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スペシャルインタビューSPECIAL INTERVIEW

 

役柄の背景に至るまでを
観ている人々に伝えたい

 
テレビドラマ『ずっとあなたが好きだった』において、冬彦さんこと桂田冬彦役を務め、一世を風靡した俳優の佐野史郎さん。癖のあるキャラクターを多く演じ、“怪優”とも呼ばれている。そんな佐野さんが大切にしているのは、「違和感を見失わない」こと。そのお考えについてうかがう中で、佐野さんが仕事に対して感じている楽しさについても探った。
 
 

心と体が一致しない20代だった

 
今年で俳優の道を歩み始めてちょうど45年になります。僕はもともと絵画の勉強をしていまして。一日中鉛筆を削ったり、真っ直ぐな線を引き続けたり・・・。職人に弟子入りしているような感覚でしたね。俳優という仕事を選んだのも、「役者になりたい」というよりは「ものづくりがしたい」という気持ちが大きかったように思います。僕の求めるものづくりが、演劇の世界にあると感じていたんです。
 
若い頃はとにかくがむしゃらでした。今になって振り返ってみると、「俺が俺が」という自分本位な気持ちが大きかったと思います。舞台に立ってお芝居をすることがとにかく楽しかったんです。しかし、だんだんと思うようにならなくなりました。演じる際に、違和感を持つようになっていったんです。
 
当時は、自分自身でも何に違和感を持っているのかよくわかっていませんでした。自分の体を使って役を演じている中で、「嘘っぽいな」と思うようになっていったんです。それらしく振る舞って“やっているフリになっている”というのが一番近い感覚かもしれません。自分の体なのに、誰か別の人の体を演じようとしていたのかもしれません。
 
僕は音楽も大好きで、今もバンドを続けています。音楽に関しては、そういった違和感を持つことはなかったんですよ。心と体が一致していた。譲れない部分が自分の中ではっきりとしていたんです。例えば、根拠のない明るい言葉ばかりの楽曲は僕には気持ち悪くて演奏できないとか(笑)。演劇に関しても、与えられた世界を生きれば良いだけだったんですけどね。気持ち悪いことを平気でやってしまう。人の体だと思って無責任になっていたのでしょう。
 
そうして試行錯誤している中で、当時在籍していた劇団「状況劇場」の座長である唐十郎さんに「そんな演技をしていたら映像の仕事はできないぞ」と言われまして。その言葉が引き金となって劇団を辞め、映像作品において必要とされる演技について考え始めました。ちょうどその時期に、林海象監督に声をかけられたんです。林監督もちょうど「映画の原点から始めたい」と、初監督作品を準備しているときでした。そうして、映画『夢みるように眠りたい』に出演したことが、僕の俳優としての再スタートの原点になっています。
 
 
 
 
 

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