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公式キャラクターの一人・マルィシュカ・オフカ。広報に一役買っている
公式キャラクターのマルィシュカ・オフカ。広報に一役買っている
オタク目線の発想で、そのニーズに応える商品やサービスを提供するオタク向け事業を取り上げる本連載。今回は、オタク向け美容室「OFF-KAi!!(オフカイ)」をご紹介します。

実は美容室を“怖い場所”と捉えているオタクは少なくありません。スタイリッシュな空間は何だか落ち着かないし、おしゃれな美容師に「休みの日は何してるんですか?」と聞かれても「アニメ見て漫画読んでゲームしています」なんて言えない・・・。OFF-KAi!!のオーナーを務める茂木賢太氏も例外なく美容室に近寄りがたさを感じていた一人で、「オタクでも入りやすい美容室があればいいのに」と常々思っていたそう。その思いを叶えるべく2016年、OFF-KAi!!をオープン。2022年現在、秋葉原店と池袋店、大阪店の計3店を展開しています。そんなOFF-KAi!!が目指すのは、「みんなで叶えるオタクに優しい美容室」。その実態に迫らんと、第1号店である秋葉原店に潜入してきました!
 
美容室とは一見わからない、まるでアニメグッズ店のような外観
美容室とは一見わからない、まるでアニメグッズ店のような外観
外から施術スペースが見えないよう配慮されている
外から施術スペースが見えないよう配慮されている
 
 

「まるで実家」 オタクが落ち着ける二次元コンテンツに溢れた空間

 
漫画がズラリと並ぶ空間は「実家みたい」という声も
漫画がズラリと並ぶ空間は「実家みたい」という声も
秋葉原店が入居するのはとあるビルの1階。通りに向けてフィギュアなどが飾られており、入り口ドアはガラス張りになっているものの、外からは漫画で敷き詰められた内壁しか見えないため、言われなければ美容室だと気付かないかもしれません。道行く人に施術中の姿を見られるのは気が引けるだろうと「あえて施術スペースを見えないようにした」と、タナカサトシ店長。いよいよ店内に足を踏み入れると、天井から床まで漫画で埋め尽くされた待ち合いスペースが目の前に広がり、まるで漫画喫茶に来たよう! 少なくとも3000冊以上は取りそろえられているそうで、もちろん読み放題。これだけでも大興奮間違いなしなのに、BGMとして店内にながれるアニソンに、ますますテンションが上がります! 実際、BGMに体を揺すりながら施術を待つお客さんの姿が見受けられました。
 
施術スペースにつながる通路は二手に分かれ、うち1つは「しゃべりたくないGate」となっています。できれば静かに過ごしたいという顧客のために設けられたもので、その名の通り、同ゲートを通ることでやんわりと「あまり話したくない」と意思表示できるのだとか。ユーモアを交えながら顧客に配慮した店内仕様は、オタク向け美容室ならでは。ゲートを抜けると広々とした施術スペースが開け、たくさんの二次元グッズや額縁が出迎えてくれます。一方、シャンプー台が設けられた一室は暗がりにミラーボールが輝き、壁に埋め込まれたディスプレイにはさまざまなアニメ映像が。それまでの漫画喫茶のような雰囲気とは打って変わり、ライブ会場にいるような感覚を味わえます。ちなみに池袋店と大阪店も同じように、二次元コンテンツを楽しめる店内になっているとのこと。ただ、池袋店は“オタク女子のメッカ”に立地している都合上、他の2店舗に比べて女性向けコンテンツが豊富にラインアップされているそうです。
 
ミラーボールが輝くシャンプー室。実際はもっと暗い
ミラーボールが輝くシャンプー室。実際はもっと暗い
正面のディスプレイにはアニメ映像がながれている
正面のディスプレイにはアニメ映像がながれている
 
 

