食とアートを軸に甦った
大谷町のランドマーク
大谷グランド・センター
◆大谷石の産地に再生した
新たな賑わいの拠点に注目
ミソと呼ばれる斑点が特徴的な大谷石
30年以上、沈黙を守っていた旧山本園大谷グランドセンター
栃木県宇都宮市で産出される「大谷石」という石をご存じでしょうか? 建築材として石塀などに使用されているので、気付かないうちに目にしたことがあるかもしれませんね。火山灰が堆積して生まれた大谷石は、軽く加工しやすいという特性から、江戸時代より採掘が続けられ、宇都宮を代表する特産品として人々の暮らしや建築文化を支えてきました。
その大谷石の産地である大谷町に、かつて時代を象徴する観光施設が存在していました。1967年に誕生した旧「山本園大谷グランドセンター」は、大谷石を活かしたユニークな建物に、食事処や大浴場を備え、多くの観光客が訪れる宇都宮屈指の人気スポットとして賑わいを見せていたのだとか。しかし、時代の流れとともに施設は閉業。以降30年以上にわたって建物は静かに佇み続け、地域にとって“記憶の風景”とも言える存在となっていたのです。
そんな長い沈黙を破り、2026年1月、かつての山本園大谷グランドセンターは、アートと食を軸に再生された複合施設「大谷グランド・センター」として、再びこの地に新しい灯りをともしました。令和の世に、この地域資源がどのように受け継がれ、更新されていくのか。生まれ変わった大谷町のランドマークに注目してみましょう。
◆岩山の風景と呼応する
アートが導く新体験
自然豊かなテラス。館内にあった大谷石に新たな命を吹き込んだ
まるで地形の一部かのように、ダイナミックな岩山に抱かれて建つ、大谷グランド・センター。豊かな植物に囲まれ、人工物と自然の境界が曖昧に感じられるロケーションは、大谷町ならではの風景であり、施設の再生プロジェクトの出発点でもあったと言います。
目指したのは、建物を新しくすることではなく、土地が持つ記憶や景観を尊重し、現代の価値観で再編成すること。もともとさまざまな形で館内に点在していた大谷石を極力活かし、解体せざるを得なかった大谷石は、テラスでベンチやテーブルとして利用できるよう整備されました。間近に感じる岩肌や自然光、通り抜ける風――唯一無二の条件を制約ではなく強みに変え、施設全体が“体験の場”として構想されています。
その象徴とも言えるのが、かつて浴場だったと思われる、館内1階に設けられたアートスペースです。常設展示を手がけるのは、多様な媒体を通じて自然や歴史といった要素をアート作品にし、ラグジュアリーブランドとのコラボレーションでも注目を集めるアーティスト、YOSHIROTTEN氏。フィールドリサーチを重ね、岩肌や石の質感、採掘の痕跡から着想を得て制作されたという作品群は、音や映像を用いたインスタレーションとして、屋内外が緩やかにつながった空間に溶け込みます。岩と建築、その間に生まれる余白そのものが表現の舞台であり、展示の一部として機能しているとあって、時間や季節、天候によっても違った表情を見せてくれることでしょう。このほか、企画展示エリアでは時期ごとに異なる表現が展開される予定。風景とアートが呼応し続けることで、“訪れるたびに更新される場所”として新たな時間を刻み始めた大谷グランド・センターから、目が離せません。
建物の記憶を大切にリノベーション
季節の風景に溶け込む展示作品
大浴場だった名残を感じる空間
◆ローカルガストロノミーで
五感を刺激する食体験を提供
屋内にいながら自然との一体感を感じられるフードスペース
大谷グランド・センターが掲げるもう一つのテーマが、“食”。館内2階には、広々としたフードスペースが広がっています。ここでは、栃木出身の2人のシェフ、イタリアンの人気店「LIFE」のオーナーシェフ・相場正一郎氏と、果物スイーツの第一人者としても名高い「メゾンジブレー」オーナーパティシエの江森宏之氏によるタッグが実現し、地元・栃木の素材を活かしたクリエイティブな料理とスイーツが、訪れる人の五感を刺激! アートと同じように、場所と人とをつなぐ体験として“食”を楽しむことができます。
ランチタイムには、ピザやパスタ、タルティーヌなど、心もお腹も満たしてくれるプレート料理がおすすめ。パティスリーの色鮮やかなスイーツは、イートインはもちろん、テイクアウトも可能です。2人のシェフが、それぞれの立場で大谷の食材と向き合いながら生み出した、自由でありながら土地に根ざした“ローカルガストロノミー”の世界を、ぜひ味わってみてください。
栃木産の野菜やハーブを使用した色鮮やかなタルティーヌ
パスタのほか、東京代々木店で大人気のピザなども
絶景を前に、贅沢に旬のフルーツを使ったスイーツを
定番のロールケーキなどもそろい、テイクアウトも可能
太古からこの地で人の営みに寄り添い、歴史を刻んできた大谷石。そうした場所の記憶と今をつなぐ大谷町の新しいランドマーク、大谷グランド・センターを訪れることで得られる時間の密度の濃さが、この地に再び賑わいをもたらす原動力になりつつあります。
大谷グランド・センター
https://oya-grand-center.com/
〒321-0345 栃木県宇都宮市大谷町1396-29
TEL 028-688-8830
営業 10時〜17時
定休日 火・水曜(年末年始等、臨時休業あり)
※ArtStickerではグランドパスをお得にご購入可能
https://artsticker.app/events/103689