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コロナ禍を教訓に、経営者のリスク対策・BCP(業務継続計画)はどうあるべきか 第3回 経営者に求められるリスクマネジメント

ノウハウ コロナ禍を教訓に、経営者のリスク対策・BCP(業務継続計画)はどうあるべきか 第3回 経営者に求められるリスクマネジメント コロナ禍を教訓に、経営者のリスク対策・BCP(業務継続計画)はどうあるべきか 防災・危機管理アドバイザー、 医学博士

ノウハウ
新型コロナウイルス感染症への対策が5類に移行された中で、今も変異株が蔓延している。それを踏まえて各企業は、完成症対策を含め、従業員や経営へのリスクマネジメントをアップデートしていく必要がある。経営者はコロナ禍から何を学び、今後どう生かすべきか。コロナ禍による企業への影響と、今後の対策について株式会社日本防災研究センター所属、防災・危機管理アドバイザーで医学博士でもある古本尚樹氏による寄稿記事の、連載第3回目。
 
 

緊急事態への備えが不十分な中小企業が多い

 
企業におけるリスクマネジメントは多岐にわたる。地震や台風、火災などの災害による影響、景気や為替、金利等の変動、コンプライアンス、不注意や過失により法的責任が生じるケースなどへの対応。また、事業の中断や、施設閉鎖等で売上減少などによる倒産の危機に備える必要もあるし、社内でのハラスメント問題などへの対策を講じておくことも欠かせない。
 
備えておくべきことは、経営そのものだけではない。協力各社や従業員、そして従業員への家族への配慮もできているかどうか。会社に関わるあらゆるものに関して、安心・安全への意識を張り巡らせ、対策を講じておく必要があるのだ。
 
リスクマネジメントの必要性@中小企業庁
リスクマネジメントの必要性@中小企業庁
しかし、図が示すように、大企業に比べると中小企業では、リスクマネジメント専門の担当者を置いているところは少ない。そもそも、約4割の中小企業が担当部署を有していないのが現状だ。つまり、万が一の緊急事態への備えが不十分な中小企業が多いということになる。
 
このように備えが不十分なままで、新型コロナ感染拡大のような長期にわたるリスクが発生すると、企業が深刻なダメージを受けることは周知のとおりだ。
 
 

BCPを策定しアップデートを続ける

 
想定外の事態が発生すると、経営者は混乱してしまうかもしれない。だからこそ、事前に組織のあり方を見直してBCPを策定し、そのうえで従業員の意識高揚を図るべきだ。また、策定されたBCPはアップデートを継続する必要もある。
 
想定される緊急事態には、単に企業内だけで発生するケースと、自然災害のように自社の周囲にも影響が出るケースがあり、それぞれに対応が異なる。特に後者の場合は、広域にわたる安全に関する情報を獲得し、それに応じた長期的な支援が必要になる。それを実現するには、さまざまな機関との連携・協力が欠かせない。相互に協業・協調をして“現在進行形”の案件に対応しながら復旧・復興にも尽力することになるのだ。
 
上述したように複雑で、ただしニーズに対応した動きをしなければならないので、よりBCPを研ぎ澄ます必要がある。すなわち、現状を考慮して、常に自分たちへ降りかかるであろうリスクに“アンテナを張り”、それをBCPへ取り込むか否かを判断する。取り込んだ際には、新しい対応が必要になることが多いので、足りない知見については外部の専門家の指導を受けるべきだろう。特に、自社と関係が希薄な内容――例えば、感染症や不審者対策など――については、重要だ。
 
 

従業員への教育が不可欠

 
仮にBCPの策定がされていたとするなら、それに関連して従業員への教育や組織挙げての訓練をすることなども欠かせない。というのも、大規模災害時のように、従業員全員が未曾有の大災害等に対応しなくては、マンパワーそのものが足りなくなる。そして、より広範な安全確保に関する情報を、継続的に獲得する必要があるため、その負担も大きくなる。
 
こうしたさまざまな負荷を下げながら、混乱の中にあっても、よりスムーズに事業を継続し、従業員や関係者の安全に向けた行動をするべきだ。そのためにも、普段から従業員への教育的なアプローチが不可欠である。
 
