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スペシャルインタビューSPECIAL INTERVIEW

名セットアッパーが胸に秘める
チームと周囲への貢献意識

 
 
東海大仰星高校時代はエースとして注目された建山投手。プロ一年目の1999年に早くも北海道日本ハムファイターズの先発ローテーションに定着し、防御率2.89で6勝を挙げて周囲の期待に応えた。メジャーでは昨2011年のシーズンがルーキーイヤー。日本プロ球界でのデビュー時とメジャーデビュー時との違いは、どんなものだったのか。
 
 

自分のPRを優先した

 
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 プロデビュー当時と昨シーズンの心境は、自分の中ではそんなに変わらないですね。気持ちは一緒というか、取り巻く環境は違っても、1年生であることには変わりない。一つだけ変化があるとしたら、アメリカと日本の文化の違いから悪い影響を受けないよう注意しようという気持ちが、明確にあったことですね。
 アメリカは日本みたいに縦社会じゃないでしょ? 一人ひとりが大人であり、いろんな考え方がある中でプレーしていく。だから個性的な考えも柔軟に受け入れるところがあるんです。それがざっくばらんな雰囲気を生み出すわけですが、そこに慣れてしまうと、日本で先輩に怒られるような叱咤はないですから、ダラダラしてしまいやすいんですよ。そこはすごく注意していましたね。
 あとは、自分から仲間に話しかける意識は、日本にいたころと少し違っていたかも知れません。日本ハムには長く在籍させてもらいましたから、チームメイトが自分のことを理解している空気が、もうできていました。だけど、当然こっちではそれがない。新規のコミュニケーションでよくありがちなのが 「相手のことを理解しようとする意識」 だと思いますけど、僕はむしろ自分をわかってもらうためのコミュニケーションを意識しましたね。
 僕ね、ウエイトトレーニングがあまり好きじゃないんですよ。どちらかというと、柔軟性をキープするためのトレーニングに注力したいタイプなんです。南米の選手だとそもそも身体能力が高いので、ただ投げて、ただ打つだけで通用します。でも、日本人が同じことをやっても通用しません。投げ方にも工夫がいるわけなんですよ。そこで、「俺はこういうボールを投げたいから、こういうトレーニングをしてんねん」 と自分からアピールすることで、「ヨシ(※) はこういうふうにバッターを打ち取りたいんだな」 とわかってもらおうとしました。「自分にはあなた方のような投げ方はできないけど、あなた方にできない投げ方ができる」 と主体的な視点で主張することで、お互いを認め合える。メジャーの選手も日本人投手の能力の高さは理解しているので、聞く耳は持ってくれますからね。
 
※ 建山投手のチーム内でのニックネーム
 
 
 
多くの選手がしのぎを削りあうのがプロの世界。一人がブルペンに入ると、別の誰かがブルペンから外れることになる。まさに実力主義だ。誰もがロースター(公式戦に出場できる登録選手) 入りを目指し、ライバルよりも抜きんでようとする。そういったライバルたちとはどのように付き合っているのか?
 
 

ライバルは敵か仲間か?

 
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 基本的には、ライバルと呼ばれる人とは野球の話はしませんね。僕はサイドスローなんですけど、レンジャーズ移籍時には同じサイドスローの投手が他に2人いたんです。一人は開幕ロースター入りが当確だった選手で、もう一人は若手。でね、彼らが聞いてくるんです。「ヨシのボールは、どう投げてるんだ?」 そんな、同業中の同業に投げ方を教えたりしたら、商売あがったりやんか(笑)。 でも土俵が違うピッチャー、たとえば先発のピッチャーにはいろいろと話をしましたね。
 ライバルとはいえ同じチームの仲間なので、日常会話は普通にしますよ。ただね、気持ち的に複雑だったのは、目下のライバルと目されたピッチャーが一番僕によくしてくれたこと(笑)。 昨シーズン途中にボルチモア・オリオールズに移籍したダレン・オデイなんですけど、人としてもすごくいいヤツでね。僕は通訳が通年してつかない契約だったので、どうしても一人になるときがあるんです。英語を話せるようになりたいし、チームに溶け込みたいので、積極的にチーム関係者には話しかけていたんですよ。そんな中で、いつも食事とかに誘ってくれる本当にいいヤツで、「ヨシのために何か力になってあげよう」 という親切心がすごく伝わってくる。嬉しい反面、彼とピッチングの話ができないのは切なかった(笑)。 オデイとは今でも時折連絡を取り合っていて、お互いにワインが好きなのでクリスマスに贈りあったり。そんな関係が続いています。
 日本のプロ野球にいたときも、元日本ハムの立石尚行さんとのやりとりは印象的でした。先輩ですが競い合う関係。そんな立石さんが引退されるとき、「俺は先にユニフォームを脱ぐけど、お前は1年でも長く頑張ってほしい」 と言われまして。競いあっているという意識が、次のステップでは、相手を応援するという気持ちにつながるんです。これは大介(※) とも同じで、野球とラグビーという違いはあっても、「同じ高校の同級生には負けたくない」 という競争意識が次のステップでエールに変わるんです。そういった関係が自分の血となり肉となることは間違いないですよね。
 一つだけ言えるのは、「勝利」 という共通の目標があるので、ありきたりの表現になりますけど、彼らとは 「切磋琢磨できる関係」 であって敵じゃない。ビジネスの世界は少し違うかもしれませんが、一生懸命に競い合って敗北したのなら、それを爽やかに認めることができる相手なんですよね、ライバルというのは。やることをやって負けたのなら仕方がない。でも、負けたくはない。そのモチベーションになってくれる原動力として、いいライバルは必要です。
 
※ ラグビー元日本代表の大畑大介氏。建山選手とは東海大仰星高校の同級生
 
 
 
 
 

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