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スペシャルインタビューSPECIAL INTERVIEW

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中山氏のプレーの中で、今でも語り継がれている代表的なものの一つは、フランスW杯のジャマイカ戦だ。日本人としてW杯で初得点をマークしただけでなく、試合終盤に骨折しながらもフル出場を果たし、「わかったことは、骨折しても走れるってことと、そしてぼくが感じたのは、骨折ってまで走ってはいけないこと。良い子はマネしないように」 という名言を残した。痛みを苦にせずに走り続けたその想いとは?
 
 

力を出し切らなければ、次はない

 
 あれね、試合中はただの打撲だと思っていました。だから走っていられたんですよ。痛みがずっと引かないから 「おかしい」 とは思っていましたけどね(笑)。でも、あの時点で3人の交代枠は使い切っていましたから、ぼくがピッチの外に出てしまったら一人足りない状態でチームは戦わなくちゃならない。2対1で負けているのにですよ。
 
 グループリーグ敗退が決まっているからと言って、あのまま試合を終わらせて日本に帰るわけにはいかない。会場でもテレビの前でも、サポーターの皆さんが応援してくれているし、あの舞台に立ちたくても立てなかった選手がたくさんいて、そういう人たちの思いも背負って戦っているんだから。それに、自分だって次のW杯に出られるかなんてわからないし、置かれている状況ごとに精一杯の力を出さなければ、次のチャンスなんて来ないんですよ。与えられた瞬間をどれだけ自分のものにして、表現できるか。それが勝負の世界なんです。結果として負けてしまいましたけど、あの試合中は、自分からピッチの外に出るという選択肢が頭によぎることは一切なかったですね。
 
 
決して諦めることなく困難に向き合い、常に壁を乗り越えるために戦ってきた中山氏。一線を退いた現在も、自己の新たな可能性を見出す戦いを続けている。そんな男が思い描く、サッカー界の未来とはどんなものなのか。
 
 

Jリーグのファンを増やしたい

 
 やっぱり、今以上にサッカーが文化として日本に根付いてほしいです。そのためには、たくさんの方々にサッカーを好きになってもらう必要がありますよね。その入り口になるのが、日本代表です。代表の試合がきっかけになって、地元のクラブの試合を見に行ってくれるようになるのが理想的。家族の会話に地元チームの選手の話が出たり、試合結果について一喜一憂したり。そんなふうにチームが愛され、Jリーグの各クラブが地域を元気付ける存在になる日が、いつか来てほしい。
 
 15000~20000人くらいの収容規模でもいいから、サッカー専用のスタジアムがもっと増えるといいですよね。ぼくは、サッカー専用スタジアムというのは劇場だと思うんです。ボールを蹴る音や選手がぶつかり合う音が聞こえるくらい、多目的で使うスタジアムとは臨場感が段違いですから。そんな観客に優しい、楽しく観戦できる劇場を、Jリーグの全てのチームが所有できる日がくれば、サッカーに携わる者としてすごく幸せです。そのために、ぼくも自分ができることを還元していきたい。でも、サッカー文化がそこまで成熟するにはまだまだ時間が必要でしょうね。100年くらいかかるかもしれない。今ぼくは46歳だから、その時は146歳。もしそれまで生きていられたら、ぼくにとっては3つ目のギネス記録になる(笑)。
 
 これからも一つひとつの仕事に対して、期待された以上のものを返せるよう臨んでいきます。それを継続することで、精神的にも肉体的にも自分が理想とする中山雅史に近付けるはず。そういう強い気持ちで、チャレンジを続けますよ!
 
 
 
(インタビュー・文 佐藤学 /写真 北村恵奈/スタイリスト 髙橋京子)
衣装:ダンヒル/リシュモン ジャパン TEL 03-4335-1755
 
 
中山雅史 (なかやま まさし)
1967年生まれ。静岡県出身
藤枝東高校、筑波大学を経て、1990年にヤマハ発動機 (現ジュビロ磐田) に入団。J1歴代最多の157ゴールをマークするなど多くの記録を残した。日本代表では53試合で21得点、ワールドカップは2大会に出場。2012年12月に、惜しまれながら一線から退く。会見では「引退」という言葉は口にしなかった。現在は膝のリハビリに力を注ぎながら、サッカー解説やラジオのコメンテーターを務めるなど多方面で活躍している。
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中山さんがパーソナリティーを務めるラジオ番組 
 
「アメリカンホーム・ダイレクト MAEMUKISM」
 

TOKYO FM JFN38局でオンエア中!

http://www.tfm.co.jp/maemuki

 
 
(この情報は2014年1月1日現在のものです)
 
 
 
 

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