B+ 仕事を楽しむためのWebマガジン

トピックスTOPICS

あまり人に知られていない、ニッチな仕事を紹介するコーナー。vol.2に登場するのは、他を圧倒する縄跳びパフォーマンスで11個のギネス世界記録™を更新し、延べ50万人以上を指導した実績を持つプロ縄跳びプレーヤー・生山ヒジキさん。自身の進路に悩みつつ本格的に縄跳びに取り組み、プロとしての地位を確立するまでの道のりをうかがった。
 
 

プロ縄跳びプレーヤーの仕事

 
短縄をメインにしたイベントでの縄跳びパフォーマンスのほか、日本各地の教育機関などで縄跳びの出張教室を実施。縄跳びという運動をわかりやすく伝えている。ギネス世界記録へのチャレンジや、競技者として大会に出場することもある。
 
 

初恋をして縄跳びを手にする

 
glay-s1top.jpg
生山ヒジキさん
「縄跳びの魅力は、成功か失敗か――がわかりやすいところですね。パフォーマンスであれ大会の競技であれ、縄にひっかかったらミス。それは誰の目から見ても明らかじゃないですか。ごまかしがきかない。そういうプレッシャーに向き合いながら跳び続けるのが、楽しいんです」と語る生山さんが、初めてその魅力を知ったのは小学校3年生の時。
 
縄跳びが上手だった担任の先生への初恋がきっかけだった。先生に目をかけてもらいたいと思って自身も縄跳びを手に取ると、すぐにその面白味に魅かれ、虜になった。毎日跳び続けるうちに、全校生徒の前で腕前を披露するレベルに。「他の教科の勉強ができるようになるより、縄跳びがうまくなることに高揚感があった」。
 
中学校の体育には縄跳びの授業はなく縄跳びから遠のいたが、進学した高校には珍しいことに、縄跳びの授業があった。生山さんはそこで再び、その魅力を実感。暇を見つけて縄跳びをするようになった。やがて卒業も近づき、進路を決める時期になる。縄跳びは好きでも、職業にできる競技ではない。将来を模索するために、大学へ進学した。
 
 

海外のプレーヤーに衝撃を受ける

 
大学時代のある日、仲の良い友人が役者としてデビューしたことを知り、それに触発されて自身も役者の道を目指すことにする。大学に通いながらさまざまなオーディションを受け、卒業後もフリーターとして活動を継続。知り合いたちは社会人として働き始めている中で、「僕はオーディションに落ちまくっていて、何のために大学入ったんだという感じ(笑)」。
 
次第に焦りを感じ始めた生山さんは、「自分がアピールできる絶対的な特技ってなんだろう」とオーディションの受け方を再考する。そこで思い出したのが、縄跳びだった。しかし、オーディションの場で、ハヤブサや三重跳びをしても、インパクトに欠ける。「誰でも知っているし、すごいことではあっても、パフォーマンスとしては物足りない」。
 
当時はインターネットが世間に普及し始めた頃。海外のプレーヤーを検索してみると、想像もつかないパフォーマンスを披露するプレーヤーがたくさんいることに衝撃を受けた。そして、「跳び方の可能性は無限にある」と感じた。さらに調べてみると、世界大会も開催されている。競技者としての活躍の場があることを知った生山さんは、「本当に自分がやりたいことは、これだ!」と直感。本格的に縄跳びに取り組むことを決意する。24歳の時だった。
 
glay-s1top.jpg
glay-s1top.jpg
 
 

縄跳びを通じて人生に小さなお助けを

 
マイナースポーツとはいえ、競技者としての生山さんの当時の年齢は、上から数えたほうが早い。他は学生ら10代の若者ばかりだった。しかし、迷いはなかった。「縄跳びの世界のてっぺんに立つ」ために訓練を積み、国内の大会に参加。実績を残すことで、アジア、世界へと階段を駆け上っていく。そして、世界大会優勝という栄誉を携えて、営業活動も進めた。「世界1位になったからと言って、仕事が来ることはないです。1位になったら、その実績を利用してアピールしなきゃいけないのが、メジャースポーツとの違いでした」。
 
glay-s1top.jpg
glay-s1top.jpg
本名ではなく、生山ヒジキと名乗るようになったのは28歳の頃。北海道物産展の海藻の売り子のバイト先でお世話になっていた上司に相談したところ、「ヒジキは海藻の中で一番バランスよく栄養を含んでるから、それにあやかって、バランスの良い人間になれ」とアドバイスを受けて決めた。
 
