競技においてのフィギュアスケートは、ジャンプなどの技術点と演技構成などを評価するコンポーネンツによって採点されている。坂本さんはシニアに上がった際、そのコンポーネンツ部分に伸び悩んでいたのだと言う。詳しく話をお聞きした。
思い描く結果を得るために
私は昔からジャンプが大好きで、演技は苦手だったんです。そもそも人前で踊るということが嫌いでした。ジュニア時代は、「音楽がなかったら良い選手」と言われることもありました。それくらいジャンプ以外が壊滅的だったんです。でも、シニアに上がった際にそれではダメだと思い知りました。
シニアの選手は、本当に表現力がすごいんですよ。技術点では戦えても、コンポーネンツでは足元にも及びませんでした。表現力やスケーティングスキルも改善しなければいけないと実感し、スケーティングが上手な先輩にアドバイスをいただきながら練習を重ねました。
スケーティングは、一朝一夕で上達するものではありません。教えてもらって理解できるものでもなく、自分でその感覚を掴まないといけないんです。数ヶ月間ひらすら練習を続けて、感覚を掴めたときは本当に爽快でした。そうして年数を重ねてきて、なんとかシニアでも戦える実力が備わってきたのかなと思っています。
今までは、頭の中の80%はジャンプのことを考えていました。でも、今シーズンのフリースケーティングで使用していた『オール・ザット・ジャズ』という曲では、どの場面でも振り付けがあるという構成をとっていたんです。その分、ジャンプについて考えるのが60%くらいになっていました。それでも、納得のいくジャンプを跳べたんです。
ジャンプ以外のことを考えていても、しっかりとできるという実感を得たのは大きいと思いますし、自身の成長を感じました。理想はジャンプ50%、それ以外も50%で考えるようになることですね。そうして研鑽を重ね、2026年のミラノオリンピックを目指していきます。
ミラノオリンピックが開催されるのは2026年2月。代表選手の最終選考である全日本選手権の開催も12月と迫っています。限られた時間の中で今までの経験を活かし、いかに自分らしいスケートができるのかを追求していきたいです。ベストなプログラムで戦って、思い描く結果を勝ち取れたら良いなと思っています。
(インタビュー・文 中野夢菜/写真 Nori)
坂本花織(さかもと かおり)
2000年生まれ 兵庫県出身
4歳の頃からスケートを始め、幼い頃からオリンピック選手を目指すように。高校2年生のときに平昌オリンピックに出場。2022年の北京オリンピックでは団体戦で銀メダル、個人戦で銅メダルを獲得した。世界選手権3連覇などの功績を持つ。2026年のミラノオリンピックを目指し研鑽を積んでいる。
(取材:2025年4月)