B+ 仕事を楽しむためのWebマガジン

経営者インタビューEXECUTIVE INTERVIEW

得意を伸ばし自立を促す
就労支援福祉施設の運営

 

可能性を引き出す「できる」という視点

 
glay-s1top.jpg
水野 実際の業務では、利用者さんたちはどのように働かれているのでしょうか。
 
倉内 先ほどもお伝えしたように、当事業所ではそれぞれが自然と仕事を覚えられるような環境づくりを重視していまして。例えば、アイロンがけの技術を習得した方は、最初はシワの線だらけだったのが、「このシャツ、誰が仕上げたの?」と驚くレベルにまで上達しました。しかもその方は、誰にも教わっておらず、他のスタッフの作業の見よう見まねだったそうです。最近では職員がへたに手を出すと、逆に怒られてしまうくらいなんですよ(笑)。
 
水野 それはすごいです。まるで職人のような習得方法ですね!
 
倉内 本当にそう思いますね。しかし、我々が最初から「どうせできないだろう」という考えのもとで手取り足取り教えていたら、逆にそこまでのレベルには到達できなかったでしょう。あくまでも自分自身の力で練習を重ねたからこそだと思うんです。だからこそ、私たちは、最初から「彼らもできる」というイメージで接するようにしています。もちろん苦手なこともあるものの、しっかりと向き合って接していれば、彼らは必ず期待に応えてくれるんです。
 
水野 なるほど。社会的なイメージが先行して、「障がい者はいろいろなことができない」と決めつけられてしまうことも多いですもんね。
 
倉内 そうなんですよ。でも本当はすごく大きな可能性を秘めているんです。中には掃除がとても得意な利用者様もいまして、あるとき一緒に外の清掃の仕事に出た際に、途中で姿が見えなくなりました。どこへ行ったのだろうと思っていたところ、その方はお風呂掃除に集中していて、2~3時間かけてピカピカにしてくれていたんです。まるで新品みたいとお客様に喜ばれましたよ(笑)。
 
glay-s1top.jpg
水野 得意なスキルが存分に発揮されたわけですか! 本当に、向き不向きや得意不得意が人それぞれであることを感じます。
 
倉内 ええ。無理に何かを教え込むより、興味を持ってくれたことを自然に伸ばすほうがうまくいくと思います。中には“助手のプロ”のような方もいて、私が何か作業していると、黙っていてもペンチやドライバーなどの道具を持ってきてくれるんです。他の企業に行った時も「うちにもほしい!」と言われることもあります(笑)。もしも機械が苦手なら手作業で、人との接触が苦手なら裏方でなど、いろんな働き方があるってことを、もっと多くの人に知ってもらえたら嬉しいですね。
 
水野 実際に、個々の特性を活かしながら成長していく姿を近くで見てこられたからこそ、倉内代表のお言葉には説得力を感じますね。