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スペシャルインタビューSPECIAL INTERVIEW

 
 
久しぶりに撮影現場に戻った際のことをお聞きすると、「時間が経っても体が覚えていることは多かった」と語ってくれた菊川さん。実際に演じていて楽しかったシーンや印象に残っている場面をお聞きした。
 

食の喜びをあらためて感じた

 
久しぶりの現場は、「ああ、こんな感じだったな」と思い出しました。やっぱり現場は楽しいですね。特に演じていて楽しかったシーンは、外国人観光客に日本酒をお勧めするシーンです。理恵は英語が得意ではないものの、ほかの酒蔵の方よりは話せるので対応することになります。日本酒オタクで真っ直ぐな性格の彼女ですから、その外国人観光客と意気投合するんですよ。それが、コメディタッチで描かれているので演じていて楽しかったですね。
 
また、ラストシーンの風景も注目してほしい場面の一つです。「あわじ花さじき」という緑と花がとてもきれいな現場で撮影をしていて、映像を見た際には「これだけきれいな場所で撮ると、こんなにも素敵な映像になるんだ」と感動しました。ぜひ、みなさんにもその美しさを楽しんでいただきたいですね。
 
千年一酒造という、実際に淡路島にある酒造で撮影をさせていただいているので、酒蔵の臨場感もすごいですよ。撮影が行われたのは、日本酒づくりのオフシーズンである夏。その中で冬のシーンを撮影していたので、現場はかなり過酷でしたけどね(笑)。屋根裏のような狭いスペースに、出演者やスタッフが大勢詰めていて、本当に暑かったです。カットがかかるたびに、スタッフさんが冷たい飲み物や氷嚢を持って来てくれて何とか乗り切りました。映像ではまったく暑そうには見えないので、こういった裏話を知って観てみるのもおもしろいかもしれませんね。
 
『種まく旅人~醪のささやき~』への出演を通じて、あらためて第一次産業に関わる方への感謝が深まったと感じています。私も日本酒が大好きで、日々ありがたくいただいてきました。でも、それは決して当たり前のことではなく、手元のおちょこに入るまでにはさまざまなストーリーがあるんですよね。日本酒づくりは何千年と受け継がれてきて、その中で時代の荒波にもまれることもあったでしょう。今回の映画でも、日本酒づくりの存続の危機に瀕しています。それを乗り越えるには、時代に適合していく力が必要。日本酒づくりを未来に残していくために、これまでにも多くの方の努力があったのだろうと想像できます。
 
食は、生きていくうえで欠かせないもの。食べ物やお酒がおいしいというのは、喜びにもつながります。精魂込めてそれをつくってくれている職人さんがいることに、あらためて感謝しているんです。食べる、飲むのは一瞬でも、そのバックグラウンドに感謝し続けられる人でいたいですね。
 
理恵のセリフの中にも、食の喜びについて語るものがあります。「おいしいものを食べて、おいしいお酒を飲んだら次の日も頑張れる」という内容です。それを読んだときに、「まさに食って喜びだよなぁ」と思いました。その感覚を、多くの方と共有できたら嬉しいです。
 
『種まく旅人~醪のささやき~』では、理恵のひたむきな気持ちや、日本酒が好きだという思いが多くの人の心を動かします。そうして、良い心の交流が生まれるんです。私はそれこそが、“種まく旅人”だと思うんですよ。植物の種が育つには、太陽や水、栄養が必要ですよね。それは人間関係も同じです。旅人である理恵が種をまいて良い影響をもたらし、新しい人間関係ができる。それが次の世代につながっていくというのが、『種まく旅人~醪のささやき~』や理恵の素敵なところだなと思っています。
 
 
『種まく旅人~醪のささやき~』への出演を通じて学ぶことも多かったという菊川さん。それはこれまでに経験したさまざまな現場でも同じだったという。あらためて、これまでの半生を振り返っていただいた。
 

仕事を通じて学び続けてきた

 
私は大学生の頃にスカウトされたのをきっかけに芸能界に入りました。それまでは、芸能界で働くことを考えたことはなかったんですよ。将来の夢などもはっきりとしていなかったので、大学に入っていろいろと経験して考えていこうと思っていました。
 
最初はモデルとして活動させていただき、4年生のときにドラマデビューしました。そうしてさまざまな現場を経験する中で、この仕事で生きていきたいと思うようになったんです。目の前の仕事を楽しんでやっていたら、いつの間にか今に至るという感覚ですね(笑)。
 
現場で学ばせてもらうことは本当に多いです。仕事を通じて、成長させていただいていると感じています。もちろん、成長につなげるには自身の努力や前向きな気持ちが欠かせません。現場でいただく指導やアドバイスを、どのように受け止めて次につなげるかが大事なんですよ。
 
自分なりに試行錯誤して、どうやったらもっと良い芝居になるかと日々考えてきました。お芝居は自分一人で完結するものではなく、共演者やスタッフの方々とつくり上げるもの。だからこそ、どういうキャッチボールができるのか考えていかないといけないんです。
 
失敗したり、落ち込んだりすることも当然あります。でも、過去を変えることはできないんですよね。だから反省はしつつ、それを明日以降どのように変えていくのか考えるんです。昨日より一歩でも進めるように考えられたほうが良いですよね。未来を見据えて、過去は良い意味で捨てることが大切だと思っています。