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スペシャルインタビューSPECIAL INTERVIEW

挑戦を続ける中で見出した
大和撫子が世界で戦う術

 
 
ただ技術を磨くだけでなく、サッカーに必要な身体づくりを継続してきた安藤選手。なでしこリーグで輝かしい成果を収め、自信を持ってプレーできていても、決して満足はしなかった。なぜなら彼女の目標は 「世界で活躍できる選手になること、日本代表が世界チャンピオンになること」 だったから。国内ではなく、世界で戦える選手になるために、安藤選手はドイツリーグへの移籍を決断する。
 
 

世界基準を日常にするための努力

 
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 ドイツ人って、身長も高くて体重もあるのに、スピードもある。それに、まったく筋トレをしてない選手でも、とても体格がいい。だから、フィジカルにもある程度の自信を持ってドイツに移籍したわけですけど、最初はかなり戸惑いました。日本での身体のぶつけ合いとは全然違うんです。相手を身体ごと吹き飛ばすくらいの勢いで向かってくるんですよ。国内にいた頃も世界基準を想定して試合や練習に臨んでいましたけど、実際に体験すると全然感じ方が違いますよね。私が全力でぶつかっていても、簡単に跳ね返されちゃう。しかも、こっちが想像もしていないタイミングでぶつかってくるから、最初は怖かった。とにかくもう、練習の時から削り合い(笑)。スライディングで足元から刈られることなんてしょっちゅうです。
 ともかく、練習の時から “戦う姿勢” を前面に出すんですよね。でも、そこで戦えないと試合に出ることすらできません。それで、転がされようがなんだろうが競り合いを厭わないようにしたんです。そうすると徐々に、身体のぶつけ方や身のかわし方のコツがわかってくるし、相手と接触している時の腰の使い方、ボールをキープするための手や腕の使い方などがわかってくるんですよね。それに伴って、実践でしか鍛えられない筋力もアップしてくる。
 そんなふうに、ドイツで日々奮闘した成果を多少なりとも実感したのは2010年、なでしこジャパンのW杯アジア予選の時でした。デュイスブルグに移籍して半年後だったんですけど、対戦した韓国や北朝鮮はアジアではフィジカルが強いチーム。でも、かなりの余裕を持ってプレーができるようになっていました。
 実はドイツに渡ったばかりの頃、VfLヴォルフスブルクに所属する長谷部誠選手から 「ドイツでしばらくやってから、アジアの選手と試合をするとフィジカルが強くなっていることを実感する」 と教えてもらっていたんです。だから、長谷部選手が言っていたことを身体で理解できた時は、「あ! この余裕のことだな!」 って思えて嬉しかったですね。
 
 
 
なでしこリーグにいた頃から、常に目標を高いところに置き、その環境から逃げることなく一つひとつ壁を乗り越える挑戦を繰り返してきた安藤選手。ドイツに移籍したことで、選手としてさらに自分の成長を実感したそうだ。しかも、異国の地で過ごすことを通じて、日本サッカーの長所と短所をより客観的に捉えられるようになり、その特徴をどう活かすべきなのかを自身の身体で体感しながら、より具体的に考えられるようになっていく。
 
 

自己主張するか否かで立場が変わる

 
 ドイツに渡ってもう3年くらい経ちますから、仕事だけでなく生活にもずいぶん慣れて、楽しんでいます。日本人選手も男女問わず何人もドイツでプレーしていますので、交流もけっこうあるんですよ。長谷部選手だけでなく、デュイスブルグにいた時はシャルケの内田篤人選手、フランクフルトに移籍してからは、乾貴士選手が試合観戦に来てくれることもあります。サッカーにおける日本、ドイツのそれぞれの特徴は、女子と男子もあまり変わらないから、参考になるお話もたくさんできるし、刺激し合えていいですよね。
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 具体的なサッカーの違いを言うと、日本は中盤でボールを回してチャンスをつくることを重視するけど、ドイツはとにかくパワフルで縦に速い。シンプルにボールをつないで、当たりの激しいプレーをします。日本の選手はパスやトラップなどのボールコントロールに優れていますけど、それを激しい試合の局面で発揮できてこそ、本当にうまい選手なんですよね。だから、球際の競り合いに勝ったうえで日本人らしさを出していかないと、ドイツでは評価されません。
 あと、日本人は味方が処理しやすいようなパスを出しますよね。でも、ドイツ人のパスは強くて速い。たまに 「あんなボール追い付けないよ」 と思うところに出されることもあります。それでも 「お前が悪い」 って言われちゃうから、そこは苦労する部分かな。とにかくみんな、自己主張をします。デュイスブルグに移籍した当初は、うまくプレーできないと何でもこっちが悪いように言われてびっくりしました。それで本当に 「自分が悪いんだ」 って思っちゃうと、落ち込んで余計にうまく力が発揮できなくなっちゃう。しかも、言い返す言葉がわからず黙っていると、「安藤は自分が悪いと認めた」 って解釈されてしまうんです。それで、「これはまずい。何とかしなきゃ」 と、勇気を振り絞って言い返すようにしました。味方との連携がうまくいかなくて 「お前が悪いんだぞ!」 と言われたら、「Du(あんたでしょ)!」 など、とにかく間違ったドイツ語でもいいから思い切って意思表示したんです。
 言い返したからって、喧嘩になんてならなくて、それまで通りプレーが続きます。きっと、無反応でいるよりも、そのほうがコミュニケーションになるんでしょうね。だから、臆せずに自己主張するように心がけました。意見をぶつけ合うからこそ、結果として味方が望むプレーがわかるようになるし、自分自身も相手に何でも合わすのではなく、パスすべき時はパス、自分でしかけるべき時はしかける。そうやって的確な判断ができるようになりますからね。
 
 
 
 

 

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