大会に出場しながら、人と出会う機会があるごとに、自分の存在を伝えたり、SNSを使ったりしてPR活動をするうちに、少しずつ、娯楽・商業施設での縄跳びパフォーマンスの仕事や、小学校や幼稚園などでの縄跳び指導の話が舞い込むようになった。
 
さまざまなアルバイトをしながら縄跳びプレーヤーとして活動する中、「30歳の頃、縄跳びだけで生活できる」と感じ、「Rope Performance Teamなわとび小助」を立ち上げた。その後、2016年7月に法人化してなわとび小助株式会社を設立。「縄跳びを通じて、人の人生にちょっとだけ、一瞬でもいいから小さなお助けをしたい」というのが社名の由来だ。苦労の末、徐々に評判が広まっていき、最近では指導教室やパフォーマンスの仕事以外に講演を依頼されることも増えた。
 
 

仕事は自らの力で創出できる!

 
生山さんが強く意識するのは「プロ縄跳びプレーヤーという存在を、広く、多くの方々に知ってもらうこと」。子どもたちが夢中になっていることの中には、職業自体が存在せず、仕事に結びつかないものもある。生山さんはそんな時に、自分の存在が参考になるのではないかと期待を寄せる。「諦めずにずっと続けていたら、僕のように仕事として形になるチャンスが訪れるかもしれないですからね」。
 
YouTuberに代表されるように、最近は職業として認められるサービスが増えてきているというのが生山さんの持論だ。「日本は不景気やコロナ禍もあって暗い時代というイメージもありますが、あらたな職業をつくりだせる可能性は、昔よりも多いと思うし、それに理解を示して応援してくれる人も増えているというのが僕の実感です」。
 
プロ縄跳びプレーヤーという存在と、その仕事を通じて、自力で仕事を創出する可能性のあることを感じてもらう。「縄跳び教室は、上達してくれればそれに越したことはないです。でも、授業を通じて、何かプラスになることがあったと感じてもらえるだけでも、嬉しいですね」。
 
glay-s1top.jpg
今年の1月には書籍、『人生が変わる! 最高の後ろ跳び』(徳間書店)を出版。短い時間でダイエットや運動不足解消、姿勢改善にも役立つノウハウを詰め込んだ。「縄跳びは体質改善に最適なだけでなく、どの競技のアスリートに対してもパフォーマンスアップにつながる、補強運動としての効果もあります。だから、オリンピックの種目に選ばれている競技よりも、息の長い存在になれる可能性がある。そんな未来を夢見て活動を続け、いつかは、子どもたちのなりたい職業のランキングに入りたいです!」。
 
日本で初めてプロ縄跳びプレーヤーという職業を確立した生山さんは、「誰も歩いていない道を、失敗を繰り返しながら舗装していく」その過程に面白味を感じている。
 
 
※本文内の掲載画像はすべて、なわとび小助株式会社の提供
公式サイト
http://nawatobikosuke.com/
 
YouTube
https://www.youtube.com/user/hijikiikuyama
 
Twitter
https://twitter.com/hijikiikuyama
 
Instagram
https://www.instagram.com/hijiki_ropeskipping/
 
Facebook
https://www.facebook.com/hijikiikuyama/
 
 
 
書籍紹介
 
『人生が変わる! 最高の後ろ跳び』
ダイエット効果から姿勢改善まで「後ろ跳び」が人生を変える!  1日3分で、運動不足解消、時短ダイエット、姿勢改善に役立つノウハウが満載! 負荷と効果が高まる「後ろ跳び」にフォーカスした唯一無二の実用書。体質を変えれば自信もつき、「最高の自分」になれる究極の「なわとびの教科書」!
 
著者 生山ヒジキ
定価 1650円(税込)
出版 徳間書店
assocbutt_or_amz._V371070157_.png
 
ニッチなお仕事 
vol.2 好きを仕事に! プロ縄跳びプレーヤー 生山ヒジキさん
(2022.6.10)

関連記事

最新トピックス記事

カテゴリ

バックナンバー

コラムニスト一覧

最新記事

話題の記事