従業員にとっては、なぜ今自分たちの会社や組織が危機管理や防災に力を入れているのか、その背景をも知るきっかけになる。自社が置かれているリスク、これまで手をつけられなかった部分への修正、企業活動とともに社会の変化もあり、相互のミスマッチにどう対応するかなど、従業員が自分に課されたことを責務として実感し、それへの積極的な関与を促す意味でも、“きっかけ”を共有するべきである。
 
 

防災訓練のマンネリ化を防ぐ

 
防災訓練に関しては、多くが9月の防災の日に合わせて行う企業や自治体が多い。各企業は自社に必要となる、災害時に対応すべきシナリオを作成し、それをもとに地図を用いて災害対策を検討する図上訓練を行い、外部からの専門家を招いて講義なども実施する。著者が顧問として従事してきた経験から言うと、この訓練の実施そのものが“マンネリ化”して、単なる読み合わせをしているだけのような企業も目立つ。
 
想定される事態の単なる確認になったり、いつも繰り返しているただの訓練になったりしているのであれば、改善が必要だ。自力での改善は難しいので、外部から専門家を入れて、防災訓練においても、関係各所に刺激を与えていく。当然、企業や事業所が備えたいリスクに向けた訓練を実施するのが重要だが、今までの課題を振り返り、その課題への対応を加味した内容にすることも忘れてはならない。
 
まず初動で何をすべきか、従業員たちの安否を確認し、建物の安全をチェックしたうえで、そのまま留め置くか、帰宅させてもよいかの判断をする。仮に帰宅させるならば、交通機関は大丈夫なのかも確認する必要がある。こうした課題を一つひとつクリアしようとする訓練を行う試みは間違いなく、企業や事業所の強靭化につながり、今後の備えとなる。そして、取引業者などからの信用も上がるだろう。
 
さらに波及効果(上級編として)を狙うならば、各家庭や地域社会を巻き込んだ、訓練の実践につながればと思う。例えば、企業で行なった訓練や聴講した講演の内容を、従業員が家庭で話題にすることで注意喚起につながることもある。また、近隣の店舗と共同で防災訓練を実施することで、実際の災害時も協力がしやすいというメリットが生まれる。単独ではできない訓練内容も、近隣の人々を巻き込めば、行いやすい場合もある。
 
ちなみに著者が過去の経験で印象に残っているのは、関西地区の防災訓練で、地域挙げて災害時の食事をつくる訓練として、うどんを関係者や地域住民にふるまっていた企業の取り組みである。寒い時期でもあり、とてもおいしかった。料理をする人たちは、順番を待つ被災者の列ができるのを想定していたため、手慣れた作業で対応をしていた。こうした訓練の積み重ねが、“想定外の事態”にも順応していける筋道になっているように思えた。
 
 
コロナ禍を教訓に、経営者のリスク対策・BCP(業務継続計画)はどうあるべきか
第3回 経営者に求められるリスクマネジメント
(2023.11.29)

 プロフィール  

古本 尚樹 Furumoto Naoki

株式会社日本防災研究センター
危機管理アドバイザー、医学博士、阪神・淡路大震災記念人と防災未来センターリサーチフェロー

 学 歴  

・北海道大学教育学部教育学科教育計画専攻卒業
・北海道大学大学院教育学研究科教育福祉専攻修士課程修了
・北海道大学大学院医学研究科社会医学専攻地域家庭医療学講座プライマリ・ケア医学分野(医療システム学)博士課程修了(博士【医学】)
・東京大学大学院医学系研究科外科学専攻救急医学分野医学博士課程中退

 職 歴  

・浜松医科大学医学部医学科地域医療学講座特任助教(2008~2010)
・東京大学医学部附属病院救急部特任研究員(2012~2013)
・公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センター研究部 主任研究員(2013~2016)
・熊本大学大学院自然科学研究科附属減災型社会システム 実践研究教育センター特任准教授(2016~2017)
・公益財団法人 地震予知総合研究振興会東濃地震科学研究所主任研究員(2018~2020)
・(現職)株式会社日本防災研究センター(2023~)

専門分野:防災、BCP(業務継続計画)、被災者、避難行動、災害医療、新型コロナ等感染症対策、地域医療
※キーワード:防災や災害対応、被災者の健康、災害医療、地域医療

 

 個人ホームページ 

https://naokino.jimdofree.com/

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