インタビュアー 水野裕子(タレント)
松本 19歳から料理の道に入り、気付けば半世紀以上になります。最初は奈良県の老舗料理店で修業を積み、その後は大阪府の心斎橋にある支店で料理長を務めました。それから約10年間、調理師の専門学校で講師として教壇に立ち、のちに岐阜県にある旅館「水明館」でも総料理長を務めたんです。現在の上皇様のお食事を担当させていただいたこともありますよ。その後、著名な医師である日野原重明先生からお声がけいただき、朝日新聞社主の専属料理人として5年ほど勤務しました。そして、2019年5月に地元である王寺町に当店をオープンしたんです。
水野 すごいご経歴ですね! 地元でお店を開くことを決められたのは、何か理由があったのですか?
松本 この辺りには本格的な懐石料理を楽しめる店が少なく、せっかくなら、私が長年にわたり技術を磨いてきた料理を、地域の方にも楽しんでもらいたいと思いました。その際、“懐石料理”と聞くと高級そうで近寄りがたく感じる方もおられるのではと考え、親しみやすい“惣菜”と名乗ることにしたんです。ただ、お惣菜のイメージと、実際にお出しする料理とのギャップが大きいとよく言われますね(笑)。
水野 確かに、拝見するメニューは懐石料理そのものですよね。しかもかなり、手頃な価格で驚きました。
松本 店名やイメージだけでなく、価格面でも、日頃から気兼ねなくご来店いただけるよう、工夫を重ねました。また、できる限り地元食材を使い、化学調味料は使用せず、そのうえで決して手を抜かず丁寧に仕上げることにこだわっています。その甲斐もあってか、ありがたいことに遠方からお越しいただく方も多く、お客様のほとんどがリピーターになってくださるんですよ。

松本 今日は水野さんにも料理を味わっていただこうと思いまして、玉子じめ――いわゆる茶碗蒸しをはじめ、ちりめん山椒のうま煮、椎茸のうま煮、胡瓜の佃煮、プリンをご用意しました。ぜひ召し上がってください。