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ノウハウ 経営者のための法人保険講座 vol.6 生命保険を活用した節税対策と退職金積立 経営者のための法人保険講座 Ever Side 八木照浩保険代理店FP事務所 代表

ノウハウ
こんにちは。保険代理店FP事務所を営むEver Side代表の八木照浩と申します。保険でお困りの方のためになる情報を、連載を通じてご紹介するこのコラム。今回は、生命保険を活用した節税対策と退職金積立についてのお話をいたします。
 
 

生命保険を活用した生前退職金積立


 
利益が出ている中小企業は、決算の時期に何らかの節税対策を考えると思います。そこで最も多く使われるのが生命保険を使った節税でしょう。生命保険が使われる理由は明白で、将来その保険を解約した場合に解約返戻金として資金が戻ってくるためです。今は業績が良くても数年後の将来が不透明な会社にとっては、この解約返戻金が大きな力となります。そして、自らのご勇退時の退職金にもこの生命保険が使われます。今回はこの生命保険を用いた退職金積立がどれほど有効なのか、解説していきたいと思います。
 
 

生命保険は解約のタイミングが重要!


 
前述したように、節税のために生命保険に加入するところまでは良いでしょう。しかし加入をする際は、将来的に解約返戻金を受け取る場合の経理処理に関しても検討する必要があります。解約返戻金の経理処理は保険の種類により異なるので、下記の3パターンで比較してみましょう。
 
※ 他にも保険料の1/3、1/4を損金にできる保険などがありますが、あまり使われることがないため省略します
 
いずれも年間保険料が100万円の保険を年払いしたものとします。毎年支払い続け、解約返戻金が1500万円となった20年後に解約をしたとします。
 
①保険料の全てを損金にできる保険
・保険料支払時の経理処理⇒生命保険料100万円を損金計上
・解約時の経理処理⇒1500万円を雑収入として益金計上
 
②保険料の半分を損金にできる保険
・保険料支払時の経理処理⇒生命保険料50万円を損金計上、前払保険料50万円を資産計上
・解約時の経理処理⇒500万円を雑収入として益金計上(解約返戻金1500万円のうち1000万円は前払保険料として資産に計上しているため)
 
③保険料が全く損金にならない保険
・保険料支払時の経理処理⇒保険金積立金として100万円を資産計上
・解約時の経理処理⇒500万円を雑損失として損金計上
※勘定科目はあくまで一例で、保険の種類によって異なります
 
節税を考慮して使われる保険は①または②となります。しかし、上記の通り解約返戻金が収入となり益金計上されてしまうため、タイミングを間違えれば保険料支払い時には節税をしていても、解約したときの返戻金に法人税が課せられてしまい、節税効果が薄れてしまいます。特に①の場合、保険料が全額損金なので節税効果は高いですが、戻ってくるときも全額収入のため諸刃の剣です。長年利益を出し続ける見込みのある会社などは解約をする時期が難しいので、加入時は慎重に検討したほうが良いでしょう。
 
 

生前退職金を損金計上するには


 
さて、この保険を解約する有効なタイミングとして挙げられるのが、今回のテーマである生前退職金を受け取るときです! 会社が個人に退職金として支給する場合、過大な金額でなければそれは損金と認められます。つまり、解約返戻金を受け取ってそれが益金となったとしても、退職金を支給して損金計上することで利益を相殺することができるのです。では、この退職金が過大かどうかはどう判断すれば良いのでしょう。主に用いられるのは、下記の式の功績倍率を用いる方法です。
 
《最終報酬月額×勤続年数×功績倍率》
※ 功績倍率は業種によって異なるなど、規程があるわけではありません。今回は3倍で計算しています。
 
例えば30年勤続していて、役員報酬が月100万円の代表者であれば、【100万円×30年×3倍=9000万円】となり、約9000万円以内の退職金であれば、過大と認められない可能性が高いということを意味しています。実際にいくら退職金を出すかは、それぞれの会社によって異なると思います。しかし、9000万円の益金を、退職金を出すことで相殺する手段があることは覚えておいて損はないでしょう。
 
 
今回は会社視点の話でしたが、個人でも退職金で受け取る所得については税金が優遇されています。続きは次回コラムをご覧ください。
 
経営者のための法人保険講座
vol.6 生命保険を活用した節税対策と退職金積立
 
(2018.7.25)

 著者プロフィール  

八木 照浩 Yagi Akihiro

Ever Side 八木照浩保険代理店FP事務所 代表

 経 歴  

慶應義塾大学経済学部で国際金融論を専攻。卒業後は国内の生命保険会社で企業保険や個人保険の営業、法人リスクコンサルティングを行う。総合保険代理店に転職し、複数の生命保険会社の商品を手掛け、ノウハウを蓄積する。その後、培った知識と経験を活かすため独立を決意。生命保険に特化した総合保険代理店FP事務所Ever Sideを開業した。日本FP協会東京支部会員。保有資格は1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®(日本FP協会)、トータル・ライフ・コンサルタント(生保協会認定FP)、相続アドバイザー、コンプライアンス・オフィサー。

 オフィシャルサイト 

http://www.everside.life/

 
 
 
 

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