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経営者インタビューEXECUTIVE INTERVIEW

生態学や土壌学を駆使し
自然環境調査で社会貢献

 

信頼されリサイクル社会に提言を与える

 
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用語解説などを担当した共著本もある
石黒 森さんのお仕事は土の状態だけでなく、植物の生態や環境問題などの知識が要求されますよね。学生時代からそれらの分野を研究していたんですか?
 
 はい。生物学の中の生態学という分野をやっていたのですが、これは生物と環境とか、生物どうしとか、何かと何かの関係を研究するのです。大学の授業で 「風が吹けば桶屋が儲かる」 式に、因果関係の連鎖をどんどん辿っていくことを教わりましたからね。そして、その教授から 「君は大きな会社よりも小さな会社に向いてそうだから」 と土壌調査の会社を紹介され、6年半、会社員として勤めました。
 
石黒 独立の際、ご自分でお仕事の案件を探すことに不安はありませんでした?
 
 もともと、調査会社の仕事は、会社に依頼が来るというよりも個別の担当者に話が来る意味合いが強いので、会社員時代にお世話になった人から、「今後も頼むよ」 と言ってもらうこともあって、何とかなりました。顧客は決して多くないですが、継続的に仕事をくださる場合も多くて、今まで20年あまり続けてこられました。
 
石黒 そんなふうに仕事の依頼が舞い込むのは、信頼される仕事をしてきたからこそですね。今までに強い思い入れを感じた案件がありましたら、教えてください。
 
 下水汚泥を炭化させて、リサイクルする方法を検討したことがあります。炭化処理すると多孔質の炭ができて、土に添加すると、養分を吸着して保持したり、水捌けの改善に役立ったりします。廃棄物リサイクルに際して、利用者側のニーズを処理工程に反映させるような提言を行い、当時としては意味のある仕事だったと思っています。
 
石黒 ゴミを役立つ物に変えられるなんて、素晴らしいと思います!
 
 こういうことを自分なりに考えるきっかけとなったのは、会社員時代の最後の頃、東京都公園協会から依頼された仕事です。街路樹などの剪定された枝を堆肥化してリサイクルするのがテーマだったのですが、堆肥ができればいいというものではないのですね。堆肥をつくっていくことはできるけど、それを使ってくれる人がどこにいるのか、という問題に直面します。世の中のニーズに合ったことをしないと、リサイクルと言いながら、サイクルが回っていかないわけです。
 
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石黒 技術が確立しただけじゃダメなんだ・・・。商品を開発できても需要がなかったり、そもそも循環しないような物では意味がないし。奥が深いんだな。そうすると、独りよがりにならない姿勢が大事ですね。
 
 ですから、材料を処理して 「製品化したい側」 と 「使う側」 の人たちの橋渡しまですることを心がけています。「使う側」 のニーズを正しくつかんで、処理工程に反映させることも重要です。そのためには、狭い専門に閉じこもらないで、必要な情報を集めて理解しなければなりません。農家を回って要望をうかがったり、アンケート調査をすることもあります。良い意味で 「見境なく」 越境する人間が必要なのではないかと思っているのです。これは、「風が吹けば桶屋が儲かる」 式に因果関係を辿っていくことの延長でもあります。