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取引先にあげたカレンダーの、哀愁溢れる生涯

 
 
 年末年始の挨拶とともに、取引先からもらう粗品。最近は挨拶も簡素化し、挨拶状のみで粗品を送らない企業も増えているらしいのだが、それでもやはり貰う機会が多いもののひとつに、カレンダーがある。10月も末になり、そろそろ取引先に贈るカレンダーの発注を考えている企業も多いだろう。
 
 だがカレンダーは、たくさん使うものでもない。たいがい余る。それも多くの会社では、尋常じゃないくらいに余るらしい。
 
 今回は、取引先にあげるカレンダーの哀愁あふれる生涯についてのレポートである。
 
 
 

1.競争にまみれた生涯

 
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 御社の取引先は、毎年、いくつくらいのカレンダーをもらい、そして、そのうちのいくつを事務所に貼っているのだろうか? 複数の企業に電話インタビューを行って、調べてみた。
 
 ある大手印刷機メーカーの場合、「社内全体ではわかりませんが、私の広報部では、毎年10~20程度のカレンダーをもらいます。そのうち、事務所内に貼るのは、1、2個程度ですね」 とのこと。他、大手医療機器メーカー、特許事務所などにも問い合わせてみたが、似たようなケースが多かった。
 
 この調査にもとづくと、取引先のカレンダーを事務所に貼ってもらうための競争率はおよそ10倍程度。全体として、ちょっとした難関大学への入試以上の厳しい競争環境にさらされているものと思われる。
 
 

2.栄光の先にあるもの

 
 競争に勝ち抜き、見事事務所に貼ってもらえることになったカレンダーは、具体的に、事務所のどのあたりに貼ってもらえるのだろうか? 同様にインタビューを行ってみたところ、「カレンダーを貼るのに便利で、誰にでも見える場所ならどこでもいい」 というのが、大方の回答であった。
 
 大手医療機器メーカーBの広報担当者いわく、「最近は、携帯やパソコンで常にカレンダーを見ることができるので、事務所内のカレンダーを見る機会は少ないです」。正直、なくても困らないけど、なんとなくあったほうが事務所らしいので貼っているだけのようなのである。
 
 

3.「すごカレ」 に学ぶ取引先カレンダー復活への道

 
 厳しい競争と、その先にある 「別にそんなに必要とされていない」 感。取引先にあげたカレンダーに待ち受けるのは、Vシネマ主人公に勝るとも劣らない、哀愁漂う人生であった。
 
 しかし、ちょっと待ってほしい。小さい頃、小学校の授業の一環で見学に行った父親の職場で見たカレンダーには、社内のスケジュールがびっしりと書き込まれ、カレンダーを囲んで社員さんが熱心に議論を交わしていた。これこそが、取引先にあげたカレンダーのあるべき姿であるはずだ。
 
 彼らが昔の輝きを取り戻し、「すごいカレンダー」 略して 「すごカレ」 になるためには、どうしたらよいのだろうか? そのヒントが、社団法人日本印刷産業連合会が開催する 「全国カレンダー展」 にある。
 
 この展覧会では、毎年、企業が制作するカレンダーの中で優れたものを表彰している。たとえば、NTTドコモは、2009年から2年連続受賞の、企業カレンダー界の古豪であるが、2012年のカレンダーは、AR (拡張現実) 技術を駆使し、「スマートフォン越しにカレンダーを見ると、カレンダーに載っていない様々な情報が見える」 という、意欲的な取り組みを行っている。こんな風に、先端技術を組み合わせることが、「すごカレ」 への一つの道である。
 
 もう一つ。この展覧会の13の賞のうち、最高賞にあたる内閣総理大臣賞の審査基準は、「全作品のうち、記念展を代表する最高の出来栄えで、デザイン、印刷技術とも総合的に優れているもの」 となっている。それに次ぐ経済産業大臣賞の審査基準は、「総合的に優秀な作品で、とくにデザイン、印刷技術に優れているもの」 であり、その次点である経済産業省商務情報政策局長賞では、「大臣賞に次ぐ作品で、総合的に優れているもの」 となっている。これら審査基準を眺めて思うのは、すごカレにとって 「総合的に優れている」 ということがいかに重要かということだ。
 
 つまり、ナイスなカレンダーは、とにかく、総合的に優れていることが必要なので、カレンダー制作にあたっては、全社の力を総合的に結集し、総合的なメンバーで、総合的な視点で、総合的に制作を進めるべきである。
 
 ちなみに、「総合的に優れているということが、いったいどういう意味なのか」 については、社内で総合的に検討、および判断していただきたい。
 
 
 これらの知見を参考に、御社が取引先にあげるカレンダーには、ぜひ、幸せな生涯を送ってもらいたいものである。
 
 
(ライター 林きのこ)
 
 

取引先にあげたカレンダーの、哀愁あふれる生涯 ~この冬、御社ならどうしますか~

 
 
 
 
 

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