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東京オリンピックの開催を間近に控え、希望に満ちた幕開けとなった令和の時代。しかし、初年度から波乱が続いている。昨年2019年は大型台風の被害が相次ぎ、今年2020年に入ってからは新型コロナウイルスによる世界規模のパンデミックに襲われている。
 
毎年のように何かしらの災害に見舞われる“災害大国”の日本において、危機管理(クライシスマネジメント)は最重要事項の一つだ。しかし、これまで何度も災害に見舞われ、その都度対策を講じていても、行政の対応の遅れなど、残念ながら過去の教訓がしっかりと活かされているようには見えないと感じる。
 
今月4月7日には、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言も発令された。国民の生活は大きく制限され、経済活動もままならなくなり、企業の存続も危ぶまれる。このような、大きな災害や不測の事態に見舞われた時、企業としてはどのように対応していけば良いのか。
 
本連載では、そのような事態に対して企業が損害を抑え、事業の継続や復旧を図るための計画であるBCP(事業継続計画)に関する取り組みや、防災・危機管理の最前線に立つ企業や事業体の取り組みを紹介するとともに、危機を乗り越えるためのヒントを探る。
 
 

デマを未然に防ぎ、適切に対処するために

 
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スペクティ・危機管理情報監視センター(外部リンク:スペクティ公式サイト)
非常事態が発生した際にまず重要になるのは、冷静な初動対応である。この時の判断が、後の活動にも大きな影響をおよぼすことは、日本はもちろん、この度のコロナ禍の発端となった中国や、多数の感染者を生んでしまったイタリア、アメリカなど、各国の対応を見ても自明と言えよう。
 
近年は通信技術の進歩やSNSの普及により、さまざまな情報が迅速に収集できるようになった。一方で、誰もが簡単に情報を発信できるようにもなったことから、デマやフェイクニュースによる混乱も起きている。つい最近も、マスクや消毒液などが品薄になるだけでなく、直接的には関連のないトイレットペーパーの買い占め騒動なども発生した。インターネットがまだなかった時代である、1973年の石油危機と同じような現象が起きていることは、一般社会における危機管理意識の低さを浮き彫りにした、何とも皮肉な事例であろう。
 
こうしたフェイクニュースやデマに踊らされず、初動対応の遅れやミスをなくし、その後の対応の指針を決めるためにも、正確な情報の収集と分析は欠かせない。これは、行政や政府機関だけでなく、一般企業も同様である。そのような状況で、大きな注目を集めているのが、株式会社Spectee(スペクティ)が運営する防災・危機管理情報解析サービス「スペクティ」だ。これはAIによってSNSに投稿された情報を収集・分析したり、道路や河川に設置されたカメラの画像解析、音声解析、気象データの解析技術などを駆使したりして、事件・事故や災害などに関する正確な情報を利用者に提供している。
 
スペクティが効果をいかんなく発揮した主な例としては、2018年の台風21号で、山間部の主要道路が土砂崩れにより寸断された愛知県豊田市のケースがある。この事例では消防や道路管理部門が得た情報よりも早く、スペクティが情報を収集したことにより、自治体の迅速な対応に役立てられたという。
 
また、同年9月に起きた北海道胆振東部地震でのケースも注目に値する。この地震に際してSNSを通じて広がりかけたデマに対し、過去のデマ情報のデータベースをもとに真偽確認や情報の整理を行ったり、公的データとの照らし合わせや行政・自治体への問い合わせ、投稿者へのヒアリングなどを行った。その結果、大手メディアがデマを報道する前に未然に防いだという実績をあげている。
 
 

現在の困難が去れば終わりではない

 
Spectee社は防災・危機管理の分野での技術開発やイノベーションを目指しており、自然災害や感染症、金融危機など、人々の社会活動に対してネガティブなインパクトを与えるものを「危機」と定義し、それらをテクノロジーで解決すべく、研究開発を行っているという。
 
また、同社によれば、今年度より商用サービスが開始された5Gの技術やそれに伴うIoTを活用することで、よりリアルタイムの被害状況を把握でき、また数時間後などの直前の被害予測も可能であるとしている。さらに地図などでわかりやすく表示・可視化することや、被害予測などの技術の開発を進めることで、ゆくゆくは災害による被害を未然に防ぐことも不可能ではないと語る。
 
このサービスの主な利用者は行政機関や国内の報道機関のほか、海外の通信社なども名を連ねる。ただ、このような情報は何も報道機関などだけでなく、一般企業も大いに活用できるはずだ。例えば、台風や地震などで通勤が困難な状況である場合には、従業員が帰宅難民化してしまうことを防ぐため、いち早くリモートワークに切り替えさせるなど、迅速な対処に役立てられるだろう。
 
近いうちに起こるとされている南海トラフ地震への懸念もある。また、この度のコロナ禍が終息した後も、いずれまた別の感染症が流行し出すこともあるだろう。そんな時、いつ、どこで、何が起きているのか、情報をしっかりと把握し的確に対応することは、従業員の身の安全、ひいては企業活動の存続につながるのである。
 
最近は暗い話題ばかりが目立ち、誰しもが苦しみを感じている時期ではある。しかし、現在の困難が去れば終わりというわけではないのだ。さまざまな活動の自粛を求められている中、ただ何もせず事態が終息するのを待つというだけでは、建設的ではない。こんな時だからこそ、前向きに考えることが必要であろう。
 
今年2020年は阪神・淡路大震災から25年、来年は東日本大震災からちょうど10年になる。そのような節目に当たる今、そして現実に非常事態が起きている今だからこそ、危機管理の意識を高め、次に来るべき事態に備える。その絶好の機会として、今を活かすべきではないだろうか。
 
■株式会社Spectee
https://spectee.co.jp
 
防災・危機管理のビジネス最前線
vol.1 適切な初動対応に必要なもの
 (2020.04.22)

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