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コラム BRT47 vol.1 地方活性の中心はどこだ? 外食の虎・安田久のBRT 47 飲食プロデューサー

コラム
 
 B-plus読者の皆さん初めまして。安田久です。飲食プロデューサーという肩書で、いろいろな業態の飲食店を手掛けています。もしかしたら、以前にレギュラー出演していたテレビ番組の 『マネーの虎』 などで覚えてくれている人がいるかもしれませんね。
 
 突然ではありますが、皆さんは普段、どれだけ外食なさる機会がありますか? 飲食業に携わる者として、昨今の不景気で外食へ向かう足が減っているのは寂しい限り。何とかしたいと思っています。
 また、私は東北の秋田県出身で、郷土を大事にしたい気持ちが強いのですが、地方活性化が唱えられて久しい今、本当に地方活性化はできているのだろうか? 
 私がこのコラムで書きたいテーマはそこです。本当に望まれている飲食業や地方活性化とは、どんなものなんだろうか。そこを一緒に考えながら、 飲食以外のビジネスにも役立つヒントを見つけていきましょう。
 
 

日本の 「センター」 と 「センターを取り巻くもの」

 
 さて、「センター」 という言葉、最近よく見かけますね。おもしろい言葉です。アイドルグループにも 「センター争い」 などという言葉が出てきたように、何か特別な響きがある。じゃあ、日本のセンターは何だろうか? 言い方を変えれば、日本を支えているのは誰だろうか?
 
 私は思うんです。一般の (というと失礼だけど) サラリーマンやOLさんが頑張っているからこそ、企業も国も回っているんじゃないかと。彼らが毎日元気に働いて、前を向いてやっていく。そのエネルギーをもたらしたい。私が飲食業をやる目的はそこにあります。
 
 では、どうやって飲食で彼らを元気にするのか? 奇抜でエキセントリックな店を出すことも方法の一つです。いっぽうで、しんみり自分の原点に立ち返り、「この料理うまいな! よし、明日からまた頑張ろう」 と奮い立てるような料理や店と出会ってもらうことも一つの手。表面的でなく、心と体の奥深いところからモチベーションが沸き立つ店と出会ってもらうことがね。
 
 

地方活性化郷土料理店に挑む

 
 そんな気持ちで私が出店していたのは、主に東京の銀座でした。渋谷や、その他のエリアに出店する手もありますが、地方から東京に来ると、やはり銀座を歩きたくなる。外国人も同じ。センターとして内外の多くの人の目に触れる街 は、やはり銀座です。
 その銀座でどんな店をやるのか? 私の答えは 「地方活性化郷土料理店」 でした。
 地方の食文化が廃れてしまうと、日本からおいしい“食”が消えてしまいます。それだけでなく、「これを食べれば元気になる」 という特別な “食” がなくなってしまう。日本のセンターである東京にいる人たちは、ほとんどが地方出身者だ。地方と東京は “食” においても切り離せない。そして、他でもない自分には、誰もが 「あっ!」 と驚く飲食業を多数プロデュースしてきた自分には、必ず両者の橋渡し役ができる。―― 私はそう考えました。
 
 そこで掲げたテーマが、「47都道府県それぞれの食材ブランドを擁立する」 「その食材ブランドで、地方活性化の先鋒となる店舗を開く」 というものでした。そう、このコラムのタイトルの 「47」 は 「47都道府県」 のことなんですよ。秋田ブランドの 「なまはげ」 「きりたんぽ」、鹿児島ブランドの 「黒薩摩」、熊本ブランドは 「あまくさ」、石川は 「能登輪島」、佐賀は 「葉隠」、福岡は 「博多筑前屋敷」、徳島は 「阿波おどり」・・・。私は7県13店舗を一気につくり、広げました。いずれも30~40代のサラリーマンとOLがお客様の中心で、個人の来店から宴会まで広く利用され、各県のブランドを浸透させることができました。
 
 「店が東京にあるんなら、東京が潤うだけじゃないか」 って? 違います。センターがきちっと立ち、散発で終わりがちな興味や関心を上手にまとめるから、それが地方にも効率よく派生するんです。各部門や周辺の要素が元気になるためにも、「センター」 にはきちっと立っててもらわないといけない。これ、ビジネス全般の鉄則じゃないかな。
 
 

肉、野菜、魚のブランドを探せ

 
 地方での商材発掘はなかなか大変ですよ。いい商材があっても、東京でそれを展開することを皆が皆認めてくれるわけではない。「東京もんが、自分たちが大事に守っている文化を勝手に使おうとしてるぞ」 ―― そう門前払いされてしまったことも一度や二度ではありません。
 
 また県によっても、すでに全国的に有名な食材もあれば、まだそんなに認知されていない食材もあります。それによってやり方も変えないといけない。北海道などは “食” の宝庫として、十勝黒豚、じゃがいもの北あかり、サーモンや函館産ヤリイカというふうに、肉・野菜・魚介の全ブランドが確立していますよね。飲食店は肉・野菜・魚の3つがバランスよく組み合わさることが基本ですが、店として北海道をやる場合は逆に、何かに絞ることも必要になってくる。私がやったのはタラバガニでした。でも、カニに絞りこむとしても同業他社の人気店がすでに銀座で根を張っていたり、その他の要因もあって、商品の理想と店舗展開の理想が必ずしも一致するとは限りません。
 
 つまりは、飲食ビジネスに王道はないということです。しかし、今まで誰もやってないことにこそチャンスがある。これは飲食ビジネスでも真実です。私はそれを体験してきました。
 
 

キャラに自信を持っていけ

 
 体験する中で、「やってはいけないこと」 もわかりましたね。自分の目指す “形” をブラしてはいけない。センターの店と地方とで共有した “キャラ” がブレてしまうと、地方も説得できないし、消費者も 「何がやりたいんだろう?」となってしまう。「私は地方と東京の橋渡しをします」 と公言している以上、そのキャラを変えてはいけないのです。
 AKB48など、アイドルだって同じじゃないですか。キャラを深めるための挑戦をする人は支持されますけど、話題づくりのためにコロコロとキャラ替えしちゃうのは、セオリーではないでしょう? メンバーがそれぞれ自分のキャラで生きなければ意味がない。これからの時代、飲食店に限らずビジネスは、やっぱり地方がそれぞれに立ってこないと。再び活性化 (Re-vitalization) してこないと。
 
 そんな着眼点で書かせていただくこのコラム、しばらくお付き合いください。
 
 
 
 
 外食の虎・安田久のBRT47 ~Business Revitalization Trend~
vol.1 地方活性の中心はどこだ?

 執筆者プロフィール  

安田久 (Hisashi Yasuda)

外食産業プロデューサー・元 『マネーの虎』 レギュラーメンバー

 経 歴  

1962年、秋田県男鹿市生まれ。アルバイト経験をきっかけに飲食業界へ。現場を15年間経験の後、35歳で「監獄レストラン アルカトラズ」をオープン。外食産業関係者を含め大きな支持を得た。2002年には人気テレビ番組『マネーの虎』にレギュラー出演し、知名度が全国区に拡大。その後、2004年に地方活性化郷土料理店第1弾として、秋田県モチーフの店「なまはげ」を銀座に出店。以後「47都道府県47ブランド47地方活性化店舗」を理念に、銀座を中心に郷土料理店を次々と展開。2012年からは飲食店経営者を徹底的に鍛えなおす“虎の穴”「外食虎塾」を主宰している。

 オフィシャルホームページ  

http://www.yasudahisashi.com
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