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コロナ禍で考える、理想的な組織づくりvol.2 テレワークによるコミュニケーション不足への対応策

ビジネス コロナ禍で考える、理想的な組織づくり vol.2 テレワークによるコミュニケーション不足への対応策 コロナ禍で考える、理想的な組織づくり e-Janネットワークス株式会社 代表取締役 坂本史郎

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新型コロナ感染拡大の影響などで、2020年以降、多くの企業がテレワークを導入してきた。それに伴い、社員間のコミュニケーション不足などの課題も明らかになってきている。テレワークプラットフォームのCACHATTO(カチャット)および関連製品の企画・開発・販売・運営を手がけるe-Janネットワークス株式会社では、コロナ禍以前からテレワークの導入を推進するなど、社員が働きやすい環境づくりに尽力してきた。テレワークを円滑に継続するための対応策や、理想的な組織づくりに必要なことを同社の坂本史郎社長にうかがう、第2回目。
 
 

コロナ禍でテレワーク率が100%に

 
――2018年からテレワークを本格的に推進し始めたということでした。反対意見もあった中で、どのように導入を進めたんですか。
 
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まずは社員全員に「1ヶ月間、最低1回はテレワークをして」と頼んでみたんです。そうしたら、99%がそれをやってくれた。でもその回数は一人につき、1~2回くらいのものだったんです。会社がキャンペーンを始めたので、とりあえずやっておいたというような感じでした。
 
前回もお話ししたように、多くの社員に「仕事は会社でするものだ」という感覚が根付いていたので、なかなかそのスタイルから脱却できないんですね。顔を合わせたほうがコミュニケーションがしやすいですから、出社したほうが効率的だという思いもあったみたいです。
 
それでも、翌年もそのキャンペーンをやってみました。そうすると、少しずつテレワークが定着してきた。さらにその翌年は2020年。コロナ禍の真っただ中ですから、テレワークをせざるを得ない環境になって、そこで一気に定着した感じですね。
 
 
――今日は東京オフィスで取材をしています。社内には数人しか人がいません。
 
何らかの必要がある場合以外は、もはや誰も出社して来ないですよね。「台風の中でも、電車に乗って出社していた時代があったなぁ」なんて笑い話になるほどです。そういう意味では当社においても、コロナ禍がテレワークを広げたというのは事実です。
 
人との接触をなるべく避けなければいけない状態が続いているわけですから、無理もないですよね。ただ、そうした状況が1年半以上も続いている。そうなると、テレワークがスムーズに継続できるような、管理上の問題などをきちんと解消しなければ、会社の運営自体が危うくなってくる。
 
 

在宅でストレスなく仕事をするための支援

 
――実際に、どのような対策を実施したんでしょうか。
 
当社がテレワークの導入率を100%にしたのは、2020年5月のことでした。では、4月は何をしていたかというと、紙ベースで動いている仕事をすべて見直し、データでやりとりできるように環境を変える作業をしていました。
 
部署によっては、紙ベースの仕事があるから出社しなければならないと思い込んでいる社員たちもいました。そういった部署の仕事についても、徹底的に技術開発を進めて、テレワークができる環境を整備したんです。
 
もちろんそれだけでは足りなくて、今度は社員たちが在宅で仕事をするための環境づくりの支援もしました。具体的には、パソコンのモニターやキーボードなど自宅作業に必要な機器を支給して、その他にもテレワーク一時金と称して一人10万円を支給しました。そのお金で、何でもいいから在宅勤務を快適にできるものを購入しなさいと。
 
 

在宅でもコミュニケーションを深めるための工夫

 
こうしてテレワークを進めた結果、ほとんど出社してこなくなったのが技術系の仕事をする社員ですね。どちらかというと自分の世界を大事にする内向的なタイプの人たちで、テレワーク導入後の方がみんなイキイキと仕事をしているような印象がある。社内行事などリアルなコミュニケーションが必要とされるシーンがなくなり、束縛が少なくなったからなんでしょうね。
 
