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スペシャルインタビューSPECIAL INTERVIEW


 
プロフィール 1960年大阪府生まれ。精神科医・評論家。国際医療福祉大学大学院教授(臨床心理学専攻)。東京大学医学部を卒業後、東京大学附属病院にて研修。国立水戸病院神経内科および救命救急センターレジデント、東京大学医学部付属病院精神神経科助手、アメリカ・カールメニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在はアンチエイジングとエグゼクティブカウンセリングに特化した『和田秀樹こころと体のクリニック』院長。専門は老年精神医学、精神分析学、集団精神療法学。教育問題や人材開発、大学受験などのフィールドで多数の著書も刊行。映画監督にもチャレンジし、初作品 『受験のシンデレラ』 でモナコ国際映画祭最優秀作品賞を受賞。
 
 
 
「40代に入って意欲が湧かなくなった」 と感じ、うつ病を疑ったあげく、あまつさえ仕事のパフォーマンスまで落としてしまうビジネスパーソンが増えている。そもそもメンタルへルスへの接点も知識も少なく、“働き盛り” と呼ばれて気軽に周囲に相談もしづらいこの世代は、自分の状態を自分でも受け入れられないまま、人知れず悩んでしまうのだ。そんな彼らに、精神医学と臨床心理学の知見から多数の一般著書を刊行し、評論家としても活躍する和田秀樹氏が、問題の理解と解決に向けた考え方を教えてくれる。“40代・男盛り”――その神話が頼りなくなったこの時代を、強く生き抜いていくヒントとは?
 
 

その悩み、どこに属しますか?

 
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 40代の人が仕事のモチベーションが上がらなくなる理由は、大きく三つに分類されます。一つは、うつなど心の病によるもの。もう一つが、生物学的老化に起因するもの。そして最後に、先行き不安から生じる心理的要因によるものです。まずは、自分の状態がそのうちどのタイプに属するかを見極め、適切な方法で対処していく必要があります。
 最初にあげた心の病については、短期間で急に意欲がなくなり、食欲も落ち、眠れないなどの症状がみられた時には、うつ病を疑うべきです。WHOによれば、統計的に人口の3~5%がうつ病とされているくらいですから、うつという病気はもはや特異なものではないというのが世界共通の認識です。このパーセンテージを日本に置きかえるとだいたい400万人の患者がいるはずですが、実際に報告された数は2011年度で100万人を超えた程度です。ようやくこれだけの人数の患者が医者に掛かるようになったということは言えますが、もっともっと予備軍がいるはず。「自分だけおかしくなった」 などと思い詰めるのはナンセンスです。
 そもそも日本のメンタルヘルスは欧米より20年は遅れていましたから、うつの一群が統計的に認知されるようになったことは、メンタルヘルスへの社会的認識がようやく欧米水準に追い付いてきたということでもある。企業も、メンタルヘルスに詳しい産業医や、産業カウンセラーを社内に常駐させるようになっています。先ほど話した自覚症状がある、あるいは明確な症状がなくてもうつが疑われる場合には、躊躇せず医師に診てもらうことです。薬を処方してもらい、カウンセリングを受けたり、診断書を書いてもらってしばらく会社を休むなどすれば回復しますから、必要以上に深刻に考える必要はありません。職場に復帰した後で、あまり責任のある仕事が回ってこなくなる可能性はありますが、雇用法に準じてやっている企業であればそう簡単に解雇されることはありませんから、気を楽に持つと良いでしょうね。 
 
 
 
 

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