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スペシャルインタビューSPECIAL INTERVIEW

 
 
俳優として活動を始めて20年が経った永山さん。20年間でさまざまな経験をする中で、仕事に対する意識に変化はあったのだろうか。
 

俳優以外の仕事へのチャレンジ

 
仕事に対する考え方は、毎日変化していっていますね。最近はフォトグラファーとして仕事をいただいたり、映画を撮らせていただいたりしています。絵を描くこともありますよ。仕事に取り組む中で「何か違うな」と違和感を覚えることがあるんです。その違和感を埋めるために、いろんなことをやってみたいと思っています。
 
自分の中に湧いてくる衝動に素直でいたいと思っていますね。興味のあることにはチャレンジしてみる。それが結果として仕事にもつながってきています。ただ、僕は積極的に動いていくタイプではないんです。どちらかというと、待ちの姿勢かもしれません。
 
よく、「自分から動いて行かないと何も変わらない」と言いますよね。でも、僕はそうじゃないんじゃないかなと思っていて。「いつかこんな役をやりたいなあ」と思っていると、数年後にオファーをいただくこともあるんです。フォトグラファーや映画監督の仕事も、ちょうど「俳優以外の仕事もしてみたい」と思っていたタイミングでお声がけいただきました。そういったチャンスを与えてくださった方々にとても感謝しています。
 
実際にそうした活動を始めてみて、それぞれの仕事の楽しさ、難しさを感じています。例えば映画監督は、「とっても危ない仕事だな」と思いましたね(笑)。すべて自分の判断で、自分の中の“最高”をつくり上げられるので、中毒性があると感じました。自分の求めているものをすべて表現できてしまうので、“悦”の状態で終われるんですよ。俳優として監督の指示で演技をしていたときは、「もっとできたんじゃないか」と常に感じているので、新鮮な感覚でしたね。
 
フォトグラファーとしての仕事では、その写真に関わる方々との価値観のすり合わせが大切だし、難しいと感じています。人によって価値観は違うもの。「こうしたほうが良いのでは」という意見がある中で、フォトグラファーである自分がどこまで我を通して良いのか模索しています。
 
 
映画『アヒルと鴨のコインロッカー』や『ミックス』、ドラマ『アンフェア』など数々の人気作に出演している永山さん。永山さんにとって“代表作”はどういったものになるのだろうか。
 

何が代表作なのかは観たお客さんが決める

 
20代のときに、ある大先輩の女優さんに「俳優は10年に1本代表作があれば良い。あとは納得がいかなくても、全部仕事だから」と言われたんですよ。僕自身、そのお言葉に影響されてきましたが、最近はだんだんと「そうもいかないんじゃないかな」と思うようになってきました。
 
そもそも代表作というのが少し曖昧ですよね。賞を取った作品だから代表作なわけではないし、より大勢の方に観ていただいたものがそうなのかと聞かれても、違う気がします。今は、何が代表作なのかは観ているお客さんが決めるものなのかなと思っていますね。その中で僕は、出させていただく作品すべてが代表作になるようにという意識で演じています。
 
子どもが生まれたことで、演技に対する意識にも変化はあったと感じています。子どもの感想っておもしろいんですよ。中途半端な演技はバレますからね。大人の方々は多くの解釈をして楽しんでくれますが、子どもの目線はもっと直感的です。その感想は役を自分に落とし込んでいくうえでもヒントになっていますね。
 
子どもにもわかりやすく伝わるように、自分の中で役柄をデフォルメして演じるように意識していたこともあります。そういった演技に対する取り組み方は、常に変化していっているんですよ。例えば以前は、情熱を隠すようにしていた時期がありました。そのほうが、観てくださっている方を引き込めるんじゃないかと考えたんです。
 
ただ、それは実際にやってみたら楽しくなかったですね。自分で映像を見返してみても、「もっとやれよ!」と思ってしまうし。だから、次は思いっきりやってみようと考えまして。溜まっているエネルギーを外に出してみることにしたんです。そうして自分のスタンスも自由に変化させていっています。