経済界)、『泣く子もほめる!「ほめ達」の魔法』(経済界)、『人に好かれる話し方41』(三笠書房)などがある。

 日本ほめる達人協会オフィシャルサイト 

http://www.hometatsu.jp

 西村貴好オフィシャルブログ 

http://ameblo.jp/nishitaka217/

 フェイスブック 

https://www.facebook.com/hometatsu

 
 
 
 

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