その一方で、人と会ってコミュニケーションを深めることで日々のエネルギーを得ているような社交的な人もいます。そうした人たちは、テレワークが進んだことでメンタル的に落ち込んでしまった人が多いようにも思います。ただ、もともと社交的な人はこちらで何かしなくても、それぞれが声をかけ合ってオンラインで雑談をしたり、たまに日時を合わせて出社したり、ストレスなく楽しめる環境づくりをしている。
 
とは言っても、当人たちに任せきりにするのではなく、会社としても、もちろん何らかの対応は必要です。年間を通じて数えるほどしか出社の機会がない状態で、どのように会社としての一体感を醸成するのか。これはテレワークを導入しているどの企業にとっても大きな課題だと思います。
 
そこで当社がしている対応としては、まずはオンラインでの会議。これはどの企業でもやっていますよね。ただ、これだけではコミュニケーションとしては不足しています。業務上の会議では、社員同士の雑談的な会話をカバーできないからです。
 
この雑談こそが重要です。出社している状況であれば、偶然会った隣の部署の人とも何の不自由もなく会話ができます。しかし、在宅の状態ではそうしたセレンディピティとでも言えるような楽しみを得るのは難しい。
 
では、そういう状況をつくるしかない。そこで当社では、社員の中からランダムに4人を選び、時間を決めて20~30分ほど自由に雑談をする場を設けています。一人当たり、月に2回くらいはこの場に参加してもらうようにしている。
 
仕事だと同じ部署の人ばかりと話すことになってしまうのに対して、抽選でメンバーが決まるので、部署も住んでいる地方もバラバラ。私や経営陣も参加しています。新入社員は月4回参加するシステムです。既存の社員とコミュニケーションを深めて自分のキャラを知ってもらえば、相談もしやすくなりますからね。
 
――コミュニケーションを深める場を会社が用意してあげるわけですね。
 
社内SNSでコミュニケーションを深める
社内SNSでコミュニケーションを深める
ええ。そういう取り組みがすごく大事だと思っているので、業務上のコミュニケーションに加えて雑談の部分も会社として意識的に補えるようにしています。
 
それに役立っているものとして、デイリーレポートという専用システムを使った日報制度があります。これは社内SNSのようなツールで2016年頃からすでに導入していて、全員がそのシステム上で業務報告をする。それだけでなく、このシステムにはFacebookでいう「いいね!」ボタンのような仕組みがあって、何らかの反応ができるようにしてあります。「外出が減ったのでランニングを始めたら痩せた」というような些細なことも書いてもらって、コミュニケーションを深めているんです。
 
さらに、リアルタイムのコミュニケーションというよりも、安否確認のような役割も持っていて、自分の報告に対して上司や同僚が何らかのメンションをしてもらうことで、自分を「見てくれている人がいる」というような、小さなつながりを感じてもらう効果がありますね。

 
――次回も引き続き、テレワークにおけるコミュニケーション不足を補う対策についてうかがいます。
 
~vol.3に続く~
 
コロナ禍で考える、理想的な組織づくり
vol.2 テレワークによるコミュニケーション不足への対応策
 
(取材:2021年10月)

 プロフィール  

坂本 史郎 Sakamoto shiro

e-Janネットワークス株式会社 代表取締役

 経 歴  

1962年東京都生まれ。早稲田大学理工学部機械工学科を卒業後、東レ(株)に入社。1995年にバージニア大学ダーデン校でMBAを取得した。2000年に独立して(株)いい・ジャンネットを設立。2001年にe₋Janネットワークス(株)に社名変更。2011年、「日本創生ビレッジビジネスコンテストEGG JAPAN Innovation Cruiser」 で同社の提供するCACHATTOが「Global賞」を受賞した。2019年にスムーズビズ推進賞受賞・テレワーク先駆者百選に選定される。創業以来、社員が働きやすい労働環境の整備に尽力し続け、2006年以降、黒字を続ける経営を続けている。

 e-Janネットワークス株式会社公式サイト 

https://www.e-jan.co.jp/

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