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スペシャルインタビューSPECIAL INTERVIEW

 
舞台やテレビドラマ、映画と新しい現場に入るたびに、新たな共演者や、スタッフとの出会いもあるはず。そういった場でのコミュニケーションの深め方についてうかがうと、「そんなに意識しなくていいんじゃないか」という答えが返ってきた。コミュニケーションは、自然と取れるものだという。
 
 

新しい環境に必要な心構え

 
コミュニケーションを密に取らなきゃいけないって考えたことは、あまりないですね。20代の頃なんて、当時の共演者に悩みを相談されて「お前が何に悩んでいるかなんて興味がない!」って言ってしまったくらい(笑)。今は当時ほど頑なな考え方ではないけど、共演者という立場上、その作品について、役について、セリフについて語り合えるくらいでいいのかなぁと思います。それに、コミュニケーション自体は芝居の稽古を通して自然と取れるものですからね。
 
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新しいドラマや映画の撮影が始まるときは、未だに緊張しますよ。初日からすごく長いセリフがあったり、重要なシーンの撮影があったりすると、特に緊張します。いろんな現場がありますけど、どんな現場でも最初に行うのは、自分に何が求められているのか理解すること。僕はよく物事をスポーツに例えるのですが、「今回はフォワードかなぁ」とか「ピッチャーの役割かな」と考えるんです。勘を頼りにしてみたり、空気を読んでみたり、監督の顔色をうかがったり。いろいろと試行錯誤していますよ。
 
もし、僕から新しい環境でのコミュニケーションについてアドバイスするとしたら、「とりあえず気合を入れる」ということ。周りの人に対して気を遣う必要のある現場かもしれないし、職場の方々に挨拶をして回らないといけないかもしれない。そういったシミュレーションをしたうえで気合を入れていれば、その職場の雰囲気に合わせて「ちょっと力を抜いたほうがいいかな」と調整できるじゃないですか。
 
逆に何も考えず、心の準備をしないままで行くと「準備してこなかったのか」と言われたときに困ってしまう。「今からしてきます」と言うわけにもいかないですよね。そういった意味で、心の準備をして、気合を入れていくことが大事なのかなと思っています。
 
 
これまでに様々な役柄を演じてきた仲村さん。自身の考え方と全く違う役柄が決まったときなどは、感情を入れて演じるのが難しくないのだろうか。仲村流の、役づくりについて教えてもらった。
 
 

その役の考え方を理解する

 
人を殺めた犯罪者の役をやることもあります。もちろん、僕の価値観と役の人物の価値観は異なりますよ。でも、「なぜ彼は人を殺してしまったのか?」と聞かれたときに、その動機を説明してあげられるようになっておこうという努力をするんです。その役の人物の考え方を理解して、行動一つひとつの理由を説明できるようになろうと思って取り組みます。
 
ただ、実際の自分が何か行動を起こしたときの考えを全て説明できるかと言われたら、できないんですよね。「なんとなく、そうかなと思ったから」ということが多くある(笑)。だから、演じる役の考え全てを明確に説明できるのは、実はそんなにリアルじゃないんです。でも、自分のこと以上に、その役のことを説明できるようにと考えてはいますよ。そうすることで、価値観が合わない役柄であっても、演じられるんだと思います。
 
もちろん、その時々の現場によって、準備の仕方は違います。演じる役について膨大な資料を用意して役者に渡す脚本家もいれば、「何も考えないで、セリフに抑揚もつけないでください」という監督もいる。どういった要求であっても、一緒に良い作品をつくりたいと思った方の言うことですから、求められているものを、求められている形でお渡しするように努めるだけです。