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スポーツ 上原浩治のTrust Pitch! vol.12 渡米前、充実のオフ 上原浩治のTrust Pitch! ボストン・レッドソックス投手

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column.12 渡米前、充実のオフ

 
 

レッドソックス入団秘話

 
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渡米直前、某グラウンドで遠投練習
 そんな僕も冒頭で話したように、ボストン・レッドソックスという新天地で新たなチャレンジをしようとしているところです。もっとも、まだチームとして始動していませんから、チームの中でどんな課題が待っているかはわかりません。チームメイトには、デヴィッド・オルティスがリハビリに来ていたので偶然会った程度。他はどんな人たちだろう。楽しみもあるけど、不安もある。
 ちなみに、チームを移籍する時って、実はけっこうあっさりしているんですよ。簡単に決めるという意味じゃなく。各チームからのオファーは、皆さんご存じのとおり代理人を通じて僕のところに届きます。そして、まずは代理人や関係者と一緒に契約の中身を慎重に検討していく。ここでじっくり時間をかけ、「ここでお世話になろう」 と決めたら、後はスピーディです。いざ契約をするためにボストンのクラブハウスに向かい、その場でサインして 「OK、よろしくね」 と握手してバイバイ。契約に必要な時間なんて、ものの数分なんです、実際は。
 もちろんそれまでに水面下でいろいろと話し合いを持ち、きちんと契約書がまとまった状態でサインに臨むわけですから、お互いに満足のいく内容にはなっています。ただ、サインはあっさり(笑)。サインして帰ろうとしたらオルティスがいたので 「あ、オルティスがおるやん」 と偶然会ったのが、契約時の一番の思い出かもね(笑)。
 まあ、これから新天地でイチからスタートするわけですから、まず、チームメイトとはコミュニケーションから始めて、うまいことやっていきたいですね。そのへんはさすがにプロ15年目のキャリアがありますし、新チームへの合流経験も3度あるわけですから、自分でも心配していませんけどね。
 
 

偉大なる先輩・松井秀喜

 
 さて、このオフに関連して、最後に話しておきたいのが、松井さんのこと。考えたくないけど、「復活してください」 というのが僕の本音。もちろん自分の引き際ですから、松井さんのお考えもあるでしょう。でも、僕はもう一度勝負がしたい。
 松井さんは野球においても、一人の人間としても素晴らしい人なんですよ。あの人を悪く言う人を、僕は見たことがない。僕がアメリカに渡った時も、ご自分も大変な状況であるにも関わらず、僕の家族のことや生活のことまで気にかけてくれてました。自分が大変な時に、なかなかできることじゃないよね。ユニフォームを着てグラウンドに出ているのに、野球以外のことも気にかけてくれる。そんな人です。だからこそなのか、僕は松井さんとの真剣勝負が一番印象に残っています。アメリカで6打席くらい向かい合ったのかな。お互いに同じ巨人のユニフォームを着ていた頃は、メジャーの舞台でガチンコの勝負ができるなどとは思ってもみなかったし、その対決は全部、緊張よりも楽しさのほうが強かった。松井さんとの勝負はとにかく楽しかったんです。その松井さんがユニフォームを脱いだことは、僕の野球人生の中で大きな楽しみが一つ減ってしまったのは間違いない。
 プロ選手であれば、誰だって一年でも長くプレーを続けたいと思います。僕も一年一年、「来年もやりたい」 という気持ちで臨んでる。今年もそうです。どのチームからも声がかからなくなった時、引退をするのでしょうけど、声がかかる限りは一日でも長くやりたい。松井さんの引退を受けて、あらためてそう感じていますね。
 
 今回は珍しく感傷的になってしまったな。ともあれ、僕は僕で野球を続ける、やるべきことをやるだけ。「一年間、メジャーで投げとおす」。それだけ。レッドソックスでも全力のプレーをお見せしますから応援してくださいね、もみあげを剃った新生・上原の(笑)。

 執筆者プロフィール 

上原浩治 Koji Uehara

ボルチモア・オリオールズ投手

 経 歴 

大阪府出身(出生は鹿児島県)。東海大学付属仰星高校から大阪体育大学に進学し、大学3年時に日本代表に選出。1997年に出場したインターコンチネンタルカップ決勝では、当時国際大会151連勝中だったキューバから先発勝利をあげ、注目された。ドラフトで読売ジャイアンツに1位指名(逆指名)を受け、1999年に入団。ルーキーイヤーに20勝投手となり、最多勝利、最優秀防御率、最多奪三振、最高勝率の4冠を獲得し、新人王と沢村賞も受賞。翌2000年は肉離れのため登録抹消となるなど、ケガに苦しむシーズンを送るも、2002年に再び17勝をあげ、優秀選手賞を受賞。2004年にはアテネオリンピック野球日本代表に選出され、銅メダル獲得に貢献。2006年のワールド・ベースボール・クラシックでも日本代表のエースとしてチームを優勝に導いた。2009年にボルチモア・オリオールズに入団。ベテラン投手の一人としてチームを牽引している。

 
 
 
 

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