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スペシャルインタビューSPECIAL INTERVIEW

 
2007年に宝塚音楽学校に入学し、2017年まで宝塚歌劇団で過ごした実咲さん。実咲さんにとって、同期とはどういった存在なのだろうか。
 
 

家族がいるのが心強い

 
私にとって同期生は家族と同じです。45人家族なんですよ(笑)。宝塚音楽学校と聞くと、規則が厳しい印象があるかと思います。実際に入学したときは、カルチャーショックを感じる部分もありました。そんな中で、共に過ごし支え合ってきたんです。お互いの性格もすべてわかり合っていると感じますね。
 
ありがたいことに、私たち95期生は「華の95期」と言っていただくことがあります。でも、宝塚音楽学校時代は、みなさんに「95期という集団ではなく、それぞれにもっと突出したところがあって良いんじゃないか」と心配されていたくらいなんですよ。だから「華の95期」と言っていただけるようになるとは想像もしていませんでした。そう呼んでくださる方々に感謝の念が尽きませんね。
 
宝塚歌劇団を退団し、東京で活動する中で今回のように同期生と一緒に仕事ができるのは本当に嬉しいです。それに、45人の家族がそれぞれいろんな場所で頑張っているので、心強いんですよ。宝塚でも現役で活躍している人もたくさんいますからね。いつも「家族が頑張っております!」と勇気をもらっています。
 
私はもともと昔からの宝塚のファンだったわけではないんです。進路について考える中で、たまたま母に「宝塚音楽学校はどう?」と聞かれたのが受験のきっかけでした。それまでは観劇したこともなくて(笑)。タカラジェンヌの中では珍しいタイプだと思います。
 
きっかけはたまたまだったものの、宝塚の道に進んで本当に良かったと思っています。家族のように思える同期生に出会えましたしね。それに、私は3歳からクラシックバレエを習っていまして。ピアノも長く続けていました。そういった自分が積み上げてきたことを活かせるのが嬉しかったですね。宝塚音楽学校では日本舞踊や茶道、モダンダンスなどさまざまな芸事を学びます。それがすごく楽しくて、その気持ちのまま突き進んだ感覚です。
 
 
「楽しい」という気持ちで突き進んできたという実咲さん。宝塚歌劇団での活動を「仕事」と捉えるようになったのはいつ頃なのかお聞きすると、「宝塚は環境が特殊なので難しいんですよ」と話してくれた。
 
 

立場に責任を感じるようになった

 
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宝塚音楽学校の生徒は、学校で2年間学んだ後、自動的に宝塚歌劇団に入団します。好きなことを学び続けていたら、いつの間にかそれが仕事になっているんです。だから、入団当初はなかなか“仕事”という感覚にはなりませんでした。「楽しいし、かわいい衣装が着られるし」と思っていましたね(笑)。もちろん体力面など大変なこともたくさんあります。それでも舞台に立ってお客様に拍手をいただけることが本当に嬉しくて。ただただ楽しいという気持ちが強かったです。
 
その意識が変わったきっかけは、2年目に新人公演でヒロインの役をいただいたことでしょうか。お客様はもちろん、宝塚の人たちにも「実咲凜音がヒロインで良かった」「こんなこともできるんだね」と言ってもらいたいと思うようになったんです。「ダメなお芝居をするわけにはいかない」という責任を感じるようにもなりましたね。舞台上のことだけでなく、人との接し方に対する意識も変わっていったように思います。ヒロイン役を務めるに足る存在でなければいけないと感じていました。
 
トップ娘役に就任したときはもっと大変でしたね。組の顔という責任がありますから。自分では足りないと感じる部分が多々ありましたし、入団4年目でトップ娘役になったこともあり、経験も少ないと感じていました。なんとか階段を一段ずつ上がっていく感覚でしたね。
 
最後まで自分の歌や演技に対し「これがベストだ」と思えたことはありません。私はもともと、満足したらそこで成長が止まってしまうと考えていまして。トップ娘役に就任したときから、常に退団のことを意識して、退団公演で自分のベストを見せられるように励んでいました。宝塚は同じ組のメンバーで、次の公演に向かって一緒に努力できる環境です。より良いものにしようと挑戦できる場がずっとある。そういった環境がとてもありがたかったですね。