B+ 仕事を楽しむためのWebマガジン

トピックスTOPICS

 
 
「国内ビジネスを展開していくうえで、どのような課題があり、どう解決すべきかが判然としない」。そんな声にお応えして、海外で豊富な経験を積み、国内での起業にも精通する株式会社サザンクロスの小田切武弘代表取締役社長が、企業の経営基盤や人事諸制度の構築・再構築にフォーカスしたノウハウを解説。第3回は、人事関連規程を作成するために考慮するべきポイントをまとめていきます。
 
皆様、こんにちは。株式会社サザンクロスの小田切武弘です。本誌では、2020年9月号から、海外でビジネスを進める際の現地ローカルスタッフへの接し方や仕事の依頼の仕方、スムーズなコミュニケーションの取り方などに焦点を当てたコラムを連載し、2024年5月号からは海外主要国における代表的なビジネス習慣・商習慣について執筆してまいりました。
 
そして2026年5月号からは、創業して間もない企業様を主な対象に、「経営基盤や人事諸制度の構築・再構築」をテーマとしたコラムを執筆しております。前号では、経営の4大要素の一つである「人」に焦点を当て、筆者の私見も交えながら概要をご紹介しました。今回は、人事に関する諸規程について、さらに掘り下げて解説していきたいと思います。
 

はじめに

 
人事関連諸規程と聞いて、皆様はどのようなものを思い浮かべるでしょうか。筆者がこれまで数多くの企業の規程を拝見してきた中では、「従業員就業規程」「賃金・評価規程」「国内出張規程」「海外出張規程」「海外駐在員規程」「国内転勤規程」「従業員福利厚生規程」「役員規程」「契約社員・アルバイト勤務規程」など、さまざまな規程がありました。これらの内容を一つにまとめている企業もあれば、それぞれを独立させ文書化している企業もあり、その構成は企業ごとに異なります。
 

①規程上の基本概念

 
従業員・契約社員・アルバイト一人ひとりを信頼し、リスペクトする姿勢が、規程を作成するうえでの根幹となります(※以後、契約社員とアルバイトは「スタッフ」と表記します)。規程の内容を読み込めば、企業経営者や規程を策定した部署が、従業員やスタッフをどのように捉え、どのような姿勢で向き合おうとしているのかが見えてきます。従業員やスタッフは、定められた規程を十分に理解したうえで、各々の持ち場において最大限のパフォーマンスを発揮することが求められます。企業と従業員・スタッフが互いをリスペクトし合う関係を築くことが大切です。
 

②従業員・スタッフの公平感

 
glay-s1top.jpg
次に重要なのは、従業員やスタッフの処遇が、「公平感」「納得感」「透明性」のあるものとなっているか、という点です。
 
例えば、国内転勤規程を考えてみましょう。東京都郊外に住む4人家族の従業員が、東京本社から福岡支店へ転勤するケースです。家族全員で転勤先へ移るのか、それとも単身赴任を選択するのかによって、適用される処遇は異なります。
 
次に、同期入社で家族構成や年収も同じ2人の従業員を例に考えてみましょう。1人は札幌営業所へ、もう1人は沖縄営業所へ、それぞれ家族全員で同時期に転勤したとします。転勤先の地域が大きく異なる以上、両者に対して規程をどのように適用すべきでしょうか。地域ごとの生活環境などを踏まえた対応が求められます。
 
さらに、上記の2人の例について深堀していきます。札幌と沖縄での勤務を経て、今度は2人とも同時期に大阪支店へ転勤することになったとします。1人は父方の実家で両親と同居しており、自宅にかかる住宅費は発生していません。一方、もう1人は町田市で数年前に住宅ローンを組み、自宅を購入しています。大阪支店への転勤に伴い、2人とも支店近くの賃貸住宅に住むことになった場合、住宅手当や家賃補助をどのように設定すべきでしょうか。個々の事情をどこまで考慮するかによって、従業員が抱く「公平感」や「納得感」は大きく変わってきます。
 
皆様であれば、どのように対応することが最適だとお考えになりますか。
 

③福利厚生規程について

 
次は、別の視点から福利厚生について考えてみましょう。例えば、同じ職場で働く女性従業員と女性スタッフが、同じ時期に出産を迎えたとします。そのような場合、会社としては福利厚生規程に基づき、どのような対応を行うべきでしょうか。両者に同じ処遇を適用するのか、それとも何らかの差異を設けるのか。制度を設計するうえでは、多くの悩みや検討事項が生じることでしょう。
 

