
インタビュアー 狩野恵輔(野球解説者)
高橋 弊社は高度成長期に設立され、主に食品の包装や梱包用の資材を卸す事業に携わってきました。外に大屋根の建物が見えたでしょう? あれは日蓮宗のお寺なんです。最初、お寺の敷地で檀家さんの1人が事業を興し、父が経営を引き継ぎました。そして、長く東京で暮らしていた私が平成の終わり近くに帰ってきて、やがて父から経営のバトンを受け取ったわけです。
狩野 本日お邪魔しているash.(アッシュ)というお店は2024年にオープンされたそうですね。お寺の中にこんなハイセンスなお店があるなんて驚きです。
高橋 ここは照明を中心とする、デザイン性や機能性に優れたインテリア製品のショールーム兼社屋です。以前は祖父がこの建物で病院を経営していました。私が代表になった後、全面的に改修して今の姿に生まれ変わったんです。
狩野 どっしりした、雰囲気のある建物ですよね。それにしても、なぜ従来の事業とは分野の異なるインテリアのお店を開こうと思われたのですか?
高橋 私は、30代半ばまで、東京で俳優業をしていました。しかし、途中で仕事上の壁に突き当たって鬱々としていた頃、結婚した妻との間に子どもが生まれ、実家に戻る決断をしました。照明やインテリアに興味を持ったのは、家族で暮らすために古民家をリノベーションしようとした時です。工務店さんが提案してくれるプランが全然ピンと来なくて、どうしようかなと考えていたんですよ。

高橋 そうです。東京や海外でさまざまなエンターテインメントを体験したほか、洗練された外観や内装のお店をたくさん見ていたから、ごく限られたデザインやパーツで妥協してリノベーションをするのは嫌だったんです。それで結局、全部イチから自分でやることにしました。幸い、工事に心得がある檀家さんたちが協力してくれることになったほか、東京時代に知り合った照明メーカーさんとのつながりを活かすこともできて、時間はかかりましたが、完成するまでの過程をすごく楽しむことができました。完成した家がインテリア雑誌に取り上げられたこともあって、ひょっとしたら、自分以外の人のお役にも立てるかもしれないと考えるようになったんです。そうした気持ちがash.の出発点になっています。