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ビジネス 川上徹也の「売り場に熱を!」 vol.3 「おもしろそう」と思ってもらう 川上徹也の「売り場に熱を!」  コピーライター/湘南ストーリーブランディング研究所代表

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今、全国の売り場に一番足りないものは“熱”です。
売り場に“熱”がなければ、どんなにいい商品を置いても、お客さんは寄りつこうとしません。
 
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「おもしろそう」なコピーの成功例。画像許可(株)ゴリップ
こんにちは。コピーライターの川上徹也です。連載の3回目。売り場に熱を産み出すために、今回は「おもしろそうと思ってもらう」という手法を解説していきましょう。
 
人は「おもしろい」ものが大好きです。おもろしそうな場所、おもしろそうな人には、自然と人が集まってきます。なぜなら「おもしろい」ことは、人にとって「快」だからです。「快」には、肉体的な部分もありますが、精神的な部分も大切です。「おもしろい」と感じると、人は精神的な「快」を感じるのですね。
 
あなたのお店をお客さんに「おもしろそう」と思ってもうらためには、売り手側が何かのおもしろい仕掛けをする必要があります。そして実際その仕掛けを、お客さんが「おもしろそう」と思えば興味を抱き、一度利用してみたくなります。そして実際に利用して「快」を感じることができたらまた利用したくなります。
 
このサイクルが売り場に“熱”を産み出すのです。
 
 

「肉」そのものではなく「包む楽しさ」を売る

 
「おもしろそう」と思ってもらうための方法はいろいろとあります。
 
一番簡単な方法は、お客さんから興味を持ってもらえるようなキャッチコピーを掲げることです。もちろん中身が伴っていないと、効果は一時的になってしまうので注意が必要です。
 
京都に本社がある株式会社ゴリップが運営するサムギョプサル(豚のバラ肉を焼きサンチュなどに包んで食べる韓国料理)専門店チェーン「ベジテジや」が掲げるキャッチコピーは一度見ただけでとても印象に残ります。それは・・・
 
包まぬ豚は、ただの豚。
 
・・・というものです。このキャッチコピーは、店頭の看板にもメニューや箸袋にも大きく書かれています。おそらく、1992年公開のジブリ映画『紅の豚』の主人公ポルコ・ロッソが発した名言「飛ばねえ豚は、ただの豚だ」を元ネタにしているのでしょう。
 
非常に目につきやすく印象に残るキャッチコピーなので、道を歩いていて店頭の看板でたまたま見かけても「どんな店だろう?」と興味を抱きます。同時に包み方「10000通り以上」と書かれているコピーにも目が行き、それだけでも「おもしろそう」に感じて一度店に入ってみたくなります。実際、トッピングも豊富で、肉と野菜をいろいろな包み方で楽しめることから、女性に人気のある店です。
 
2005年、社長の勝山昭さんは、韓国で働いていた時に大好物になったサムギョプサルのチェーンを日本で出そうと思いつきました。韓国では、焼肉といえばサムギョプサルというくらいポピュラーな料理です。ただ「焼肉=牛肉」というイメージが強い日本では、「豚の焼肉」というカテゴリーではなかなか浸透しないと考えました。
 
そこで、勝山さんは、サムギョプサルを「豚の焼肉」ではなく、「何でも包んで食べる料理」と定義し直したのでした。そしてその気持ちを込めたのが「包まぬ豚は、ただの豚。」という1行で、それによってお客さんから「おもしろそうな店」と思わせることに成功したのです。
 
 

徹底的に「青森」を打ち出す

 
「何かひとつテーマを決めてそれを徹底的に打ち出していく」というのも「おもしろそう」と思ってもらえる手法のひとつです。
 
青森県三沢市にある「星野リゾート 青森屋」は、徹底的に「青森」を打ち出すことで
熱を産み出し、お客さんから「おもしろそう」と思ってもらうことに成功しています。
 
もともとは、古牧グランドホテルという老舗観光ホテルだったのですが、2004年に経営破綻。その後、星野リゾートに運営がまかされることになり、「青森屋」として再出発しました。
 
青森屋のコンセプトは「のれそれ青森」というもの。「のれそれ」とは津軽弁で「めいっぱい、徹底的に」といった意味。つまり、めいっぱい青森を打ち出していこうというわかりやすいコンセプトです。
 
フロントの1階下にあるイベントスペースは、「じゃわめぐ広場」と名づけられています。 「じゃわめぐ」とは津軽弁で「心騒ぐ」「ワクワクする」 という意味。昭和レトロな雰囲気で、まさにじゃわめぐ仕掛けがいろいろと施されています。
 
毎晩、20時半からは、津軽三味線・民謡・ねぶた囃子・スコップ三味線などが楽しめる無料のじゃわめぐショーが実施され、大いに盛り上がります。広場横にはヨッテマレ酒場(津軽弁で「寄ってしまえ」と「酔ってしまえ」をかけたネーミング)が深夜0時まで営業しています。他にも「ホタテ釣り」があったり、「リンゴジュースが出てくる蛇口」があったり、子供から大人まで楽しめます。朝は、同広場で「津軽弁ラジオ体操」というユーニクなイベントも行われます。 
 
このようなイベントだけではありません。筆者も昨2015年に一度泊まってみましたが、チェックインからチェックアウトに至るいろいろな場面で、徹底的に青森を楽しんでもらおうというスタッフの“熱”を強く感じました。実際、国内外の数多くのお客さんが心からその“熱”を楽しんでいるのが印象的でした。
 
このような“熱”が毎日産み出されているからこそ、青森屋は、日本全国からも海外からも多くのお客さんが押し寄せるようになりました。結果として、数年で古牧温泉を再生させることに成功したのです。
 
皆さんのお店も、まずは印象的なキャッチコピーを掲げたり、何かを徹底的に打ち出してみましょう。きっと売り場に“熱”が産み出されるはずです。 
 
 
 
 
川上徹也の「売り場に熱を!」
vol.3 「おもしろそう」と思ってもらう

 著者プロフィール  

川上 徹也 Tetsuya Kawakami

コピーライター/湘南ストーリーブランディング研究所代表

 経 歴  

大阪大学卒業後、大手広告代理店に入社。営業局、クリエイティブ局を経て独立。コピーライター&CMプランナーとして50社近くの企業の広告制作に携わる。東京コピーライターズクラブ(TCC)新人賞、フジサンケイグループ広告大賞制作者賞、広告電通賞、ACC賞など受賞歴は15回以上。
「物語」の持つ力をマーケティングに取り入れた「ストーリー・ブランディング」という独自の手法で「企業」「地域」「大学」などが本来持っている価値を見える化し輝く方法を、個別のアドバイスや講演・執筆などを通じて提供している。
著書『物を売るバカ』『1行バカ売れ』(角川新書)、『キャッチコピー力の基本』(日本実業出版社)など多数。 最新刊『あなたの弱みを売りなさい』(ディスカヴァー21)が好評発売中。

 オフィシャルホームページ 

http://kawatetu.info/

 
(2016.1.7)
 
 
 

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