
インタビュアー 濱中治(野球解説者)
岡本 病院は、自宅のように心からくつろげる空間ではなく制限も多いため、患者様の願望を叶えてあげにくいのが現状です。私は、訪問看護サービスを受けていた祖父母を自宅で看取った際に、安らかな顔を見て何とも言えない感情を抱きました。その経験から訪問看護なら患者様の最後の願いを叶えられるのではないかと思いまして。また、残った家族も最後まで看取ることで、悲しみの中にも満足感や充実感が存在していることに気付きました。それで2020年に当訪問看護ステーションを立ち上げたんです。祖母が私をこの道に導いてくれたのだと感じています。
濱中 岡本代表には看護師としての長年のキャリアがありますし、その経験が存分に活かされていることと思います。
岡本 確かに看護師としてのノウハウがあったぶん、知識や技術には自信がありました。ただ、訪問看護には病院での看護経験がまったく通じないと痛感したんですよ。訪問看護では病院にあるような最新機器やデータに頼ることができず、その日の患者様の様子から、体調の変化を見極めなければなりません。さらに基本的には一人でうかがうため、医師の先生や他の看護師仲間がいない状況なんです。患者様には“私”という人間性を見られますし、知識や技術が豊富であるよりも信頼していただくことが何よりも大事になってくるんですよ。

岡本 おっしゃる通りです。私が病院に勤めていた頃は、患者様が亡くなってもご家族のケアまでは手が回らず、それが歯がゆくて。一方今は、例えば患者様が亡くなられてからあらためてお線香をあげにうかがい、その際にご家族の様子をうかがって故人様にまつわる思い出話をするなど、ほんの少しではあるもののお気持ちを癒すお手伝いができるようになりました。ご遺族にもいたわりの気持ちを持ち、故人様に対する後悔なく心健やかに人生を歩んでいただくことも私たちの大事な役目だと考えています。