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スペシャルインタビューSPECIAL INTERVIEW


 
プロフィール 1974年、兵庫県神戸市出身。京都大学(環境経済学専攻)在学中にITベンチャーを起業し、卒業後はマッキンゼー&カンパニーに就職。2年間の勤務を経て退職し、2000年5月30日(ゴミゼロの日)に(株)リサイクルワンを設立。以来、資源廃棄物の電子取引市場(国内初)の開設、企業への環境対策支援サービスや行政へのシンクタンク事業などの活動を通じ、環境問題への取り組みという角度から廃棄物処理業界に新風を吹き込む。2006年には(株)エコスファクトリーと(株)グリーンループの二社により容器包装リサイクル業に進出。カーボンオフセットに関しては英国カーボンニュートラル社と提携し国内トップの導入実績を誇り、環境関連業界のフロントランナーとして注目を集めている。
 
 
鳩山首相が国連でCO2排出量25%削減を宣言し、世界最大のCO2排出国の一つであるアメリカではオバマ大統領が関連政策の見直しを進めている。そして昨2009年末のCOP15は、各国の数値目標の採択が来年に持ち越されるという、限りなく進展の薄い事態に終わった。環境問題を取り巻く状況が大きく変わろうとするなか、今回B-plus編集部が訪れたのは、株式会社リサイクルワン。廃棄物・リサイクル資源の電子取引市場を国内で初めて開設し、環境対策支援の各種コンサルティングやリサイクル業の運営、関連省庁に向けたシンクタンク的な役割など、環境関連業界で際立った活躍を見せる企業である。いま、日本の企業と消費者は環境と経済について何を考え、実行すればいいのだろうか――。木南陽介社長に、お話をうかがった。
 

「ゴミゼロの日」からの3ステージ 

 
――鳩山政権の25%宣言以降、各企業が環境関連の取り組みを模索しています。そこで今日は、資源リサイクル業界のフロントランナーの木南社長に、取り組みや発想のヒントをお聞かせいただければと思います。まずは御社の成り立ちからご紹介ください。
 
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 私がリサイクルワンを設立したのは2000年の5月30日、「ゴミゼロの日」 です。その1ヶ月半前から現取締役の辻本と事業モデルづくりを始めていまして、5月15日付けで前職のマッキンゼーを退職して、二人で始めました。
 会社を始めたのは、いろいろな条件が整ってのことです。まず、環境のマーケットが2000年前後からかなり変わりました。97年に京都議定書が発行し、2000年にいわゆるリサイクル法 (資源有効利用促進法) が改正され、基本法 (循環型社会形成推進基本法)、家電リサイクル法、容器包装リサイクル法など関連法の改正が相次いだ。日本が国として循環型社会に舵を切ったことがハッキリ見えて、これから世の中が激的に変わるな、という実感があったんですね。
 またベンチャー支援の土台もできてきて、起業はしやすくなった。ベンチャーキャピタルが増えて資本調達がしやすくなった。ただ、リサイクル事業の舞台は工場とかトラックの世界です。プラントに廃棄物を持ちこんで、分別して、使えるものは再生して、使えないものは埋め立てるか焼却処分にする。やっぱり 「工場」 なんですよ。過程が製造業と逆向きなだけであってね。つまり始めるには資本が必要なんです。プラントの立ち上げには、最低でも数億~10億円必要です。
 でも、社会人2~3年目の青年がそんな資本を用立てられるはずもない。事業環境がいい一方でそういった縛りもあったわけで、必然的に電子取引市場などの情報サービス業から始めました。リサイクルワンが業界の情報中枢になって世に出回りにくい情報を集め、会員登録をしていただいた廃棄物排出企業と再生・処理業者の皆さまに情報を提供し、双方に向けてマッチングやコンサルティングのビジネスを展開する。それが初期のアプローチでした。
 
 
――現在、リサイクルワンの会員ネットワークは2600社に達しているそうですね。
 
 はい。しかし今は会員フィーなどを収益の主軸とするつもりはないんですよ。登録料も取っていません。価値のある情報を集めればたくさん企業が集まり、集積効果で情報の価値が上がり、それによってさらに付加価値の高いコンサルビジネスを展開できるようになる。この動きを起こすことのほうが、ネットワークの本来の有効活用の仕方というか、世の中の役に立つことにつながります。
 情報サービス業が第一ステージだとしたら、コンサル業は第二ステージ。そして第三ステージの今は、ネットワークの顧客企業と協業で実際に資源廃棄物のリサイクル事業を運営しています。1年半前からプラスチック容器のリサイクル工場を二つ稼動させまして〔編集部注:(株)エコスファクトリーと(株)グリーンループ〕、やっと黒字転換を果たしたところです。情報サービス業が1とすれば、コンサルなどのサービス業の市場は10あると見ています。リサイクル事業の市場は1000位あります。規模感は全く違うんです。事業運営は非常に奥深い、魅力的なマーケットなんですよ。
 それに、やはり実際にリサイクル業を運営していくことのほうが社会的意義も大きいですからね。いま稼動中の2社で約300万人ぶんの家庭のプラスチック廃棄物をリサイクルしていますが、300万人の人間が消費した石油資源製品をリサイクルすることの意義は、社会的に見ても大きいかと思っています。
 
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埼玉県本庄市のエコスファクトリー社工場。

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エコスファクトリー社工場内。最新鋭の設備が並ぶ。

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静岡県菊川市にある、グリーンループ社工場。

 
 

ReCycleの核心はReNew

 
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――市場の展開余地が大きいということで、300万が3000万になり、1億になり・・・ やがて1億3000万人になれば日本の人口に迫りますね。そのような発想で、いずれ日本の資源廃棄物に関してはリサイクルワンが全部面倒を見たいというお気持ちもありますでしょうか。
 
 いやいや、そこまではありません。まだまだ市場を独占できるような規模の事業者はなく、大手と言っても市場シェアは数%程度です。また、リサイクル業界には競争があってしかるべきなんですよ。1社で独占的にというのは違うと思います。1トンの廃棄物のリサイクルをただ積み上げていくだけでは、進化がありません。毎年新しい技術を導入して負担を減らして、つまりリサイクルの効率を高めることのほうが重要なのではないか。たとえば1トンあたりに10万円の処理費がかかっているとしたら、これはなるべく早く8万円に下げたほうがいいですよね。さらに6、4・・・ そうやって非常に安い単価でできるようになれば、そのほうがいいはずです。単に規模を広げるより、中の効率を上げることのほうを目指すべきでしょうね。そのために、再生品の品質を上げて価値 (価格) を上げる。そちらの努力も大切です。
 
 
 

 

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