書の基本に徹したうえで
新たな可能性を探る教室
ネットも活用し、幅広い人に書道を指導

谷口 本人にしか書けない点でしょうか。今は誰でもパソコンやスマホで文字を打てるようになっています。でも、字体は画一的でしょう。書道は違います。同じ字でも書く人によって、その日の気分によっても変わるんです。その時々に新しい何かを生み出せる芸術、それが書道だと私は考えます。長く続けられることも魅力です。
今岡 同じものは一つとしてなく常に新しい、それが醍醐味なんですね。
谷口 おっしゃる通りです。最近は、半紙に限定せずキャンバス地やアクリル板に書くなどして、さまざまな手法を実践しています。SNSへの一日一投稿を8年間継続するなど現代メディアも活用し、書道の新しい形を模索し続けていますよ。
今岡 伝統と革新を融合させて書道をアップデート、そんな印象を受けました。では、教室でのご指導内容についても教えてください。
谷口 毛筆・硬筆や漢字・仮名、ペン字、篆刻など私自身が学んできたさまざまな書を、幼児から大人まで幅広い層の方々に教えています。趣味から師範志望まで一人ひとりのニーズに応じた指導を丁寧に行っています。現在の生徒数は、約90人。そのうち過半数が高校生以上、女性が7割、男性が3割くらいです。中には、夜遅くまで黙々と取り組む子もいるんですよ。
今岡 そういう子は書道家の卵かもしれませんね。ちなみに、リモートでのご指導もされているとか?

今岡 書による交流、とても楽しそうです。谷口先生は、ご指導のうえで何を大事にされていますか?
谷口 岩崎先生から学んだ“基本”を大切にしています。先ほど申し上げた私の創作活動は、型破りと言えるかもしれません。ただそれも型があってこそなので、まずは基本を身に付けてもらうように指導しています。大人も子どもも全員、まずは「あいうえお」から始めてもらい、そのあと一人ひとりの個性や特性に合わせたお手本を手書きで作成するんです。