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コロナ禍で考える、理想的な組織づくりvol.1 自由な職場づくりには社員への細かいケアが必要

ビジネス コロナ禍で考える、理想的な組織づくり vol.1 自由な職場づくりには社員への細かいケアが必要 コロナ禍で考える、理想的な組織づくり e-Janネットワークス株式会社 代表取締役 坂本史郎

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新型コロナ感染拡大の影響などで、2020年以降、多くの企業がテレワークを導入してきた。それに伴い、社員間のコミュニケーション不足などの課題も明らかになってきている。テレワークプラットフォームのCACHATTO(カチャット)および関連製品の企画・開発・販売・運営を手がけるe-Janネットワークス株式会社では、コロナ禍以前からテレワークの導入を推進するなど、社員が働きやすい環境づくりに尽力してきた。坂本史郎社長が語る同社の取り組みには、テレワークを円滑に継続するための対応策だけでなく、理想的な組織づくりに必要なことのヒントが隠されている。
 
 

理想的な組織から健全なビジネスが生まれる

 
――御社は創業時から、社員が働きやすい環境づくりに努めてきたと聞いています。
 
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坂本社長
はい。当社の社名は、社員もお客様も地域社会も、すべてのステークホルダーが「いいじゃん」と思えるような事業を展開したいという思いがあって名付けました。では、どうしたらみんなに「いいじゃん」と思ってもらえる会社にできるのか。
 
そのためにはまず、社員が働きやすい環境を整備する必要があるのではないかと考えました。そこで私は創業当時から、社員に働きやすいと思ってもらえるような、自由な職場環境づくりに努めてきた。そういう環境にすれば、みんないい仕事をしてくれるのではないかと思ったんです。
 
ところが、実際に自由を与えてみると、それほど業務効率がよくないことがわかってきた。例えばお昼過ぎに出社してきて、夕方にはみんなで飲みに行ってしまうような感じです(笑)。これはちょっと失敗かなと反省して、理想的な組織をつくるにはどうすればいいかと考えるようになりました。そこで立てた仮説が、“理想的な組織から健全なビジネスが生まれる”というものだったんです。
 
 

各人の細かい動きをマネジメント

 
この仮説を実証するには、社員が働きやすい環境を整備する必要がある。しかし、あまり自由を与えすぎても組織運営はうまくいかない。そこで気付いたのは、働く人たちにはある程度の縛りがあったほうがいいのではないかということでした。つまり、社員一人ひとりの、些細な部分にも目が行き届いたケアをする。ある程度は自由を与えるものの、各人の動きをきちんとマネジメントする。
 
私はこれをマイクロマネジメントと呼んでいます。例えば、業務上でつまずきがあったように見えた時、ちょっとしたアドバイスをしてあげる。そうすると社員たちは、自分たちが管理者から気にかけてもらっていることを感じ取り、イキイキと働くようになるんですね。
 
――お話を聞いていると、初めから思い通りに組織づくりができていたわけではないようですね。
 
創業から3年くらいまでは失敗の連続でしたね(笑)。ただ、マイクロマネジメントを意識するようになってからは、組織運営が少しずつうまくいくようになってきた。私自身は自分の考えで動くタイプなので、自由過ぎると困ってしまうようなタイプの人の性質がよくわかっていなかったんです。みんな、自由が与えられればのびのび仕事するものだと思っていた。
 
でも、意外とそうではなく、自主的に考えて動くよりも、ある程度受け身であるほうがスムーズに仕事ができる人が多いんですね。肌感覚だと、勤め人の80%がそういうタイプの人だと思います。自分の考えで自由自在に動ける人材が集まる組織というのが私の理想ではあるものの、そうなるにはある程度のプロセスが必要なんだなと思うようになりました。
 
 

場所や時間の束縛からいかに解放されて仕事ができるか

 
テレワークはそうした理想的な環境づくりの一環として取り入れました。私自身は決まった時間に決まった場所に来て、タイムカードを押して仕事をする――という感覚があまりない人間で、そういう縛りはないほうがいいというのが信条です。ただ、それは私の理想であってみんなの理想ではない。
 
当時はリモートワークやテレワークという言葉はなかったですけど、要するに場所や時間の束縛からいかに解放されて仕事ができるかということですよね。例えば、直行・直帰ができる環境をつくるなど、私は創業前からそういうことには非常に大きな価値を感じていました。
 
それは自分がアメリカに住み、電子メールを最大限活用して仕事をした経験があったことが大きいと思います。あの時に、場所や時間にとらわれなくても、仕事は成り立つものなんだということを自分の中で確信したんです。
 
そういう思いがあったので、当社でも携帯電話を使って仕事ができるような環境を構築できないかと試しました。スマートフォンが普及し始めた頃は、その手法をスマホに移行し、同じ技術を応用してパソコンでもリモートで仕事ができるように進化させていったんです。それと同じく、フレックスタイムを設けるなど就業ルールもどんどん変えていきました。
 
その結果、リモートワークが社内に100%浸透したかと言うと、そうはなりませんでした。当社は社名が表すように、けっこうイケイケな社風のイメージを持たれることがありますけど、社員はみんなマジメなんです(笑)。マイクロマネジメントが効果的なのも、そういう人材が多いこととも関係しているでしょう。
 
ともかくみんな、毎日会社に出社して働くのが当たり前のことで、なかなか在宅で仕事するというような発想にはならなかったようです。また、テレワークの導入について管理者からの反対意見が意外にも多かったことも要因になっています。
 
――反対はどのような理由によるものだったんでしょう。
 
大きなものとしては、マネジメントがしづらいんじゃないかということでした。部下を管理している側からすると、自分の目の行き届かないところで部下が何をしているのかわからないようでは、管理をしきれないと感じたようです。例えば、過去に大きな失敗をしてしまったことのある部下がいたら、管理者からすると何か些細な報告漏れなどがあっただけでも、やっぱりこの人は――とネガティブな感情を抱いてしまうことってあるんですよね。
 
そういう細かい部分の管理をするには、やはり自分の見える範囲にいてほしいという心理が動く。そのあたりが人間の難しさですね。それでも、2018年頃には本格的にテレワークを推進するように働きかけました。
 
――次回は反対意見もあったというテレワークがどのように定着したのかをうかがいます。
 
~vol.2に続く~
 
コロナ禍で考える、理想的な組織づくり
vol.1 自由な職場づくりには社員への細かいケアが必要
 
(取材:2021年10月)

 プロフィール  

坂本 史郎 Sakamoto shiro

e-Janネットワークス株式会社 代表取締役

 経 歴  

1962年東京都生まれ。早稲田大学理工学部機械工学科を卒業後、東レ(株)に入社。1995年にバージニア大学ダーデン校でMBAを取得した。2000年に独立して(株)いい・ジャンネットを設立。2001年にe₋Janネットワークス(株)に社名変更。2011年、「日本創生ビレッジビジネスコンテストEGG JAPAN Innovation Cruiser」 で同社の提供するCACHATTOが「Global賞」を受賞した。2019年にスムーズビズ推進賞受賞・テレワーク先駆者百選に選定される。創業以来、社員が働きやすい労働環境の整備に尽力し続け、2006年以降、黒字を続ける経営を続けている。

 e-Janネットワークス株式会社公式サイト 

https://www.e-jan.co.jp/

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