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経営者インタビューEXECUTIVE INTERVIEW

堺の技を奈良で輝かせる 包丁職人の新たなる挑戦
株式会社円直刃物 代表取締役 丸山忠孝

 
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インタビュアー 畑山隆則(元ボクシング世界王者)
畑山 奈良市で包丁刃付け販売を行っておられる、円直刃物(えんじきはもの)さん。ガラス張りでスタイリッシュなお店に、「包丁」ののぼりがはためいていますね。丸山社長は、どのような経緯でこの世界に入られたのですか?
 
丸山 就職氷河期だったこともあり、学業修了後はカメラアシスタントなどさまざまな仕事を経験しました。その後、包丁、園芸刃物関係の会社で営業として働いていた37歳のときに、その会社の会長に「職人にならないか」と勧められ、職人になるにはずいぶんと遅かったものの、修業の道に入ったんです。もともとものづくりに興味があったので飛びつき、包丁の本場・堺の伝統技術を身に付けました。
 
畑山 堺で腕を磨かれたとは、頼もしい! ちなみに、一人前になるにはどれくらいかかるのでしょう。
 
丸山 石の上にも三年と言うように、だいたいそのくらいですね。ただ修業中より、実際に現場に出てからのほうがスキルが上がった気がします。後進の指導にも当たるなど月日を重ねるうち、自分で研いだ包丁を販売したい思いが強くなり、2025年8月に工房を兼ねた当店をオープンしました。
 
畑山 満を持しての開業だったのですね。工房兼店舗のスタイルに丸山社長のこだわりを感じます。
 
丸山 奈良は、観光客がたくさん来られる地域です。特に海外の方は製作過程に興味を持たれるので、こうして研いでいる現場を見ていただきたいと思いました。エンターテインメント性があるので技術への理解も深まりますし、実際、少しずつ認知が広がっているとも感じています。
 
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畑山 技を“魅せる”エンタメも提供されていて、話題性も抜群でしょう。それにしても、堺ではなく奈良に出店されたのはなぜですか?
 
丸山 奈良は海外からの観光客が多い割に、海外の方に人気の包丁の専門店が少ないんです。ならば自分が、と使命感に駆られました。当店では、鍛冶屋さんから生地を仕入れ、私が研ぎ上げたオリジナル包丁を販売しています。昔ながらの安来鋼を使用し、鍛冶屋が叩き鍛えた鋼を限界まで薄く仕上げており、鍛造して鋼を鍛え上げているからこそ薄く仕上げることができるんです。黒打ちのまま仕上げることで、鍛冶職人が叩いてつくっている証が残るため、海外のお客様が非常に喜んでくださいます。