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第3回 オーストラリアでニーズのある業種・サービス 前編

 
 
 オーストラリアは国家プロジェクト規模の膨大な投資がないと対処できない資源産業を除き、大企業が十分な利益を上げられるほど、大きな市場ではありません。企業と企業の間には、手つかずのビジネスチャンスがありますが、毛ほどの隙間にねじ込むようにしてビジネスを模索する日本と比べ、オーストラリアはこの隙間が日本では考えられないくらい広く、また容易に見つけられ、我々中小企業が勝負する環境としては最適と言えます。ただビジネスチャンスの幅が広いからと言って、やみくもにやっても上手くいくとは限りません。
 
 そこで今回のテーマです。では、どのような業種やサービスがオーストラリアのニーズに合っているのでしょうか?
 
 

活気付く外食産業

 
 オーストラリアで近年飛躍的にシェアを伸ばしている産業は、ずばり外食産業です。資源産業と並び、右肩上がりの発展を遂げています。以前に私が市場調査を行なった結果、オーストラリアの外食産業の総売り上げは全世界で8位にランクイン。これはたかが人口2000万人程度の国にとっては、快挙以外の何物でもなく、更に総売り上げを対人口比率に換算すると、並み居る大国を抑えて堂々の3位に躍り出ます。
 なぜ人口が少ないオーストラリアに外食産業が伸びる土壌があるのか。それは彼らの食への考え方が影響しています。英国連邦の一員であるオーストラリアは、政治、経済、教育、文化など、全てにおいてイギリスに酷似しています。知っての通りイギリスの食事のまずさは、世界に誇れる(!?)ほどなので、その流れを汲んでいるオーストラリアも推して知るべしです。小学生や、中学生の学校に持ってくるお弁当(オーストラリアには給食はありません)を見れば・・・かわいそうです。彼らのお弁当は、バターにジャムを塗ったシンプルなサンドイッチがど~ん。それにバナナか、リンゴ、もしくは生の人参がついているくらい。飲み物は決まって炭酸飲料や甘いパックジュース。栄養のバランスも悪くて、太るわけです。また一番の問題点は、オーストラリア人の女性が、ろくな料理を作らない点にあります。(みんながみんなと言うわけじゃないですよ。念のため)
 
 それを裏付けるエピソードでこんな話があります。ある時、知人が(日本人のお母さんです)お子さんのためにお弁当を作ってあげました。卵焼きや、のり、ウインナー等が入っているだけではなく、日本人の器用さ、繊細さを活かしたアニメのキャラクター弁当を作ってあげたところ、教室の子供たちに大人気。それを見た他の子たちは、うらやましくなり、自分のお母さんにねだりました。日本人のお母さん方であれば、子供にねだられれば、見よう見まねで作ろうと努力しますが、オーストラリア人のお母さん方には、お弁当に時間や手間を掛ける必要性は理解されず、逆に日本人のお母さんに、お金を払うから自分たちの子供のぶんも作ってくれないかと頼み込まれてしまいました。
 
 ちなみに、日本人に 「おふくろの味は何」 と質問をすれば、人によって千差万別。バラエティーに富む回答を聞くことができますが、こっちでその質問をすると、フィッシュ・アンド・チップス系の、誰でも手軽に作れるファーストフードの答えが返ってきます。これは冗談のような本当の話です。最近は肥満増加が健康を害するので、遅まきながら政府が学校にファーストフード系の食事は減らすように指示が出ているくらいです。
 
 

恐るべし、オリンピック効果

 
 以前のオーストラリアは食に関しては全く無頓着でしたが、シドニーオリンピックが開催された辺りから、好景気に支えられ、国民の収入も増加し生活にゆとりが出てきたおかげで、それまで無関心だった食への興味も持ち始めました。また好景気に伴い、国内の技能者不足を補うために、積極的な移民政策を推進し、その移民者が世界各国のバラエティーに富んだ食文化を持ち込んだのも、オーストラリア人に食への興味を促した理由の一つと言えます。しかし相変わらず、食事を作る努力は面倒 (作れない!?) と考え、収入はあるから外食に行く。オーストラリアの外食産業は、この世界同時不況にも関わらず、絶好調です。
 
