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経営者インタビューEXECUTIVE INTERVIEW

“人看る”温かい場所で
笑顔をつなげる訪問看護

 

優しい“ひとみ”で人を見守る“ひとみる”

 
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狩野 屋号の「ひとみる」、とても印象的な名前ですね。
 
中辻󠄀 実は、亡き母の名前が「ひとみ」なんです。その母を在宅で看取った経験が、私の看護観を大きく変えました。母が私に与えてくれたものを地域に還元できるステーションにしたい。だから、「人が人を見る」という意味を込めて「ひとみる」という屋号にしたんです。優しい瞳で見守り、痛みにそっと寄り添うケアを目指しています。
 
狩野 人が人を見る。美しい言葉だと思います。野球の世界でも“人対人”が基本で、信頼関係を築けるチームは強いんですよ。
 
中辻󠄀 同感です。訪問看護は治療の場というより、生活の場でのケアですから、その人の生き方や大切にしていることを引き出し、信頼関係を築くことが大事なんです。家の中にはその人の人生が詰まっているもの。写真や趣味の品を通して会話が広がり、「この先どう生きたいか」を一緒に考えることができます。
 
狩野 病院のような限られた時間や環境では難しい、心の距離の近いコミュニケーションが生まれるんですね。
 
中辻󠄀 ええ。今は、呼吸器をつけていても点滴が必要でも、「帰りたい」と思えば自宅に帰れる時代になりました。私たちはその願いを叶えるお手伝いをしています。「庭に出られて良かった」「ラーメンが食べられて良かった」、そんな小さな喜びを一緒に積み重ねていくのが、在宅ケアの喜びです。利用者様やご家族が充実して過ごせるよう、できる限り寄り添ってサービスを行っています。
 
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狩野 生活の中に入り込んで、その人の人生そのものに寄り添う──まさに“心の看護”という言葉がぴったりです。ところで、私たち一般人からすると、訪問看護は看取りのケアというイメージです。実際はいかがですか?
 
中辻󠄀 リハビリやシャワー介助、食事の相談など、元気なうちから利用される方も多いですよ。訪問看護は、最期を支える仕事ではなく、生きる日々を支える仕事なんです。
 
狩野 それをもっと多くの人に知っていただきたいなあ。私も父を自宅で見送ってあげたかったです。病院でなく慣れた家で過ごすことの価値を多くの人が知ることで、選択肢が広がりますよね。
 
中辻󠄀 ありがとうございます。当ステーションには、医療の専門知識を持つスタッフがそろっていますので、どんな小さな不安にも丁寧に向き合い、心と体の両面から支える温かい看護を目指しています。医療従事者の方々にも、もっと訪問看護の実情を知っていただきたいです。転院だけでなく、訪問看護を使って自宅で過ごすことも、当たり前の選択肢の一つになれば良いと考えています。