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スペシャルインタビューSPECIAL INTERVIEW

 
 
さまざまなアスリートの経験や持論を聞くことには新たな発見があって、学ぶことも多いと刺激を受けている高橋さん。そうした知見や自身の経験を若い世代に伝える機会はあるのだろうか。
 

日々の仕事を、充実感をもって終えるのが理想

 
若い世代のランナーたちにアドバイスをする機会はもちろんあります。でも、それは継続的なものではなくて、単発のものが多いです。ただ、その1回限りのご縁が後につながることもあるんです。例えば、中学校の生徒さんを対象にしたランニングクリニックをこれまでにも全国のさまざまな地域で行ってきました。その中で、当時は知らなかったんですけど、2022年の世界陸上の女子マラソンで活躍することになる、松田瑞生さんが中学生のときにそのクリニックに参加してくれていて、私がそのときに伝えたトレーニング方法を取り入れていたそうなんです。
 
何年も後に、テレビ番組の仕事で彼女に会って話を聞く機会があったときに、「当時教えてもらったトレーニングを今でもしています」と言ってくれました。そうやって、過去にクリニックに参加した人が、今は日本を代表する選手として活躍してくれているのは、とても嬉しいです。
 
現役を引退してからは、いろんな仕事を通じてさまざまな景色を見させてもらっています。その日々の仕事の中で目指しているのは現役時代と同じで、目標の7~8割を日々達成し、納得して充実感を持って終わることが理想です。自分が納得できるように取り組んで、そのうえで少しずつ評価を高めていきたいですね。
 
 
現役を退いてからも、走ることはやめていないという高橋さん。話を聞いているだけでも、走ることそのものが好きでたまらないという気持ちが伝わってきた。
 

走ることが人生の楽しみ!

 
やっぱり昔から走ることが単純に楽しいと思って続けてきたので、今もその部分は変わらないですね。現役時代も「とても楽しい42.195kmでした」と答えたこともあります。もちろん、小出義雄監督のトレーニングは過酷でしたし、今思い出しても恐ろしくなります(笑)。でも、お金をいただいているわけですから、それに見合う結果をきちんと出さなければいけない。そういう意味では仕事としてのランニングでもありました。
 
ただ、そのトレーニング後には自分の好きなことのできる時間として毎日1時間程、小出監督と一緒に走っていたんです。そのランニングでは、いい景色が見られたら足を止めて歩くこともあるし、きれいな花が咲いていたら立ち止まることもありました。そうやって、決まりごとがない中で、今まで走ったことのない道を探検するように進んでいくのが当たり前の日課としてあったんです。
 
その時間は陸上を始めた頃の、ワクワクするような気持ちで走れたので、原点回帰のひと時になっていたと思います。そして、そういう時間があったから結局は、「今日も楽しかったな」と毎日を終えられていました。今はこうしていろいろな仕事をしてますけど、ランニングをやめることはないでしょうね。自由に走る習慣そのものが、私の人生の大きな楽しみなんです。
 
 
(インタビュー・文 佐藤学/写真 Nori/ヘアメイク 小森真樹)
 
 
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高橋尚子 (たかはし なおこ)
1972年生まれ 岐阜県出身
 
中学時代に陸上競技をスタート。県立岐阜商業高校大阪学院大を経て、実業団へ。1997年1月、大阪国際女子マラソンでデビューし、1998年アジア競技大会で金メダルを獲得。2000年のシドニー五輪では日本人女子マラソン初となる金メダルを獲得した。同年10月に国民栄誉賞受賞。2001年のベルリンマラソンでは、当時の世界最高記録を更新している。 2008年に現役を引退。現在はテレビ番組や陸上競技大会の解説、ニュース番組などでキャスターとして活躍するほか、公益財団法人日本陸上競技連盟や公益財団法人日本オリンピック委員会で理事を務めるなど、多方面で活動している。

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(取材:2022年12月)