 海外で日本人がやれる外食事業となると、まず頭に浮かぶのが日本食レストランだと思います。日本人だから日本食レストランでは少々芸がない感じがしますが、今オーストラリアは和食ブームです。やっと 「肥満は体に良くない」 と遅まきながらオーストラリア人も気付いてきました。また、移住してきた富裕な中国人が日本食を好み、彼らの需要が和食ブームを押し上げていると言っても、過言じゃありません。過去の10年で国民一人当たりの米消費量が倍以上になった先進国は、オーストラリアくらいです。日本食レストランを出せば全員成功するかと言われれば否ですが、資本も少額で、もし万が一思うような結果が出なかったとしても、ダメージが少なくて済みます。もっとも、現在は雨後の竹の子のように日本食レストランが乱立しているので、一工夫するのが成功の鍵だと言えます。
 
 

隣接産業の可能性を探る

 
 やはり日本食レストランでは面白味がない。ありきたりの考えだ。おっしゃる通りです。そんな方々には別の食ビジネスをご紹介します。すでに和食ブームと述べていますが、シドニーに限らず、オーストラリア各都市には、“なんちゃって日本食” を含めれば、石を投げれば当たるくらいの日本食レストランが存在します。さらに近年では、洋食のレストランでも、和の食材を加えることがブームになっています。当然食材は日本食を取り扱う業者から購入しますが、この業者の数が非常に限られており、市場はほぼ数社で独占されています。購入する側は選択の余地がないので、毎回変わり映えしない高価な食材を、卸業者の言い値で、買わざるを得ない状況です。食材卸業は、投資金額は飲食店に比べれば多いと言えますが、背景には和食ブームと、右肩上がりの成長を続ける外食産業の確実な様相が控えており、この独占市場に風穴を開けるのも、ビジネスとしては面白いかもしれません。
 
 食材は、日本からの輸入ばかりに目を向けずに、レストランや家庭でも必要な冷凍食品や製麺などは現地でまかなう方法もあります。郵送費や保険代、それに通関(オーストラリアの通関は世界で一番厳しい)で止められてしまうリスクなども削除でき、賞味期限などが切れていない、新鮮な食材は安価で、安定供給できる魅力を備えていると言えます。実際、とある食材を現地生産している企業は、従業員10人程度の企業ですが、純利益は大企業に負けないくらいの利益を上げているケースもあります。
 
 残念なことに、日本を襲った未曾有の震災の影響で、現時点での話をすれば、放射能問題が海外でも大々的に取り上げられ、一時期大ブームになった 「美味しくて、ヘルシーな日本食」 も、日本からの食物は放射能汚染されていないかと神経質になっています。ただ人の噂も75日と言うように、暫く経てば、この問題も沈静化すると私は睨んでいます。
 
 
 
引き続き次回も、オーストラリアでニーズがある業種、サービスについて説明していきます。
 
 
 
 
  南半球でビジネスを考える ~オーストラリア在住・日本人経営コンサルタント奮闘記~
第3回 オーストラリアでニーズのある業種・サービス 前編

 執筆者プロフィール 

永井政光 Masamitsu Nagai

NM AUSTRALIA PTY TLD代表 / 経営コンサルタント

 経 歴 

高校卒業と同時に渡米、その後オランダに滞在し、現在はオーストラリア在住。永住権を取得し、2002年にNM AUSTRALIA PTY TLDとして独立。海外進出企業への支援、経営及び人材コンサルティングを中心に活動中。定期的に日本にも訪れ、各地で中小企業向けの海外進出セミナーなどを行っている。

 オフィシャルホームページ 

http://www.nmaust.com/

 ブログ 

http://ameblo.jp/nm-australia/

 
 
 
 

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