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企業が取り組む「BCP(事業継続計画)」とは
シリーズ第6回 地方自治体のBCP(業務継続計画)も遅れている

 
 

5割以上の自治体が復旧に1、2週間かかる

 
 このような状況では、災害やシステム障害など不測の事態が起こったときに、どれくらいの自治体が業務の継続性を維持できるか疑問である。そして、そんな心配を裏付けるような状況にあることもわかってしまったのである。
 少し古い調査だが、2005年5月に東京コンサルティング(株) と日経BPガバメントテクノロジーが行った共同調査 (47都道府県と763市・区の計810団体を対象に実施。有効回答数は417団体・回収率51%) によると、実に、8割近くの自治体がサービスや業務の継続性が十分に確保できないという状況が明らかになったのだ。
 例えば、主要コンピュータの運用場所が地震や火災に被災して使用不能になった場合、2~3日以内に業務を復旧できる自治体は22.2%しかなかった。この2割強の自治体のうち、「被災時でも続行可能もしくは数時間で復旧できる」 と回答した自治体は全体の3.9%にとどまった。各調査分野 ( AP=アプローチ:システム化プロセスおよび体制、AR=アーキテクチャ:システムの基本構造、AC=アチーブメント:システム化効果の3分野)がすべてAランクの 「AAA」60団体のうち、先進自治体と呼べるのは神奈川県大和市と福島県会津若松市だけだった。
 もっとも多かったのは 「復旧に1~2週間要する」 と答えた団体で、全体の5割以上にも達していた。取り組みが進んでいる自治体では遠隔地の待機系のシステムに切り替えて業務を継続できる仕組みを持っていたが、ほとんどの自治体がバックアップデータは確保しているものの、待機系システムを持っていなかった。
 逆に、業務を継続もしくは数時間で復旧できるとした16自治体も、被災時の関連機関との連絡やデータの取り扱いについてシステム化されていなかったり、1種類しか手段を確保していなかった。バックアップレベルと関連機関との連携のレベルがともに充実していたのは東京都千代田区と大阪府藤井寺市だけだった。
 こんな状態では、被災時にほとんどの自治体のシステムが機能停止に陥り、住民に対するサービスだけでなく、災害情報や安否確認のサービスも提供できなくなるのは必至である。
 
 

中越地震の教訓が3年後に生かせた

 
 それでは実際にことが起こったとき、自治体の長はどのような判断と決断で臨まなければならないのだろうか。中越、中越沖の二つの地震に泉田裕彦新潟県知事はどのように対応したか、見てみよう (2007年の危機管理産業展でのコメントから構成)。
 まず、二つの地震の距離はわずか数十キロ、地震の規模もほとんど同じなのにもかかわらず、被害の状況は全く違っていたようだ。
 中越地震は中山間地型の地震だったため、亀裂、土砂崩れ、崖崩れなどで道路が寸断され、山間部の集落が孤立し、通信も途絶した。公共インフラが大きな被害を受け、河川に土砂が入り込み、水があふれて家が水没する被害が続出した。牛などの家畜や養殖の錦鯉も被害を受け、生活そのものが打撃を受けた。職場が都心にあり、自宅が郊外にあるような都会では、自宅が被害を受けても職場を失うことはない。しかし、住居のすぐそばで農業や養魚業などを営んでいる中山間地域では、従来通りの生活を続けていくには、家を再建するだけでなく、事業も再開できる環境を回復しなければならない。中越地震では建物やインフラの復旧だけでなく、職住が一体となった 「生活再建」 が大事だったという。
 一方、中越沖地震では液状化現象が発生したため、砂地の海岸近くにある柏崎市や刈羽村では10万人ほどの住民が家屋の崩壊・破損など個人財産の被害を受けた。インフラを含めて、個人への支援をどうするかがより大きな課題になったという。
 中越地震では、県の組織はあまり有効に動かなかったが、3年後の中越沖地震では機動的に動くことができた。中越地震の時に、阪神・淡路大震災を体験した兵庫県が職員を派遣してくれ、これから何が起きるのか事前に教えてもらうことができたからだ。マニュアルよりも、ノウハウと経験を持っている人の助けがもっとも大事だと感じたという。
 
 
 

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