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経営者インタビューEXECUTIVE INTERVIEW

人を中心に置いた設計で
温かみのある建物を造る

 
 

個性を引き出すために個性をなくす

 
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本田 感心することしきりですが、これだけ遊び心が取り入れられるのはご自分の家だからこそでしょうね。
 
小野寺(義) 実は、この家の設計はとても苦労しました。設計というのは、まず自分を真っ白にしなきゃいけないのに、自分の家だと “自分” を捨てきれない。建物は施主様あってのものですから、ご要望を差し置いて自分の作りたいものを作るのは本末転倒。そして、常に客観的な判断をすることが大事です。だから、いつも施主様のご意見を全て取り入れ、情報を整理するところから始めるんです。
 
本田 それでは、建築家の個性が押し殺されてしまうような気がします。没個性の建物になってしまうのでは・・・。
 
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住む人の個性を活かすことを考えられた空間
小野寺(義) 建築家の個性をなくしたほうが、余計に住む方や敷地の個性が引き立つものなんですよ。それに個性というのは消そうとしたほうがより普遍的な本質が残ります。この家を設計する際には、自分をニュートラルにするため、両親を施主として考えました。できる限り施主様には家を見せてもらい、ライフスタイルや趣味、好きな服、好きな色、住む方の癖や習慣といったものをうかがって・・・。
 
本田 ちょっと待ってください! 一般のお施主さんにも、そんなに詳しくヒアリングされるんですか?
 
小野寺(義) ええ。情報はあればあるほど良いので、教えていただけることは何でも。全ての要望を叶えようとすればまとまりませんが、多くの情報を整理していると、自然と方向性が見えてくるんです。逆に情報が少ないとニーズを捉えきれず、違ったベクトルに向かってしまう可能性があります。方向性が見えない時には3パターンくらいの案を出して、そこからイメージを絞ることも。
 
本田 3つも? お施主さんは喜ばれるでしょうが、案を出す小野寺代表は大変でしょう。
 
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小野寺(義) そうですね。ですが、方向性が見えない時というのは、施主様もご自分の嗜好を把握していないことが多いんですよ。そんな時、あえて好みではないと思われる案を1つ混ぜておく。すると案の定、真っ先に候補から除外されます。その外された選択肢の対極に施主様の潜在ニーズがあると考えれば、間違いありません。
 
本田 へえー! まるで心理ゲームだ。でも言い得て妙だと思います。ちなみに、アイデアはどんな時に湧き出てくるんですか?
 
小野寺(義) 仕事以外だと、海外旅行でインスピレーションを得ることが多いですね。アジアやヨーロッパを中心に異文化の建物を目にしたり、人々の生活に触れたり。目的地を定めない一人旅が好きなんですよね。ツアーみたいに最初から型にはまっているのは苦手で、現地を歩きながら、方向性を決めちゃう(笑)。
 
本田 うーん、なんだか小野寺代表の建築コンセプトそのものみたいだ(笑)。