④個人情報の透明性の是非

 
glay-s1top.jpg
とある東京都内の中小企業において、国内出張規程全般の見直しに関するコンサルティングを行った際の事例をご紹介します。その企業では役員を除く全従業員とスタッフの出張に関する情報(報告書と出張精算書)を、誰でも閲覧できるようになっていました。加えて、その企業では一部の若手社員に比べ、高位管理職には、近隣・遠方を問わず高額な出張手当や宿泊手当が支給されており、今回のコンサルティングにおいて検討事項の一つになっていました。もちろん、情報の共有はコミュニケーションの円滑化を図るうえで必要ではあるでしょう。皆様はこのようなシステムをどのようにお考えになりますか。
 

⑤評価規程による賃金の差異

 
また、他の中小企業様からは、賃金規程の見直しについてもご依頼をいただきました。従業員一人ひとりによって、担当する業務内容や業務量、勤務時間などは異なります。また、部署異動を頻繁に経験する方もいれば、5年以上同じ部署で勤務している方もいるでしょう。こうした状況の中で、一人ひとりをどのように正当に評価していくべきでしょうか。おそらく、この課題は多くの企業経営者が頭を悩ませているテーマの一つではないでしょうか。
 

⑥従業員を評価する際の基準

 
従業員を評価する際に着目すべきポイントを、以下にまとめました(※業界や地域、企業ごとの事情によっては、必ずしも全てが当てはまるとは限りません)。
 
■ 新規学卒者・中途採用者の場合
① 入社までの学歴や職務経歴
② 担当業務に直接・間接的に役立つ資格や特技
③ クラブ活動やボランティア活動など、学業以外での経験
④人間性や社会性
⑤ 業務に取り組むうえでの将来の目標やキャリアビジョン
 
■ 既に勤務している従業員の場合
① 会社が定める年間目標と本人が設定した年間目標の達成度
② 自己評価と周囲からの評価
③ 社内関係者との協力姿勢や協調性
④ 業務能力以外の人間性や社会性
⑤ 公的資格や社内資格の取得状況
 
以上が、従業員を評価する際の主な着眼点です。続いては、企業側が評価制度を設計する際に、基準として整理しておきたいポイントをご紹介します。
 
① 勤務地の違いをどのように捉え、評価項目へ反映させるか
② 総務部門、研究開発部門、製造部門、営業部門など、部門ごとの特性をどのように評価項目へ反映させるか
③ 同じ部署であっても、役職ごとにどのような評価基準を設定するか
④ 目標を達成した従業員への昇格やインセンティブ付与をどのように行うか。また、目標未達が続く従業員に対して、どのような対応を講じるか
 
これらの評価基準は、従業員の処遇や収入にも直結するため、多くの方が最も関心を寄せるポイントではないでしょうか。
 

まとめ

 
いかがだったでしょうか。企業としては、最大限のパフォーマンスを従業員に発揮してもらえる環境を整えることこそ重要です。そのためにも、企業経営者と従業員・スタッフの間の相互理解が必要となります。次号では、従業員やスタッフに対する評価基準をどのように決めていくか、より詳細にまとめてまいります。
 
本コラムをご覧いただいた企業経営者様の中で、個別の相談や人事関連諸規程の新規策定・改訂などをご検討されている場合、弊社(株式会社サザンクロス)メールアドレスまでご一報いただけましたら鋭意対応させていただきます。また海外進出案件についても引き続きご相談をいただけましたら幸いです。
〈sc_minamijyujisei@yahoo.co.jp〉
 
glay-s1top.jpg
株式会社 サザンクロス
代表取締役社長 小田切 武弘
海外志向が強く、学生時代に海外留学を経験。学業修了後は、大手電気機器メーカーや飲料・食品メーカー、総合商社など数社にわたって、米国、インド、韓国、東南アジアといった諸外国に駐在。その中で、海外でのビジネスに苦戦する日本企業の存在を知り、自らのノウハウを提供したいという思いが芽生える。2017年7月7日、企業の海外展開のサポート事業、および国内・国際人事コンサルティングを手がける(株)サザンクロスを設立した。
 
 
 

関連記事

最新号のご案内New Release

Business Plus 2026年9月号

最新トピックス記事

カテゴリ

バックナンバー

コラムニスト一覧

最新記事

話題の記事