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能登半島地震の発災を受けて、防災専門家が諸注意を解説 第7回(最終回) ボランティアや民間活力のあり方

ノウハウ 能登半島地震の発災を受けて、防災専門家が諸注意を解説 第7回(最終回) ボランティアや民間活力のあり方 能登半島地震の発災を受けて、防災専門家が諸注意を解説 防災・危機管理アドバイザー、 医学博士

ノウハウ
2024年1月1日に能登半島地震が発生。同地域で中小企業や個人事業主として会社を運営する経営者の中には、避難所で避難生活を送っている方もいるだろう。また、組織としてボランティア活動に乗り出している会社もあるかもしれない。そうした中、被災地ではどのような支援が必要で、被災者はどんな注意をするべきなのか。防災専門家で元熊本大学大学院自然科学研究科附属減災型社会システム実践研究教育センター特任准教授の古本尚樹氏が、熊本地震や東日本大震災被災地・被災者調査を踏まえて留意点などを解説。最終回は、ボランティアや民間活力のあり方について。
 
 

災害弱者の支援に関するボランティアへのニーズが高い

 
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発災から1ヶ月を迎えたあたりで、被災者個人向けのボランティア受け入れの動きが出てきた。被災地で活動するにあたり、現地で滞在するのに安全が担保されないと、受け入れは難しい。また被災地へ赴くのに道路や鉄道等が利用できるようになることも不可欠である。
 
内閣府の出した情報(記事末参考文献参照)では、実際に被災地で行われてきた活動の例が挙げられている。具体的には、炊き出し、洗濯など避難所での手伝い、被災者の会話相手や子どもの遊び相手になる、託児やペットの世話の代行、FM放送・ニュースレター・ミニコミ誌など暮らしに必要な情報の提供支援、家の片づけ、水害の場合の泥出し、買い物・家事手伝い・家庭教師など暮らしのお手伝い、配食サービス、生活物資等の訪問配布、被災者が元気になれる交流機会づくり、イベント開催、暮らしの再建のための専門家の相談会・勉強会、復興期における地域お越しのお手伝いなど――。
 
今回の能登半島地震では、液状化による影響の大きい地域があるので、水害時の泥出しのような作業、また家屋への被害も大きいので、自宅で不要になった家財の運び出しなどにも需要はあるだろう。
 
また、在宅避難をしていたり、自主避難所を開設したりしている被災者がかなり多いと思われる。これらは表面上数字に表れてこないことが多く、自力でなんとかしなくてならない被災者である。こうした被災者へ物資の搬送にもボランティアがかなり貢献できると思う。特に厳寒期に必要となる燃料等は重量があるし、降雪も多い地域なので、高齢者のように自力での運搬や除雪が困難な被災者にとっては、ボランティアの存在はありがたい。買い物の付き添いやその代行なども重要があるだろう。今回のボランティアへのニーズは、災害弱者の支援に関することが多いことが予想できる。
 
 

被災者の健康とボランティアの相関性

 
著者は熊本地震の被災地で、被災者の生活に関する調査を行っているが、ボランティアと被災者の健康には相関性がある。すなわち、被災者の支援にボランティアが関われるか、もっと言えば被災者のニーズに適した作業ができるかが、被災者の健康に影響していたのだ。よって、今回の能登半島地震においても、各被災地でどのような問題が生じているのか内容を精査したうえで、対応することが重要だ。
 
最近では企業単位や、積極的にボランティア休暇を推進する企業等も増えた。ボランティアに参加する場合は各自、被災地に負担をかけない心構えを持って臨んでほしい。具体的には、往復の交通費の負担や宿泊先確保に加え、水・食料・薬・着替え・ボランティア保険の加入などの備えを行い、“自己完結”で被災地に入ることだ。
 
そして被災者への心配りを忘れてはならない。被災地の環境や被災者の立場もさまざま。不用意な発言、また、自分の経験による判断を押し付けることなく、被災者の気持ちや立場に配慮した支援を心がけること(参考文献①より)が肝要になる。ただし、無理はしないこと。冬場は寒さ対策と防寒靴や凍結路面で転倒しないような、いわゆる冬靴を用意することが必要だし、真夏は水分の補給や休憩をとることの重要性が必ず指摘される。現地では、宿泊施設も断水が続いているところが多い。そのため、水への備えは必須だろう。
 
 

被災地には“民”の支援が欠かせない

 
災害時のボランティア活動が注目され、今日の原点となったのは1995年の阪神・淡路大震災である。あの時も発災したのは1月の真冬だった。まだ、ボランティア活動が確立されていない中で、さまざまな人々が個人レベルで支援に動いた。当時は混乱の中で、指示されることを行い、それがオンザジョブトレーニングとなって、だんだん作業効率が上がっていく形だった。
 
それから約30年経ち、これまでの事例の積み重ねもあり、ボランティア自体が組織立って、希望者への教育や知見を伝承するなどしてきた結果、大きな“力”として形になってきたといえる。最近の災害では、ボランティアへ被災者から感謝の気持ちは高いのが特徴だ。
 
従来は自治体など“官”による支援が主導だったが、今やボランティアなど“民”の支援は欠かせないものになっている。“官”のマンパワーを補うだけではない。行政サイドではできないような、被災者の細かい困りごとに対応できることが大きい。換言すれば、行政サービスではないが、被災者にとっては欠かせない内容について、ボランティアが支えているのだ。
 
特に自力ではどうにもならない、復旧期の活動ではボランティアの貢献は大きい。ある程度の人数をまとめて投入してもらえるので、仕事量が多くても実行できる。能登半島地震では孤立集略も多く存在し、人口減少している地域も多い。こうした地域に多くのボランティアが入ることは、その社会そのものに勇気や活力を与えるだろう。
 
ボランティアは経験値が大きくものを言う。経験を重ねるごとにスキルが上がり、最大限の効果をもたらす。活動全体を統率してくれるリーダーはこうした経験を積んでいる。多くの参加により次世代へ、人材育成がつながるような活動が継続されるよう期待される。
 
特集ボランティア 内閣府
https://www.bousai.go.jp/kohou/kouhoubousai/h22/01/special_01.html
 
能登半島地震の発災を受けて、防災専門家が解説
第7回(最終回)ボランティアや民間活力のあり方
(2024.4.17)

 プロフィール  

古本 尚樹 Furumoto Naoki

防災専門家
元熊本大学大学院自然科学研究科附属減災型社会システム実践研究教育センター特任准教授

 学 歴  

・北海道大学教育学部教育学科教育計画専攻卒業
・北海道大学大学院教育学研究科教育福祉専攻修士課程修了
・北海道大学大学院医学研究科社会医学専攻地域家庭医療学講座プライマリ・ケア医学分野(医療システム学)博士課程修了(博士【医学】)
・東京大学大学院医学系研究科外科学専攻救急医学分野医学博士課程中退

 職 歴  

・浜松医科大学医学部医学科地域医療学講座特任助教(2008~2010)
・東京大学医学部附属病院救急部特任研究員(2012~2013)
・公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センター研究部 主任研究員(2013~2016)
・熊本大学大学院自然科学研究科附属減災型社会システム 実践研究教育センター特任准教授(2016~2017)
・公益財団法人 地震予知総合研究振興会東濃地震科学研究所主任研究員(2018~2020)
・(現職)株式会社日本防災研究センター(2023~)

専門分野:防災、BCP(業務継続計画)、被災者、避難行動、災害医療、新型コロナ等感染症対策、地域医療
※キーワード:防災や災害対応、被災者の健康、災害医療、地域医療

 

 個人ホームページ 

https://naokino.jimdofree.com/

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