最大の障壁“美容師との会話”が負担にならないように

 
静かに過ごしたい人はここを通って意思表示
静かに過ごしたい人はここを通って意思表示
気になるのは美容師の面々。秋葉原店にはタナカ店長を含め4人の男性美容師が在籍しています。もちろん全員オタクで、技術も一級品。二次元キャラの再現はお手の物で、「他の美容室では断られたカラーを叶えられた」「無理難題を言ったのに最大限特徴を拾ってくれた」と、好評を博しています。ただ、実際にOFF-KAi!!で働く美容師たちは意外にも“普通”。二次元っぽい風貌を予想していたので、これは予想外でした。「特に見た目でオタク美容師であることを押し出していません。みんな自然体です」とタナカ店長。それより「コミュニケーションでお客様に安心感を与えられるようにしている」といいます。実はOFF-KAi!!には、髪型を推しに似せたいという人よりも「普通にカットしに来る」人のほうが多いのだそう。そのぶん「技術以上にお客様とどう接するかが大事」。確かに、美容師との会話は何を話せば良いのかわからないもの。オタクであればなおさら、“こちらの世界”とは無縁そうな美容師に「オタク話をしたところで引かれるだけかも」と、身構えてしまいます。
 
そこでOFF-KAi!!では美容師との会話に負担を感じさせないよう、「見極め」を大事にしているといいます。「オタク話をするために来たというお客様とは楽しく盛り上がり、会話自体は苦手だけど好きな作品の話はしたいというお客様には、会話の糸口をつかみやすい言葉を投げかけるようにしています。また、明確に意思表示していなくても実はそんなに話したくないお客様もいるはず。その方の本心を見極めて、短くない美容室での時間を快適に過ごしてもらえるようにしています」。ちなみにタナカ店長自身も人見知りで、以前働いていた一般の美容室では、顧客との会話に悩んでいたそう。「何で美容師やってるんだって話ですが(笑)。だからこそ話したくないお客様の気持ちに共感できるし、聞かれたくないこともわかります。ただ、OFF-KAi!!では会話を楽しみたいお客様とオタク話で盛り上がれるので、今はむしろお話しするのが楽しいですね」。顧客が思い思いの時間を過ごすことができ、美容師も共に楽しむことができる。コンセプト通り、まさにみんなで店づくりを叶えているのです。
 
施術スペースにもイラストの額縁やフィギュアが
施術スペースにもイラストの額縁やフィギュアが
シンプルながらオタク要素満載
シンプルながらオタク要素満載
 
 

唯一無二のオタク向け美容室として

 
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タナカ店長。オタクが入りやすい美容室を求め同店に
そんなOFF-KAi!!のリピート率は8割超え。店の雰囲気や美容師の腕だけではなく、オタクへのホスピタリティ精神が「また行きたい」と思わせているのでしょう。取材にうかがったときも平日の昼すぎとは思えないほど、客足が途絶えていませんでした。それでも「知名度はまだまだ」とタナカ店長。より多くの人にOFF-KAi!!を知ってもらうべく、「有名作品とのコラボ商品や、秋葉原や池袋の街と連携したサービスを今後提供できれば」と目標を語ってくれました。
 
オタクを名乗る美容師はいても、正式に「オタク向け」を掲げている美容室はOFF-KAi!!以外にないのだそう。唯一無二の美容室として全オタクがのびのび過ごせるよう、OFF-KAi!!には「二次元だけでなく多様な趣味に特化した店舗を増やし、各地に広げていきたい」というビジョンがあります。“美容室=行くのに緊張する”という固定観念を打ち破りつつあるOFF-KAi!!。美容室が日本中のオタクにとって、行くのが楽しみになる場所となる日も遠くないかもしれません。
 
 
(取材:2022年5月)
 
 
OFF-KAi!!
秋葉原店
■住所
〒101-0021
東京都千代田区外神田3-6-4 OSビル101
■電話
03-6206-9446
■営業時間
月・水~土 12:00~22:00(カット最終受け付け21:00)
https://off-kai.com
https://twitter.com/otasalonproject
 
池袋店
■住所
〒170-0013
東京都豊島区東池袋2-59-7 秋山商事ビル1F
■電話
03-5924-6738
■営業時間
月・水~土 12:00~22:00(カット最終受け付け21:00)
https://off-kai.com/ikebukuro
https://twitter.com/OFF_KAi2
 
大阪店
■住所
〒542-0086
大阪府大阪市中央区西心斎橋1-9-28-104
■電話
06-6258-1566
■営業時間
月・水~金 11:00~22:00(カット最終受け付け21:00)
土日祝 10:00~21:00(カット最終受け付け20:00)
https://off-kai.com/osaka
https://twitter.com/offkaiosaka
 
オタクのオタクによるオタクのためのビジネス
vol.4 美容室が怖いオタクはここに行け オタク向け美容室 OFF-KAi!!
(2022.6.8)
 
 

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