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経営者インタビューEXECUTIVE INTERVIEW

冷間圧延用ロールで
ものづくりの根幹を担う

 

国内トップシェア、世界シェア3割を占める

 
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 実際に御社の事業に関わりの深い素材をつくるわけですから、前職で学んだことは多かったでしょうね。
 
田中 はい。厳しい思いをすることもたくさんありました。でも、基礎の基礎から教えていただき、とても良い勉強をすることができましたね。それに、私はもともと商売が好きだったようです。というのも、小学生の頃に流行っていたトレーディングカードゲームで良いカードを手に入れるために、お小遣いを貯めてカードを仕入れ、それを友だちと売り買いしていたんですよ。その当時から「お金持ちになりたい。そのために社長になる!」と言っていましたね(笑)。
 
 そんなに小さい頃から経営者の考えが身についていたとは! それに加えて、ものづくりの現場も経験して、知識や技術も身につけてこられた。家業を継ぐ者としては、この上ないご経歴だと思いますよ。それでは、50年以上にわたって御社が製造し続けている冷間圧延用ロールとは、どのような製品なのか教えてください。
 
田中 冷間圧延用ロールは、ステンレスや銅などの金属を薄く延ばすためのロールです。簡単にご説明すると、うどんを延ばすときに使う「のし棒」のようなものですね。製鉄会社さんや金属メーカーさんは、このロールを圧延機という機械に取り付けて金属板を生産するわけです。
 
 その金属板は、僕たちの身の回りでも使われているんですか?
 
田中 はい。代表的なところではキッチンのシンクや食器、家電製品のパーツ。また、エレベーターや自動車の部品などにも使われています。
 
 なるほど。冷間圧延用ロールは、さまざまな製品の素材となる金属板をつくるために欠かせない道具なわけだ。そのロールを製造するためには、やはり熟練の技術が必要なんでしょうね。
 
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国内トップシェアを誇る冷間圧延用ロール
田中 ええ。非常に高い技術が要求される仕事なんです。それこそ、うどんなら柔らかいのですぐ延ばせますよね。しかし、ステンレスや銅は当然ながら硬いわけです。その硬い金属を延ばすために、ロールはそれよりもさらに硬く、しかも素材となる金属を傷付けないよう薄くきれいに延ばすための精度と品質が求められます。
 
 それほどの技術が要求される冷間圧延用ロールを製造しているメーカーは、どれくらいあるのでしょうか。
 
田中 国内には弊社を含め3社だけなんです。しかも、そのうち2社は大手企業のグループですから、独立系企業で製造しているのは弊社だけですね。世界的に見ても、本当に実用に耐えるロールをつくっている企業は10社あるかどうかです。その中で、弊社は冷間圧延用ロールの製造では国内トップシェアを誇り、世界でも3割のシェアを占めているんですよ。
 
 それはすごい! ものづくりには欠かせない道具なのに、それを実用レベルで製造できるメーカーはそんなに少ないんですね。そんな優れた技術を持つ数少ない企業の中で、世界でも有数なシェアを占めるシントクさんは、まさに日本のものづくりを象徴する会社でもあるわけだ。
 
田中 ありがとうございます。弊社の代表取締役からは「うちのロールがなければ、ステンレス製品をつくることができなくなる。産業が止まってしまうんだ。だから、職人の覚悟とプライドを持って仕事をしろ」と教えられてきました。特に近年は求められる品質のレベルも上がっているので、検査には最も気を付けています。