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イノベーションは、一人の単純な「気づき」から生まれる。<5の4>

 
 私は、時に、経営者やマーケターを集めた経営塾で講義を依頼されるが、その塾の質問に驚きを禁じえないことがある。私のロジックは、「少子高齢化を迎えると、その社会は高度な文化社会となり、芸術やスポーツが盛んになる。言い替えれば、モノを消費する経済からモノを継続して使う循環経済に入る。それに対応できる商品・サービスの開発をして、その準備を今から整備しなければなりませんネ」という、実に簡単なロジックである。私はそれを、自分の会社を引用して話す。
 ところが、である。『あなたの会社の商品・サービスは高額だ。私は、その商品・サービスを良いと思うが、私の収入では無理だ。その場合は、どうすれば良いのか』――質問の筋が通っているようだが、まったく質問になっていない。
 なぜなら、商品が必要であれば高くても手に入れるであろうし、必要でなければ手に入れようとはしないだろう。そんな中で消費者のニーズの多様化にどう合わせるか、商品の多様な価値をどのように創出するか。これが、次世代のマーケティングの根本思想でなければならない。いわゆる芸術・文化の価値を商品やサービスに折り込むことが差別化で、コモディティ化を防ぎ、低価格競争に陥らないための方策を練るべきなのである。つまり、いかに商品の優位性を形成するかが肝心なのだ。
 すべての消費者に合わせるというマスの考え方は勘違いであり間違いである。つまり、価値の多様化の方策を見つけることが大事である。それを見つけるために講義を聞きに来ているのに上記の質問が出るとなると、議論の噛み合うところはなくなる。
 日本には、たとえば地球環境保全とか、資源保護とか、Co2の排出を抑制する技術もある。水資源をめぐる環境型商品・サービスの開発もできそうだ。しかし、中小企業が手を出せそうな環境型の革新的技術を創出するのは容易ではない。経済的な資金力の問題もついて回る。
 
 とは言え、生き残りをかけなければならないのは言うまでもない。
 根性論では到底およびもつかないが、得意分野の技術の転用による商品開発・サービス開発で乗り切ることは可能ではないだろうか。しかしながら、そこに来ている多くの塾生は「何を作れば売れるか、ヒット商品の作り方は」という安直論が先行して、苦労して己のノウハウを溜めようとするマーケターが少ないのが残念なことである。
 根性論で言えば、竹ヤリでB29(若い人には死語であるかも?)は落とせないが、そういうバカと呼ばれるような気概がなければ、中小企業が生き残れない時代になっている。
 
 気概があって、次に、合理的方法・原理論がくる。このことへの認識が、中小企業において、経営責任のある人間、つまりトップに強く求められている。
 
 
 
 
 
 

 執筆者プロフィール 

橋本 英夫 Hashimoto Hideo

株式会社 ハッピー 代表取締役

 経 歴 

1949年、兵庫県生まれ。高校卒業後、大型プラントで使用するバルブや弁のメーカーに技術者として就職。蒸気の流体制御機器の設計に携わる。75年にECCハシモトを設立、浄水再生装置の製造を始める。79年石油系溶剤浄油再生装置を開発し、(株)京都産業を設立。「ハッピークリーニング」の名称でクリーニング店の経営にも乗り出す。その後、2002年に(株)ハッピーを設立し、従来のクリーニングの常識を覆す『ケア・メンテ』という新業態を創造して普及に尽力している。2005年、一般消費者に対する啓蒙活動団体としてNPO法人日本洗濯ソムリエ協会を設立。2006年に、従来の洗浄理論を覆す世界初の「無重力バランス洗浄方法」を発明し、方法論特許・装置特許を取得。シルエットや風合いを保ったままの「水洗い」を実現し、地球環境に優しく人体に悪影響を及ぼさない画期的な洗浄方法として、世界からも注目を集めている。

 オフィシャルホームページ 

http://www.kyoto-happy.co.jp/

 

 

 

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